初老おっさんの異世界漫遊記・どうせ食べるなら美味しいものが喰いたいんだ!
第149話ジャイアント・ホワイトホエールを狩る
ナーポリ近郊の秘密キャンプ地
「来たぞ、約束通り喰わせろ!」
「じゃあ今日も色々な所に連れて行ってもらうからな」
「分かっておる、その代わりキッチリと玉子料理を喰わせてもらうぞ」
「分かってるよ」
俺は両手と魔法を駆使して玉子料理・玉子焼きを作りはじめた。
もともとアグネスも白虎も早起きなので、朝食の時間は早いのだが、リュウも負けず劣らず早起きだ。食欲とは、結構恐ろしいものだ。
もちろん主従契約の問題がるから、俺が焼き上げる玉子焼きはアグネスと白虎が食べて、セイが焼き上げてくれる玉子焼きは、リュウが全部1人で食べてしまう。
俺が焼く玉子焼きの基本形は、塩とうま味調味料を入れてほぐした卵を、玉子焼き器に薄く注いで何度も何度も巻きあげる、バームクーヘンのような玉子焼きだ。
お寿司屋さんのように、芝エビのすり身を混ぜたり、出汁をたっぷり加えて焼く訳では無い。それはそれで美味しいのだが、芝エビのすり身入りを作る技術と根気は俺にはないものだし、出汁入り玉子焼きは出汁巻き玉子と言うべきだろう。
「主~、砂糖タップリの甘い玉子焼きが食べたいぞ」
「いいぞ、次はそれで焼いてやる」
「醤油みゃ、砂糖と醤油入りの玉子焼きも食べたいミャ」
「仕上げに醤油を焦がして香り付けするか?」
「付けて欲しいミャ」
「おいミノル、余にも同じ物を作れ」
「セイ、リュウが駄々こねてるから、さっさと焼いてやってくれ」
「分かった」
「だれが駄々をこねてると言うのだ!」
「喰いたいのか、喰いたくないのか、どっちなんだ?!」
「喰いたいぞ」
「じゃあ、四の五の言わずにセイが焼いてくれるのを待ってろ」
「うぬぅぅぅぅ」
セイが、どんどん、どんどん、玉子焼きを作ってくれてはいるが、リュウの食べる量の多さと早さに圧倒されている。目玉焼きやスクランブルエッグなら早く出来るのだが、何度も何度も巻かなければならない玉子焼きでは、どうしても時間がかかってしまうのだ。
「そうだ、ちょっとこれをかけてみなさい」
「ソースみゃ? 美味しいミャ?」
「どうかな、スクランブルエッグや目玉焼きは美味しかったろ、試してみなさい」
「美味しいミャ、もっと食べるミャ」
「おいおいおい、俺にもソースかけてくれよ」
「白虎にはウスターソースも中濃ソースもとんかつソースも預けてあるじゃないか、自分のアイテムボックスから出して、自由に試せばいいじゃないか」
「そうでした、そうでした」
これが出汁巻き玉子なら、ウスターソースをかけるなんで絶対しなかっただろう。アグネスや白虎が勝手にウスターソースをかけたら、秘かに傷ついてしまっただろう。だけど今食べてもらっているのは、朝食用の玉子焼きだ、好きなものをかけて食べてくれればいい。
イータリ国ナーポリの朝市
「親父さん、今日の相場はどうなっています?」
「昨日より、全体的に2割ほど値を下げているな」
「平時の4倍程度にまで値下がりしていると言う事ですか?」
「そうだ、昨日指示してもらっていたから、家の店も全体的に値下げさせた」
「その調子でお願いします」
「とこれでミノル殿、ミノル殿が新たなギルドマスターになったのか?」
「そのようですね」
「そのようですって、まるで他人だな」
「やりたくてなったマスターではありませんからね、でも、やる以上は、俺の理想を実現させますよ」
「ミノル殿の理想とはなんだ?」
「公平公正である事と、弱者を救える力を持つ事ですよ」
「力を持つ? 漁師ギルドで戦力を保有する心算か?」
「意識的に持たなくても、漁で体を鍛えた気性の荒い海の男がいるだけで、十分戦闘力はありますよ。以前の漁師ギルドがそうだったでしょ?」
「確かにその通りだが、だったらどう言う力なんだ?」
「経済力ですよ、簡単に言えばお金の力です」
「それじゃまるで商人ギルドじゃないか」
「命を懸けて手にした魚が、商人ギルドに買い叩かれ、商人ばかりが金儲けするのは腹が立つでしょ」
「ああ、はらわたが煮えくり返るぜ!」
「それもあって、朝市で家族に魚を直接販売させたのが、この朝市の始まりではありませんか?」
「ああ、その通りだ」
「だったら、漁師ギルドが自分達で卸値を決めれるようにならないといけません。商人ギルドが魚を買い叩こうとするのなら、朝市の移動販売部門を作り、漁師ギルドが直接遠方まで売りに行けばいいのです」
「そうだな、今までも漁師ギルドは1番力を持っていたが、朝市で売り切る事の出来ない魚は、商人ギルドの言い値で売るしかなかった」
「今回の件で分かったと思いますが、商品がなければ、商人は何も出来ないのです。確かに買い手が買えない高い値段をつけるのは、自分で自分の首を絞める愚かな行為です。ですが、正当な価格で売るようにしなければ、漁師ギルドは破綻してしまいます」
「分かった、皆が買える正当な値段まで、俺が価格を誘導しよう」
「では、親父さんには朝市の全責任を担って頂きます」
「はぁ~、何ってんだよ!」
「今の話を聞いて、それでも断るのですか?」
「うぅぅぅぅ、しかたがねぇ~な、引き受けてやるよ」
「では、後は頼みましたよ」
「分かったよ、引き受けた以上は全力を尽すぜ」
「では、漁師ギルドの全権を掌握したギルドマスターとして、酒漬ダイオウイカの権利者として命じます。孤児に酒漬ダイオウイカの販売権を貸与しますから、新たな朝市店として、酒漬ダイオウイカ料理店に併設してください」
「分かった、銭勘定が出来る子供達を集めて、店番が出来るように訓練しよう」
ナーポリ沖合のジャイアント・ホワイトホエール群生地
「ふむ、順調に近づいているな」
「おいおいおい、ナーポリの危機に順調は無いだろう」
「そうか? 別にいつでも狩れるではないか」
「それはそうだけど、売れないモンスターを狩るのは、ただの殺生に感じるんだよな」
「それはそうだ、食べるでもなく、ただただ殺したいだけではいかん。だがな、人間が襲われたらそうも言っておれんだろ」
「そうだね、生きるための戦うのは当然だけど、ジャイアント・ホワイトホエールが直接人間に害を及ぼすのかな?」
「そうだな、その時になってみないと分からんが、大丈夫であろう。だがな、ダイオウイカを食べつくしてしまったら、多くのジャイアント・ホワイトホエールが、凶暴になったり飢え死にしたりするぞ」
「適当に間引けと言う事か?」
「そうだ、それがいいと思うぞ」
「そうか、だったら1頭くらい狩るか。だが狩ったとして、ナーポリでは解体も出来ないだろう。そもそも、ジャイアント・ホワイトホエールを日常的に狩って、解体しているような冒険者ギルドや漁師ギルドがあるのか?」
「ふむ、それは分からんな」
「だったら狩っても無駄じゃないか?」
「だがミノルの記憶の中に、鯨を解体している映像があるぞ。ミノルが住んでいた世界では、日常的に鯨を解体していたのではないのか?」
「昔はね、だが俺がこの世界に攫われる頃は、調査捕鯨でしか鯨を狩れなくなっていたし、大型のマッコウクジラやシロナガスクジラは狩ることが禁止されていたよ」
「だがミノルの中に映像記憶があるのなら、鯨の解体を記録した書物や映像を、ドローン配送で取り寄せることが出来るのではないか」
「そうか! そうだな、そうやって独学で鯨の解体を学ぶ事は出来るな」
「そうと決まったら、1頭狩っておけ。だがあれくらいの大物だと、1頭狩るにも結構な魔力が必要だぞ」
「ふむ、そうだな、余裕を持ってメガ級の雷撃魔法を喰らわしてやるか?」
「そうだな、キロ級の雷撃魔法を何度も喰らわせて、ジャイアント・ホワイトホエールに傷をつけて商品価値を下げるよりは、メガ級で一撃必殺を期す方がいいだろう」
俺はセイの助言に従い、ノーマル級のジャイアント・ホワイトホエールを1匹狩った。恐ろしいことだが、ジャイアント・ホワイトホエールにもファイター級やリーダー級などがおり、この群れの最上級は、なんとジェネラル級だと言うのだ!
セイが原初の力を使った隠蔽魔法をかけてくれていなければ、俺は10万頭のジャイアント・ホワイトホエールから、雨霰と攻撃を受けていただろう。
ジャイアント・ホワイトホエールは、その巨体に相応しい魔力を秘めているから、それを使った攻撃魔法を繰り出すことが出来るのだそうだ。
うん?
これは俺が迂闊だった!
もしジャイアント・ホワイトホエールが念動力を使いこなすのなら、海岸線の街や村を襲い、人間を皆殺しにして食料にするかもしれない!
いや、風魔法や海流操作の魔法が使えるのなら、それを使って殺戮した人間を回収し、自分達の餌を確保するかもしれない。これは本当にジャイアント・ホワイトホエールを、全滅させなければいけないかもしれない!
俺は1番外周を泳いでいるジャイアント・ホワイトホエールを狩り、それこそ瞬く間にアイテムボッックスに回収して逃げ出した。
ナーポリ冒険者ギルド
「やあ、ギルドマスターはいるかい?」
「これはミノル様! はい、丁度領主様の城から帰ってこられたとこでございますが、ジャイアント・ホワイトホエール群の報告でございますか?」
「あ、そうだ、偵察に行った冒険者は無時に帰って来たのかい?」
「無事とは申せませんが、何とか生きて戻りました」
「俺も今日狩りに行ったけど、あんなに魔力があるとは思ってもいなかったよ」
「え? ジャイアント・ホワイトホエールを狩りに行かれたのですか?」
「ああ、それでジャイアント・ホワイトホエールが強大な魔力を持っている事に気がついてね、ギルドが偵察隊を送り込んでいたのを今思いだしたんだよ」
「はい、丁度歴戦の偵察員が参加しておりましたので、ジャイアント・ホワイトホエールの魔力を遠方から感じて、全員に停止を命じることが出来たんです」
「なるほどね、それでも指示に逆らって、強硬に前に進んだ奴が、遠距離攻撃魔法を喰らったんだね」
「はい、ですが事前警告があった御蔭で、防御魔法を展開して不意打ちを喰らわずに済んだことで、何とか命だけは繋ぐ事が出来ました」
「かなりの重症なのだね、それとも重体と言うべき症状ですか?」
「重体です、ですがギルドの強制依頼でしたので、出来る限りの治癒魔法と治癒薬を使って、回復させる予定でございます。それで、あの、ジャイアント・ホワイトホエールを狩りに行かれたと言う話なのですが、結果は?」
「情けない話なんだがね、1頭しか狩れなかったんだ。それでこの1頭なんだけど、ギルドで解体出来るのかどうか、マスターに直接聞きたいんだけど?」
「ふぇ! ジャイアント・ホワイトホエールを狩られたんですか?!」
「そうだよ、でも10万頭もいて、たった1頭しか狩れなかったよ」
「たった1頭って! 神話の世界の話ですら、伝説の英雄が多くの仲間と命懸け狩った怪物、ジャイアント・ホワイトホエールですよ!」
「う~ん、ナーポリの冒険者ギルドを貶める気は毛頭ないんだけど、この地方は平和なんだよ。俺の基準では、対して強いモンスターもいないし、冒険者が育つ環境ではないんだよね」
「あの、それは、ミノル様が旅してこられた国々の中には、ジャイアント・ホワイトホエールに匹敵するモンスターが、日常的に現れると言う事ですか?!」
「そうだよ、でもさすがに、10万頭もの群れが現れたのは初めてみたよ」
「そうですか、そうですよね、ダイオウイカの群れといい、ジャイアント・ホワイトホエールの群れといい、常識では考えられない非常事態ですよね」
俺と受付嬢の会話に聞き耳を立てていた冒険者達だが、彼らがひそひそと話す会話は、俺が嘘をついていると言う意見が過半数だった。だが中には、今まで俺が言って来たことが全て本当だったことと、1回の狩りで1000匹のダイオウイカを狩る実績から、1頭くらいのジャイアント・ホワイトホエールなら狩れるかも知れないと言う意見をいう者もいた。
「なあ、あまり注目されるのは嫌なんで、出来れば直ぐにギルドマスターに会わせて欲しいんだけど?」
「申し訳ありませんでした、ただ今直ぐにご案内させていただきます!」
「来たぞ、約束通り喰わせろ!」
「じゃあ今日も色々な所に連れて行ってもらうからな」
「分かっておる、その代わりキッチリと玉子料理を喰わせてもらうぞ」
「分かってるよ」
俺は両手と魔法を駆使して玉子料理・玉子焼きを作りはじめた。
もともとアグネスも白虎も早起きなので、朝食の時間は早いのだが、リュウも負けず劣らず早起きだ。食欲とは、結構恐ろしいものだ。
もちろん主従契約の問題がるから、俺が焼き上げる玉子焼きはアグネスと白虎が食べて、セイが焼き上げてくれる玉子焼きは、リュウが全部1人で食べてしまう。
俺が焼く玉子焼きの基本形は、塩とうま味調味料を入れてほぐした卵を、玉子焼き器に薄く注いで何度も何度も巻きあげる、バームクーヘンのような玉子焼きだ。
お寿司屋さんのように、芝エビのすり身を混ぜたり、出汁をたっぷり加えて焼く訳では無い。それはそれで美味しいのだが、芝エビのすり身入りを作る技術と根気は俺にはないものだし、出汁入り玉子焼きは出汁巻き玉子と言うべきだろう。
「主~、砂糖タップリの甘い玉子焼きが食べたいぞ」
「いいぞ、次はそれで焼いてやる」
「醤油みゃ、砂糖と醤油入りの玉子焼きも食べたいミャ」
「仕上げに醤油を焦がして香り付けするか?」
「付けて欲しいミャ」
「おいミノル、余にも同じ物を作れ」
「セイ、リュウが駄々こねてるから、さっさと焼いてやってくれ」
「分かった」
「だれが駄々をこねてると言うのだ!」
「喰いたいのか、喰いたくないのか、どっちなんだ?!」
「喰いたいぞ」
「じゃあ、四の五の言わずにセイが焼いてくれるのを待ってろ」
「うぬぅぅぅぅ」
セイが、どんどん、どんどん、玉子焼きを作ってくれてはいるが、リュウの食べる量の多さと早さに圧倒されている。目玉焼きやスクランブルエッグなら早く出来るのだが、何度も何度も巻かなければならない玉子焼きでは、どうしても時間がかかってしまうのだ。
「そうだ、ちょっとこれをかけてみなさい」
「ソースみゃ? 美味しいミャ?」
「どうかな、スクランブルエッグや目玉焼きは美味しかったろ、試してみなさい」
「美味しいミャ、もっと食べるミャ」
「おいおいおい、俺にもソースかけてくれよ」
「白虎にはウスターソースも中濃ソースもとんかつソースも預けてあるじゃないか、自分のアイテムボックスから出して、自由に試せばいいじゃないか」
「そうでした、そうでした」
これが出汁巻き玉子なら、ウスターソースをかけるなんで絶対しなかっただろう。アグネスや白虎が勝手にウスターソースをかけたら、秘かに傷ついてしまっただろう。だけど今食べてもらっているのは、朝食用の玉子焼きだ、好きなものをかけて食べてくれればいい。
イータリ国ナーポリの朝市
「親父さん、今日の相場はどうなっています?」
「昨日より、全体的に2割ほど値を下げているな」
「平時の4倍程度にまで値下がりしていると言う事ですか?」
「そうだ、昨日指示してもらっていたから、家の店も全体的に値下げさせた」
「その調子でお願いします」
「とこれでミノル殿、ミノル殿が新たなギルドマスターになったのか?」
「そのようですね」
「そのようですって、まるで他人だな」
「やりたくてなったマスターではありませんからね、でも、やる以上は、俺の理想を実現させますよ」
「ミノル殿の理想とはなんだ?」
「公平公正である事と、弱者を救える力を持つ事ですよ」
「力を持つ? 漁師ギルドで戦力を保有する心算か?」
「意識的に持たなくても、漁で体を鍛えた気性の荒い海の男がいるだけで、十分戦闘力はありますよ。以前の漁師ギルドがそうだったでしょ?」
「確かにその通りだが、だったらどう言う力なんだ?」
「経済力ですよ、簡単に言えばお金の力です」
「それじゃまるで商人ギルドじゃないか」
「命を懸けて手にした魚が、商人ギルドに買い叩かれ、商人ばかりが金儲けするのは腹が立つでしょ」
「ああ、はらわたが煮えくり返るぜ!」
「それもあって、朝市で家族に魚を直接販売させたのが、この朝市の始まりではありませんか?」
「ああ、その通りだ」
「だったら、漁師ギルドが自分達で卸値を決めれるようにならないといけません。商人ギルドが魚を買い叩こうとするのなら、朝市の移動販売部門を作り、漁師ギルドが直接遠方まで売りに行けばいいのです」
「そうだな、今までも漁師ギルドは1番力を持っていたが、朝市で売り切る事の出来ない魚は、商人ギルドの言い値で売るしかなかった」
「今回の件で分かったと思いますが、商品がなければ、商人は何も出来ないのです。確かに買い手が買えない高い値段をつけるのは、自分で自分の首を絞める愚かな行為です。ですが、正当な価格で売るようにしなければ、漁師ギルドは破綻してしまいます」
「分かった、皆が買える正当な値段まで、俺が価格を誘導しよう」
「では、親父さんには朝市の全責任を担って頂きます」
「はぁ~、何ってんだよ!」
「今の話を聞いて、それでも断るのですか?」
「うぅぅぅぅ、しかたがねぇ~な、引き受けてやるよ」
「では、後は頼みましたよ」
「分かったよ、引き受けた以上は全力を尽すぜ」
「では、漁師ギルドの全権を掌握したギルドマスターとして、酒漬ダイオウイカの権利者として命じます。孤児に酒漬ダイオウイカの販売権を貸与しますから、新たな朝市店として、酒漬ダイオウイカ料理店に併設してください」
「分かった、銭勘定が出来る子供達を集めて、店番が出来るように訓練しよう」
ナーポリ沖合のジャイアント・ホワイトホエール群生地
「ふむ、順調に近づいているな」
「おいおいおい、ナーポリの危機に順調は無いだろう」
「そうか? 別にいつでも狩れるではないか」
「それはそうだけど、売れないモンスターを狩るのは、ただの殺生に感じるんだよな」
「それはそうだ、食べるでもなく、ただただ殺したいだけではいかん。だがな、人間が襲われたらそうも言っておれんだろ」
「そうだね、生きるための戦うのは当然だけど、ジャイアント・ホワイトホエールが直接人間に害を及ぼすのかな?」
「そうだな、その時になってみないと分からんが、大丈夫であろう。だがな、ダイオウイカを食べつくしてしまったら、多くのジャイアント・ホワイトホエールが、凶暴になったり飢え死にしたりするぞ」
「適当に間引けと言う事か?」
「そうだ、それがいいと思うぞ」
「そうか、だったら1頭くらい狩るか。だが狩ったとして、ナーポリでは解体も出来ないだろう。そもそも、ジャイアント・ホワイトホエールを日常的に狩って、解体しているような冒険者ギルドや漁師ギルドがあるのか?」
「ふむ、それは分からんな」
「だったら狩っても無駄じゃないか?」
「だがミノルの記憶の中に、鯨を解体している映像があるぞ。ミノルが住んでいた世界では、日常的に鯨を解体していたのではないのか?」
「昔はね、だが俺がこの世界に攫われる頃は、調査捕鯨でしか鯨を狩れなくなっていたし、大型のマッコウクジラやシロナガスクジラは狩ることが禁止されていたよ」
「だがミノルの中に映像記憶があるのなら、鯨の解体を記録した書物や映像を、ドローン配送で取り寄せることが出来るのではないか」
「そうか! そうだな、そうやって独学で鯨の解体を学ぶ事は出来るな」
「そうと決まったら、1頭狩っておけ。だがあれくらいの大物だと、1頭狩るにも結構な魔力が必要だぞ」
「ふむ、そうだな、余裕を持ってメガ級の雷撃魔法を喰らわしてやるか?」
「そうだな、キロ級の雷撃魔法を何度も喰らわせて、ジャイアント・ホワイトホエールに傷をつけて商品価値を下げるよりは、メガ級で一撃必殺を期す方がいいだろう」
俺はセイの助言に従い、ノーマル級のジャイアント・ホワイトホエールを1匹狩った。恐ろしいことだが、ジャイアント・ホワイトホエールにもファイター級やリーダー級などがおり、この群れの最上級は、なんとジェネラル級だと言うのだ!
セイが原初の力を使った隠蔽魔法をかけてくれていなければ、俺は10万頭のジャイアント・ホワイトホエールから、雨霰と攻撃を受けていただろう。
ジャイアント・ホワイトホエールは、その巨体に相応しい魔力を秘めているから、それを使った攻撃魔法を繰り出すことが出来るのだそうだ。
うん?
これは俺が迂闊だった!
もしジャイアント・ホワイトホエールが念動力を使いこなすのなら、海岸線の街や村を襲い、人間を皆殺しにして食料にするかもしれない!
いや、風魔法や海流操作の魔法が使えるのなら、それを使って殺戮した人間を回収し、自分達の餌を確保するかもしれない。これは本当にジャイアント・ホワイトホエールを、全滅させなければいけないかもしれない!
俺は1番外周を泳いでいるジャイアント・ホワイトホエールを狩り、それこそ瞬く間にアイテムボッックスに回収して逃げ出した。
ナーポリ冒険者ギルド
「やあ、ギルドマスターはいるかい?」
「これはミノル様! はい、丁度領主様の城から帰ってこられたとこでございますが、ジャイアント・ホワイトホエール群の報告でございますか?」
「あ、そうだ、偵察に行った冒険者は無時に帰って来たのかい?」
「無事とは申せませんが、何とか生きて戻りました」
「俺も今日狩りに行ったけど、あんなに魔力があるとは思ってもいなかったよ」
「え? ジャイアント・ホワイトホエールを狩りに行かれたのですか?」
「ああ、それでジャイアント・ホワイトホエールが強大な魔力を持っている事に気がついてね、ギルドが偵察隊を送り込んでいたのを今思いだしたんだよ」
「はい、丁度歴戦の偵察員が参加しておりましたので、ジャイアント・ホワイトホエールの魔力を遠方から感じて、全員に停止を命じることが出来たんです」
「なるほどね、それでも指示に逆らって、強硬に前に進んだ奴が、遠距離攻撃魔法を喰らったんだね」
「はい、ですが事前警告があった御蔭で、防御魔法を展開して不意打ちを喰らわずに済んだことで、何とか命だけは繋ぐ事が出来ました」
「かなりの重症なのだね、それとも重体と言うべき症状ですか?」
「重体です、ですがギルドの強制依頼でしたので、出来る限りの治癒魔法と治癒薬を使って、回復させる予定でございます。それで、あの、ジャイアント・ホワイトホエールを狩りに行かれたと言う話なのですが、結果は?」
「情けない話なんだがね、1頭しか狩れなかったんだ。それでこの1頭なんだけど、ギルドで解体出来るのかどうか、マスターに直接聞きたいんだけど?」
「ふぇ! ジャイアント・ホワイトホエールを狩られたんですか?!」
「そうだよ、でも10万頭もいて、たった1頭しか狩れなかったよ」
「たった1頭って! 神話の世界の話ですら、伝説の英雄が多くの仲間と命懸け狩った怪物、ジャイアント・ホワイトホエールですよ!」
「う~ん、ナーポリの冒険者ギルドを貶める気は毛頭ないんだけど、この地方は平和なんだよ。俺の基準では、対して強いモンスターもいないし、冒険者が育つ環境ではないんだよね」
「あの、それは、ミノル様が旅してこられた国々の中には、ジャイアント・ホワイトホエールに匹敵するモンスターが、日常的に現れると言う事ですか?!」
「そうだよ、でもさすがに、10万頭もの群れが現れたのは初めてみたよ」
「そうですか、そうですよね、ダイオウイカの群れといい、ジャイアント・ホワイトホエールの群れといい、常識では考えられない非常事態ですよね」
俺と受付嬢の会話に聞き耳を立てていた冒険者達だが、彼らがひそひそと話す会話は、俺が嘘をついていると言う意見が過半数だった。だが中には、今まで俺が言って来たことが全て本当だったことと、1回の狩りで1000匹のダイオウイカを狩る実績から、1頭くらいのジャイアント・ホワイトホエールなら狩れるかも知れないと言う意見をいう者もいた。
「なあ、あまり注目されるのは嫌なんで、出来れば直ぐにギルドマスターに会わせて欲しいんだけど?」
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