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初老おっさんの異世界漫遊記・どうせ食べるなら美味しいものが喰いたいんだ!

克全

第137話領主の強権

ナーポリ海岸線:ミノルとヴィゴールとアンドレアと孤児たち

「ミノルさん、ここまで上手くいくとは思ってもいませんでしたよ」

「何ですあらたまって」

「そうですよ親父さん」

「だがなヴィゴール、ミノルさんの策がここまで成功すると、今までみたいに対等の口はきけんよ」

「そんな事気にしなくていいですよ」

「そうですよ親父さん」

「いや、そうはいかん、孤児たちを護って下さるんだ。いや、これから失業する多くの人まで雇って下さるんだ。立場の違いは俺達からちゃんとしておかないと、中には以前の立場を振りかざして、ぞんざいな言葉使いをしたり、不遜な態度をとる者が出てくるかもしれん」

「気にされなくてもいいですよ、そんな人間は雇わないか殺すかしますから」

「「え!」」

「言葉使いや態度程度なら解雇するだけですが、事業の乗っ取りを図ったり、孤児たちや心優しい人たちに暴力を振るうようなら、ダイオウイカを狩ったように殺してしまうだけです」

「本気か?」

「本気ですよ」

親父さんは少々引いているが、やくざ者のように、弱者を虐げて利権を手に入れようとする者を許す訳にはいかない。力を手に入れた以上、己の信念と正義に従ってそれを使うのみだ。

(だがミノルの正義は、元の世界の影響が大きいから、この世界では悪影響を与えることもある事を忘れるなよ)

(ああ、その時は警告を頼むよ)

(任せておけ)

俺がヴィゴールを伝令に送って1時間ほどで、領主が英断を下して強権を発動した。

俺がダイオウイカ群討伐の為に、漁師ギルドに漁船チャーターを依頼した事を拒否した事を理由に、領主軍と冒険者を投入して、港と海岸線を占領接収したのだ。

もし漁師ギルドが漁船の大半を失わず、荒くれ者の漁師も生き残っていたら、領主軍と冒険者が連合したとしても、こうも簡単に港と海岸線を接収する事は出来なかっただろう。

いずれは接収できたとしても、ナーポリの街に多大な損害を与えたことだろう。いや、もしかしたら、漁師ギルドは艦船の全てを持って、ナーポリ領主のライバル領主港町に移動し、ナーポリ領主に報復したかもしれない。

だが今回はまんまと領主軍が港と海岸線を占領接収し、領主の直轄支配地として俺に無償で貸し与えると言って来た。

俺はその誘い乗った。

基本権力者は嫌いなのだが、今回は孤児や職を失うだろう人々を助ける為だ、仕方がない。

秘密キャンプ地で創り出したように、圧縮強化岩盤製の干し網・干し台を使う訳にはいかない。もちろん圧縮強化岩盤製のプールを創り出して、塩や調味液に漬けることも出来ない。

だからと言って、有力漁師が持っていた干し網や干し台では、ダイオウイカを1匹丸々干すことなど出来ない。

だがダイオウイカを細かく刻んでしまえば、有力漁師から接収した干し網や干し台で干物にする事は可能だ。何よりも、俺やセイ、白虎のように風魔法で乾燥させる事が出来ないから、丸のままだと干物が完成するまでに時間が掛かってしまう。

ナーポリにいる全ての孤児を動員しても、広大な港と海岸線全てを利用するは出来ない。だが元々海岸線の干場で働いていた、有力漁師に雇われていた婦女子がいるのだ。荒くれ者の男達が海上で働いている間、その家族である女子供は、魚の選別場や加工場・干場で働いていたのだ。

彼女達は、夫や親兄弟が行方不明になり、これからどうやって生きて行こうかと、不安と恐怖に陥っていた。

その上に領主軍と冒険者による港と海岸線の占領接収があり、漁師ギルドの解散命令も加わり、絶望的な状況となっていた。

そんな時に俺が、ダイオウイカの加工と干物作業に人員募集をしたのだ。

俺がダイオウイカを1度に1000匹狩れる冒険者である噂は、既にナーポリ全域に広まっていた。いやそれだけではなく、俺が領主の一族だとか懐刀だとかと言う、デマまで真実のように広まっていた。

だからこそなのだが、一旦領主に敵対した形になった漁師の家族は、ここでもう1度領主の信頼を取り戻そうと、給料が完成したダイオウイカの干物と言う悪条件でも、人員募集に応じて来たのだ。

こんな状況だから、婦女子達に支払う賃金は、後払いでも何の文句も言われないだろう。だがそれでは、低所得層の寡婦労働者は餓えてしまう。

ヴィゴールと親父さんから聞いた話だと、海難事故で亡くなった漁師の家族が、漁師ギルドや有力漁師が経営する、加工場や干場で働いていると言うのだ。寡婦やその子供達は、日雇い家族のように、その日の報酬で食いつないでいると言う。

それだと、ダイオウイカ騒動から2日間は何の仕事もなかったはずだから、今日の食事にも事欠く可能性がある。

金や食糧は腐るほどあるが、それを一時的に施しても、今のナーポリを救う根本的な解決法にはならない。

だからと言って、何の加工もしていないダイオウイカが食べれるかと言うと無理なのだ!

俺も試しに食べてみたのだが、一口噛みしめるとまず塩辛さが襲ってくる。しかもただの塩辛さではなく、にがり液のようなえぐみを伴った刺激性がある塩辛さなのだ!

さらに刺激性のある塩辛さの後に、酸味も襲い掛かってくるのだ。この酸味もただの酸味ではなく、化学的で鋭利で強い酸味なのだ。そして後味には、強烈なアンモニア臭が口から鼻に抜けていく、そう言う絶望的な不味さなのだ!

だがだ、だがここで何もせずに引き下がっては日本人じゃない。

何度もの飢饉に遭遇してきた日本人は、毒性のある物や強烈に不味い物を食べれるように工夫してきた。日本の名君・上杉鷹山が、天明の大飢饉に当たり、藩老・莅戸善政等に命じ、藩医14人の手によって作らせた「飯粮(はんろう)集」と、後に編集させた「かてもの」と言う尊いものもある!

俺もそれを参考にして、思いつく限りの方法を試してみる!

アンモニアを中和させるか飛ばすかがまず1つ。

時間を掛けて干す方法を今実験しているが、それでは今日食べることが出来ない。そこで働きに来ている者達全員と一緒に、色々な調理法を試しながら試食してみることにした。

先ずは熱湯をかけたり、熱湯にくぐらせてみたり、茹でこぼしてみたりしたのだが、それだけでは、とてもではないが食べれる代物ではなかった。

次に行ったのが、80度程度のお湯に酢を加えた物を作り、そこのダイオウイカの身をくぐらせてみたのだが、これもとてもではないが食べれた代物ではなかった。

もっと多くの酢を使って、酢洗いで食べれるか試そうかとも一瞬思ったのだが、酢を作るために使われた穀物を考えると、美味しく食べれて栄養もある穀物を無駄にする事になるので、この方法は断念することにした。

同じ理由で、酒・ヨーグルト・牛乳をに漬けたり振りかけたりする事も止めた。そんな事をするくらいなら、酒やヨーグルト・牛乳をそのまま与えた方が、よほど感謝されるし、美味しく食べれて栄養も補給できる。

そこで次の方法としては、灰汁抜きである。熱湯をくぐらせることはやったし、酢水にさらすこともやった。他にも茹でこぼしてみたりもしたが、まだ軽く茹でて冷水にさらす方法や、米のとぎ汁で茹でる方法、米ぬかと唐辛子で茹でる方法や、重曹を加えた水で茹でる方法は試していない。

さらにそれらの方法を複合した灰汁抜きも試さないといけないし、灰汁抜きした後のダイオウイカをどう料理するかも大切だ。

本当は味噌漬けにしたり、醤油煮や味噌煮を試してみたいのだが、これらの調味料はまだこの世界にないので使えない。

そこで以前にアイテムボックス集めていた、この世界原産の果物やナッツ、野草や香草を組み合わせて漬けタレや調味料を試作して、それを利用して料理を試作してみた。

だが、結論から言うと、塩辛さ・酸味・アンモニア臭を完全に取り除く事は出来なかった。多少は軽減させる事が出来たものの、糞不味い物から凄く不味い物になった程度だった。

だがだ、だがこれで働いてくれた人達に、正々堂々美味しい料理を振る舞う事が出来る!

本来の報酬とするはずだった食料ダイオウイカが、まだ食べれる段階まで来ていない。だから契約違反にならないように、代用食としてオークの丸焼きを振る舞うことにした!

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