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初老おっさんの異世界漫遊記・どうせ食べるなら美味しいものが喰いたいんだ!

克全

第136話縄張り

ナーポリ朝市:ミノルとヴィゴールとアンドレア

「今日は少しは魚が出回っているんだな、親父さん」

「ああ、何時もの相場の10倍の値がついてしまっているがな。だがこれでも、何とか生き残った大型船を、ダイオウイカ群がいない海域に出して漁をさせた結果だ。もっとも漁場としては、ダイオウイカに占領されたところには及ばないし、そもそもダイオウイカの所為で魚が激減していると思う」

「そうだな、あの数のダイオウイカが喰い散らかす魚の量は、半端な数ではないだろうな。だからこそ好漁場と言われる場所に留まっているのだろうが、いずれは魚を喰い尽くして移動してくるだろう」

「ああ、それに魚だって馬鹿じゃない、ダイオウイカ群から逃げて移動している魚も多いだろう」

「親父さん、例えダイオウイカ群を全滅させられたとしても、激減した魚の回復が出来るだろうか?」

「難しい所だな、魚が生息するのに最適な場所だから、そこに魚がいなくなれば、遠方から移って来る魚もいるだろうからな」

「そうか、そう言う魚が産卵すれば、いずれは魚も元の数に回復するか」

「ああ、ただしそれは成長の早い小魚だけだ。成長するのに数年数十年掛かるような魚は、それだけの年数が経たねば元には戻らないだろう」

「こんな状況でナーポリは生き残れるのか?」

「難しいのは確かだが、それでもやらねばならん! 街を離れても生活できる技量のある者など、限られているのだからな」

「そうだ、俺は今からダイオウイカを狩りに行くのだが、孤児たちを集めておいてもらえるかな」

「孤児たちにダイオウイカを恵んでやってくれるか?」

「ただと言う訳にはいかないぞ、その分働いてもらう」

「ミノルさん、まさかそれは仕事を与えてやってくれるんですか?!」

「その通りだヴィゴール、定職があれば安定して暮らして行けるからな」

「だがなミノルさん、これからのナーポリじゃ、孤児たちだけで働き続けるのは難しいぞ」

「親父さん、せっかくミノルさんが支援して下さると言ってるのに」

「ヴィゴール、お前も分かっているはずだぞ。これからはならず者だけではなく、今まで定職を持っていた者も、生きて行く為に手段を選ばなくなるんだ。そんな連中が、眼の色を変えて仕事を奪いに来るぞ。いや、仕事はミノルさんの依頼だから奪えんか?」

「そうですよ親父さん、奪おうたってミノルさんがその仕事をそいつらに依頼しないと、そもそもそんな事は成立しないんですぜ。賃金を安くして引き受けると言ったって、ミノルさんは受けないですよね?」

「状況次第だな、罪のない人たちが困っているなら、賃下げ関係なく仕事を分けてやりたい。だが俺が考えている事が、失業者全員分の仕事量になるかどうかだな」

「そうだよな、喰っていける仕事がそうそう容易くあるわけもないしな」

「まあとにかく行ってくるから、孤児の件は頼んだよ」

「任せろ!」

「任せて下さい!」

(今日はどれくらい狩るのだ?)

(移動してるかも確認して、2000以上は狩りたいな)

(多くないか? 警戒されるぞ)

(う~ん、だがなぁ~、白虎にやらせる分だけじゃなく、孤児たちにも与えることになったからな)

(それは分かっておる、だが白虎にはアグネスのレベリングも任せているのであろう、ほどほどにしておけ)

(へぇ~、あれだけ厳しく言う割には心配するんだ?)

(アグネスのレベリングが疎かになっては困るであろうが、我はそれを気にしているのだ)

(もしかして、それも俺の深層心理から来てるのかな?)

(そんな事は我にも分からんよ)

俺はセイの忠告を素直に聞き入れて、昨日と同じように1000程度を目途に、キロ級電撃魔法をダイオウイカの群生域に放った。





ナーポリ冒険者ギルド受付:ミノルと受付

「ミノル様! 今日もダイオウイカを狩って来てくださったんでしょうか?!」

「ああ、1283匹狩って来た、数の確認と処理を頼みたい」

「承りました! 御案内させていただきますので、どうぞついて来てください!」

(随分と丁重な対応だな)

(そうだな、やはりセイの言う通りやり過ぎたようだね)

(自分のやった事の後始末は自分でするのだな)

(俺とセイは一心同体のデュオなのだろ、頼りにしているよ)

(仕方ないな、任せておけ)

「ミノル殿、今日も狩って来てくれたと聞いたが?」

「ええ、1000匹ほど狩ってきましたよ」

「そうか、昨日足りなかった分も合わせて、領主様から前金を頂いてきた。今日の分を含めて清算させてもらう」

「そうですか」

「それでどうだった、ダイオウイカ群は移動を再開していなかったか?」

「まだ同じ海域にとどまっていましたよ」

「そうか、それは一安心だが、侵攻を再開するまでに有効な手を考えださねばならん」

「それはギルドマスターや領主様に御任せするとして、私は狩りの成果を手に入れるだけですよ」

「そうか、そうだな、それが冒険者だからな」

俺は査定場兼用の解体場で、アイテムボックスからダイオウイカを取り出した。解体職員総出で数の確認と、ダイオウイカの開き作業が行われたが、開き作業は後回しにして数の確認だけを先にしてもらった。

前日分:1218匹×大銀貨1枚=大金貨12枚・小金貨1枚・大銀貨8枚
本日分:1283匹×大銀貨1枚=大金貨12枚・小金貨8枚・大銀貨3枚

小計 :大金貨24枚・小金貨9枚・大銀貨11枚

領主が支払う事になったからか、報奨金は大金貨を主に支払われた。朝市での支払いには不便だが、今の相場で買う気にはならないから、もう大金貨でも白金貨でも構わない。





ナーポリ朝市:ミノルとヴィゴールとアンドレアに孤児たち

「親父さんヴィゴール、ありがとう」

「なあに、これくらい大したことじゃない」

「任せて下さいよ」

「それでだ、これがダイオウイカなんだが」

俺はアイテムボックスからダイオウイカを1匹取り出した。

「こいつを干物にしようと思うんだ」

「へ? 干物ですか?!」

「う~ん、ダイオウイカの小便臭さを干物にして消そうと言うのだろうが、あの強烈な臭さが消えるものなのだろうか?」

「それを試作してもらうのですよ」

「そうか、そうだな、やってみなければ何事も始まらんな」

「そうですよ、親父さん。それに孤児たちなら、少々臭くったって喜んで食べますよ。親父さんから魚を分けてもらえない不漁の日が続くと、腐りかけの魚だって喰う事があるんですから」

「なんだと! そんな時は言えと言ってあっただろうが!」

「親父さんが無理して下さっているのは、孤児たちだって重々承知していますよ。そうそう御願には行けませんよ」

「なあヴィゴール、まずは作業を始めてもらえないかな?」

「こりゃすみません! おいお前ら、直ぐに干物にする作業を始めるぞ」

「そうだな、すまなかったミノルさん」

「でもヴィゴールの兄貴、干すにしてもこんな大きな物、俺達の棲家じゃ無理だよ」

「あ! うかつだった!」

「そうか、そうだな、場所の問題を忘れていた」

「港や海岸の空き地は使えないのか?」

「無理なんですよ」

「ああ、港は漁師ギルドの支配下なんだが、各漁師が港や海岸線を細かく縄張りとしているんだ」

「そうか、だから孤児たちが腐りかけの魚を食べる羽目になるんだな」

「そうなんですよ、流木や貝や小ガニに至るまで、全ての利権が港や海岸線の縄張り次第ですから」

「親父さんやヴィゴールに伝手はないのか?」

「こんな緊急事態だからな、漁師たちも利権の確保にはピリピリしているだろうからな」

「干場を借りる費用を払うにしても、その相場が分からない。漁師ギルドのマスターに、今は利用価値のないダイオウイカの加工研究をするから、ギルドが占有している場所の無料貸与を交渉してくれないか?」

「あの強欲なギルドマスターが相手の交渉では、正直勝算はないが、やれるだけやってみよう」

「そうか、そう言う相手なら次善の策が必要だな。ヴィゴール、冒険者ギルドに行って、ダイオウイカの加工研究の為に干場が必要だから、場所を確保して欲しいと伝えて来てくれ。それとその願いを、領主様にも伝えて欲しいと言ってくれ」

「なるほど! 漁師ギルドに圧力をかけるんですね!」

「ああ、直接被害を受けているのは漁師ギルドなのに、対応策に全く協力しない。それどころか、内部の利権保持にきゅうきゅうとしている。それに対して、直接は関係がない冒険者ギルドが協力的だとすれば、港の利権が漁師ギルドから冒険者ギルドに移る可能性すらあるからな」

「なるほど! 今までは領内の経済を支えている漁師ギルドが1番権力を持っていたが、今は大型漁船の大半を失って力を低下させている」

「そうですね! この機会に冒険者ギルドか権力を拡大できる可能性があるんですね!」

「そうだ、今回の件に危機感を持ってるのは領主も同じ。いや、先の見える知恵者の領主なら、1番危機感を持って対応策を考えているだろう。そん領主なら、さっき俺達が考えていた事など、報告を受けた直後に思い浮かべていたはずだ」

「そうなると、次の1手をどうするか苦慮しているはずだ、今まで何の利用法もなかったダイオウイカが食用に出来るとなれば、その研究を邪魔する者は排除しようと動くだろうな」

「そう言う事なんですね、だったら早速冒険者ギルドに注進してきまさぁ!」

そう言うや否や、ヴィゴールは冒険者ギルドの方に駆けだして行った!

「さてと、本当は塩田なんかも提案したかったんだが、漁師ギルドの力が強すぎるなら、一旦それを叩き潰してからの方がいいな」

「ミノルさん、あんた結構怖い人なんだな」

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