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初老おっさんの異世界漫遊記・どうせ食べるなら美味しいものが喰いたいんだ!

克全

第126話異世界風の焼酎マティーニ

「そうですね、封印を破ってしまった飲みかけの焼酎ですと、直射日光の当たる場所や火気を使い高温になる場所、湿度の高い場所に保管しますと劣化してしまいます。直射日光自体は色の付いた瓶ならばある程度防いでくれますが、高温はたとえ壺や瓶に入れた焼酎でも防ぐことも出来ない最悪の環境です」

「なるほど、その当たりは今まで私が扱って来た酒と同じなのですね」

「はい、ですから未開封の場合でも1年を通じて温度の変化が少なく、直射日光に当たらない場所が1番です。一般の家庭では食糧庫が1番無難な保管場所でしょうが。伯爵家でしたら専用の地下食糧庫が御有りでしょうから、他の酒と同じように地下食糧庫に保存されるのがいいと思います」

「そうですね、それが1番でしょうね。ところで、ミノル殿は狩場で安全に飲める水がない場合は、どうやって水を手に入れられておられるのですか?」

「あ~、私は魔法の使えますので、魔法で水を手に入れる事が出来るのです」

「そうですか、では水に酒精の強い酒を混ぜて飲み水として使う事はないのですね?」

「ええ、その必要がなかったので、その方法を知りませんでした」

「そうですか、色々な所を狩りをしながら旅されて来られた方だとマスターから聞いておりましたので、もしかしたらよい方法をご存知かと思ったのですが」

「残念ですがお役に立てないですね、僕が知っているのはこの焼酎を、御婦人にもより美味しく飲んで頂く方法くらいですね」

「そうですか、本当に残念です」

(フィオレンザ達が聞きたがっているようだな)

(みたいだね、でもさすがに伯爵家の正使を押し退けて聞く事が出来ないようだね)

(ふむ、可哀想に)

(同情かい?)

(いや、単なる興味だ)

(それは悪趣味だぞ)

(ミノルの影響を受けたのであろうな)

(都合の悪いことは何でも俺の影響かい?)

(当然であろう)

「御婦人が好むお酒とはどう言うものですか?」

(ほう、レディースメイドが興味を示したな)

(俺が女主人を酒で篭絡させる危険があると判断したのかな?)

(単なる酒好きと言う可能性もあるぞ)

(確かにな)

「そうですね、酒精強化ワインはご存知ですよね」

「はい、それは知っております」

「香草やスパイスを配合して作られるフレーバードワインも御存じですよね?」

「ええ、それも存じております」

「酒を仕込む段階でなく、飲む直前に季節の果実や砂糖を加えて甘く口当たりのようお酒にするのです」

「高価な砂糖を使うのですか?」

「そうですね、甘味の強い果実があれば別ですが、そうでなければ御婦人の為に砂糖を使う事も大切です。特に高貴な方をもてなすパーティーなどでは、出来るだけ珍しく高価な食材を使い美味しく仕上げるかが、ホスト家の威信にかけて必要なのではありませんか」

「確かにその通りです! お料理1つ、お出しするお酒1つで主家の名誉を損なう事もあります」

「ぜひここで飲ませていただきたいものです」

(ヴィルナが喰いついてきたな)

(ハウスキーパーの立場として聞かざる得なかったのかもしれないな)

(確かにそうであろうな)

「マスター、この酒場に果物やフレーバードワインはありますか?」

「置いているか?」

ギルドマスターが酒場の責任者に確認したが、酒精強化ワインやフレーバードワインはあるものの、果物は置いていなかった。

「では僕の手持ち品と、辛口のフレーバーワインを組み合わせて作ってみましょう。それと合わせ方で味が大きく変わりますので、好みの味を探してください」

(サービスするのだな)

(これで焼酎の売れる量が増えれば、故国の生産者が助かるからな)

(それはあくまで、ドローン配送で送られてくる物が、故国日本の商品であると言う仮説が正しかった場合であろう)

(信じる者は救われるんだよ、それにセイは真実を知っていて隠しているんじゃないのか?)

(知らぬよ、知っていて隠していれば、いずれミノルに隠していた事がばれてしまうではないか。そのような愚かなことをして、ミノルとの信頼関係を壊す気は無いよ)

(そうか、そうだな、疑って悪かった)

(構わぬよ)

俺は念話でセイと掛け合いをしながら、新たにアイテムボックスからアルコール度数25度の麦焼酎をとりだし、酒場の責任者が持ってきてくれたフレーバーワインとステアした。比率は一般的に黄金比率と言われる4:1は勿論、古典的な比率の1:2まで色々試した。

それと当然なのだが、

25度麦焼酎     :5:4:3:2:1:1:1:1:1:
15度フレーバーワイン:1:1:1:1:1:2:3:4:5:

最終的には麦焼酎5対フラーバーワイン1から、逆に麦焼酎1対フレーバーワイン5までの9種の配合を試飲してもらったのだが、好みはそれぞれ違っていた。

ただ1つ統一されていたのは、誰もが酒のブレンドの興味を示してくれた事だ。特にヴィルナは、主家開催のパーティーに出す秘伝の配合を探すべく、限界ギリギリまで試飲に挑んでいた。

「それとヴィルナ殿、今回はこの焼酎が1番癖がないから使いましたが、他の焼酎も1つ1つ風味が違いますから、それも試して頂かないといけないでしょうね」

「そんなに違う物なのですか?」

「ワイン1つをとっても、年代と地域、いえ、作り手が違うだけで全く違うワインになるでしょ」

「確かにその通りですね」

「こちらの焼酎ですと、最初の物に比べてフルーティな香りになります」

俺は米麹と米だけで作られたアルコール度数25度の純米焼酎を生のまま試飲してもらった。

(フィオレンザ達はもうへべれけだな)

(最初は遠慮していたようだけど、試飲が進むほどに酔ってしまったのだろうね)

(いまじゃギルドマスターが止めても、酒瓶を抱えて手酌で飲んでいるぞ)

(まあ俺に絡んでこないだけ、まだ最低限の理性は残っているんだと思うよ)

(そうだな、今回のカクテルの件で、アヤツラの中でのミノルの存在はさらに増したであろうからな)

(酒好きだからか?)

(それもあるがな、この世界では武力に秀でた相手を伴侶に選び、安心して子供を産み育てたいと言う、絶対的な価値観がある)

(それは仕方ないだろうね、生きて行くのが難しい世界だからなね)

(それともう1つ、ある程度治安が保たれている国では、経済力の有無で安心して子供を産み育てられると言う価値観もある)

(経済力があれば、強力な冒険者や兵士を護衛に雇い、その力で自分と家族を護ると言う事だね)

(そうだ、それと卓越した技術で物を創りだし、権力者の庇護を得て、自分と家族を護る方法もある)

(そうだな、そう言う力もあるだろうね)

(ミノルはその全ての条件を満たしている)

(そうだね、強力な獲物を狩る武力と、今まで蓄えた莫大な財力に加えて、誰も知らなかった色々な酒を手に入れてくる上に、それを美味しく飲ませる技術があるんだからね)

(何があっても家族を護る力がある。だとしたら子供の親としてこれほど最高の相手はおらん)

(そうなるか、そうなるだろうな)

(女性の中には、正妻でなくても庇護を受けて安心して子供を産み育てられれば構わないと言う種族も多いのだ)

(混血と言うか、ハーフでも構わないと言う事か?)

(そうだ、彼女らの眼をみろ、雌虎と表現した時以上に爛々と輝いているだろう)

(完全に獲物を見る眼だな)

「ミノル殿、他にも味わいの違う焼酎があるのですか?」

「ええありますよ、これを飲んでみて下さい。これは独特の甘い風味がありますが、極端に好みが分かれるものです」

俺はアルコール度数25度の黒麹芋焼酎を試飲してもらった。

「私はこれが1番好き!」

「黙りなさい!」

ギルドマスターが苦々しい表情で、急に会話に入ってきた受付を叱責した。

「そうですね、確かにこの焼酎は好みが分かれるでしょうね。でもその分香辛料などを加えて風味を変えれば、大きく印象が変わる可能性もありますね。この焼酎などは比較的甘い風味を残しています」

俺はアルコール度数37度の黒壺黒糖焼酎を取り出して試飲を勧めた。

「キャァー、それ飲ませてください!」

アルコール度数が、ドワーフ族以外に売ると約束した中で1番高く、内容量も少なく、俺が預けた量も少なかったため、かなり評判になっていた黒壺黒糖焼酎を見て、受付の女性の理性が吹っ飛んでしまった!

「こら! 待て! 待たんか!」

「今日はこれが限界のようですね、散会にさせて頂きましょう」

「いえ、申し訳ありませんが、全ての焼酎を試飲させて頂くまでは帰れません! マスター! 責任を持ってこの子達を下がらせてください」

「申し訳ありませんヴィルナ殿! おい! こいつらを連れだせ!」

ついにギルドマスターの堪忍袋が切れたのだろう、遠巻きに警備をしていたギルド職員に命じて、酩酊して理性が吹っ飛んでしまった女性達を排除しようとした。最初は激しく抵抗していた受付女性達だが、暴れるほどの酔いが回ったのだろう、最後にはその場で泥酔状態となり寝てしまった。

「情けない所を見せてしまい申し訳ありません」

「次からは気をつけてください、ミノル様、続きをお願いします」

「分かりました、まずは黒壺黒糖焼酎を試飲して下さい」

「本当に酒精の強い焼酎ですね! それに風味も甘く飲み易い気がします」

「ヴィルナ様、私には飲み難く感じます」

「そうなのですか、ソフィア?」

「はい、ミノル様が言われるように、好みが強く分かれる酒なのでしょうね。私としては、同時に色々な焼酎をお客様方に試飲して頂き、好みを調べることが大切と感じました」

「そうですね、それにビランでしか焼酎が手に入らないとしたら、ゾッティ伯爵家にとってとても大きな輸出品になるかもしれません!」

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