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初老おっさんの異世界漫遊記・どうせ食べるなら美味しいものが喰いたいんだ!

克全

第107話外道

「普段はこの水を使っているのですか?」

「はい、近くに小川が有るのですが、その水をここまで引いて使っています」

「ダルダーロさんが1人で引かれたのですか?」

「はい、病気になる前は体力がありましたから」

(セイ、どう思う)

(ミノルと同じだよ、絶対におかしいな、人為的に病原菌をこの水道に流したとしか思えん)

(そうか、分かった)

「ダルダーロさん、ご家族が病気になられたのは、誰かが仕掛けた罠ですね」

「なんですって! そんな事が出来るのですか?」

「ええ、この水道でも家の近くにだけ病原菌が残っていますが、元の小川には何の痕跡こんせきもありません」

ダルダーロさんが1人で引いた水道は、ダルダーロ家専用のもののようで、最後は水場と兼用の養魚池になっていた。今は魚も食べつくしているが、ダルダーロさんが元気な時には、何時でも魚が食べれるように沢山養魚されていたのだろう。そして病原菌の痕跡は、水道の上流や原流の小川には全くなく、ダルダーロ一家が水を汲む場所より下流にしかなかった。

「そんな! いったい誰が何のために?!」

「推測でしかありませんが、女衒ぜげんと思われる者がエルマに言い寄っていました。冒険者になる前のリーナにも、執拗しつように言い寄っていたようなので、娘さん達を奴隷に売り払う為でしょう」

「なんですって! 村長の下衆野郎が!」

「ほう、今回の件は村長が仕組んだと言われるのですか?」

「恐らくそうです、いえ間違いありません!」

「そう思われる理由はなんですか?」

「以前村長と息子が、不作の時に食べるのに困った一家を言葉巧みにだまして、その家の娘を奴隷に売り払おうとしたことがるのです」

「それをダルダーロさんが阻止したのですね?」

「はい、あの頃はまだまだ槍術に自信がありましたし、体力も残っていましたから、村長達が何十人でかかて来ても撃退する自信がありました。困った家族の食料だって、余裕で狩る事も出来ましたから」

「それでこんな卑怯な手を使ったと思われるのですね」

「はい、他に思い当たることはありません」

(ミノル、分かっているのだろうな?)

(ああ、敵意のある者達が近づいて来ているな)

(村長一派であろうな)

(レベルを考えれば、自警団と村人を総動員してきたんだろうな)

(そうであろうな、女子供まで動員して邪魔者を排除しようと言う事であろう)

(村の総意と言う体裁で、不法を押し通すつもりだな)

「御師匠様、誰か来ます」

「分かっていますよダルダーロさん、村長が村人を総動員して無理を押し通そうとしているのです。それに御師匠様は止めて下さいと言ったはずですよ」

「しかし御師匠様は私たち家族の命の恩人ですから」

「ですから、リーナさんは私のクランのメンバーだから御師匠様でしかたないですが、ダルダーロさんやラーラさんは一人前の大人ではありませんか。ちゃんと対等にミノルと呼んで下さい」

「私を含めた家族全員の命の恩人であり、リーナの御師匠様である方を呼び捨てなど絶対できません!」

「ではせめて御師匠様は止めて下さい、私はダルダーロさんに何も教えていないのですから」

「では、ミノル様と呼ばせていただきます。これだけは絶対譲れません!」

「仕方ありませんね」



「なんだと!? 何故お前が元気なんだ?!」

「ふん、残念だったなアブラーモ、お前の下衆な罠などミノル様が粉砕して下さったわ!」

「ナ、な、何、何のことだ!」

「お前が家(うち)の水場に疫病をばら撒いた事だ!」

「ナ、な、何、何を言ってるか全くわからんわ!」

「ふん、お前の下衆な仕掛けなど、ここにおられる大魔導師・ミノル様が簡単に破ってしまわれたわ!」

「そんな嘘など聞く耳持たんわ! それより儂の可愛い息子をこんな目に合わせおって、ただで済むと思うなよ!」

「ふふ~ん、病気が治ったからには、もうお前達のいいようにはさせん! 今までの借りも含めて全部タップリ利子をつけて返してやるからな、覚悟しろ」

「貴方、私にも言わせてください」

「ラーラ・・・・・」

「お前達、よくも私の可愛い子供達を苦しめてくれたわね! 骨も残さず焼き尽くしてあげるわ!」

うわ、こぇ~

ダルダーロさんの啖呵たんかは、戦闘馬鹿丸出しの明るい感じだが、奥さんの脅しはケツの穴から頭に寒気が走るほど恐ろしい。子供達を奴隷にされる寸前だったから、母性がそのまま恨みに転嫁しているのだろう。このままじゃ村人全員本当に焼き殺しかねないな。

「まあ待ちなさい、ここには村長に命じられ、何も知らずに嫌々ついて来ている者もいるだろう。まずは私が全ての事情を説明させてもらおう」

「よそ者は黙っていろ! これは村の問題だ!」

「そうわいきませんよ、アブラーモ村長。リーナは私が立ちあげた冒険者クランのメンバーですから、彼女に毒を盛った以上、我々に攻撃してきたと言う事です。村の総意と言う事は、村と我がクラン89人の冒険者の戦いとなりますが、村の皆さんはそれでいいのですね?」

「ふん! 冒険者クランだと、そんなもの聞いた事もないわ!」

「おやおやおや、何も知らないとは情報に疎いにもほどがありますね。そんな人間の癖に、村の命運を握る村長に居座るとは、よほど厚顔無恥こうがんむちなのでしょうね」

「なんだと!? この糞爺が!」

「糞爺だと?! 俺はまだ50代だ!」

「五十を過ぎれば十分爺ではないか」

「ふふふふふ、もう許せませんね、アブラーモ村長は有罪です。これは極刑を与えるしかありません。ゴーランの糞野郎も許せませんでしたが、アブラーモ村長はもっともっと罪が重い」

(ほほう、ミノルに糞爺は禁句であったのか?)

(黙ってろセイ! 言った相手と籠った意味で、言葉とは違ってくるんだ)

(ふむふむ、我も言葉には気をつけよう)

「ゴーラン? ゴラーン様がどうしたと言うのだ!」

「ほう、ゴーランの糞野郎に様付と言う事は、村長はゴーラン一味の残党と言う事か」

「ゴーラン一味だと、え? ミノルだと、お前はゴーラン様を倒したと言うミノルなのか?!」

「やっと思いだしたのか、はてさて馬鹿を相手にするのは疲れるな。冒険者ギルド内で半独立のクランを立ち上げるのが、よほどの実力と勢力が無ければ無理と直ぐに分からんものかね」

「いや、あの、その、ミノル様、これは何かの間違いでして」

「村人を総動員して、鎌や鋤・鍬まで持ち出して襲撃に来ておいて、今更間違いでしたが通じると思っているのか?」

「イエ、いえ、謂え、これは私の大切な息子を襲ったダルダーロを懲(こら)らしめるために仕方なくですね」

「御前は本当に馬鹿だね、アブラーモ」

「何が馬鹿なのでございましょうかミノル様」

「今更卑屈に下手に出ても、疫病をばら撒いた罪は誤魔化せないよ。それにお前の馬鹿息子をぶちのめしたのは私だ」

「へぇ? でも、その、ミノル様は大魔導師様だとダルダーロが言っていましたが」

「私は魔法も使うが、槍も剣も体術も使うんだよ。さあどうする、このまま村人全員で私を襲うかね? 村の人達もそれでいいのかな? 今の場所から一歩でも前に出た者は、冒険者ギルドを攻撃したと考え反撃する。一切の手加減はせず、ゴーラン一味の残党としてその場で殺すか、街に連行して公開処刑にする!」

「く! もはやこれまでだ、お前達、やってしまえ!」

ふむ、やはり動かないな。

さっきダルダーロが話していた家族だけではなく、他の多くの家族もダルダーロに助けられていたはずだ。にもかかわらず、弱り追い詰められていくダルダーロ一家を助けもせず、見て見ぬ振りをしてきた恩知らずだ。いやそれだけではない、ダルダーロ一家を皆殺しにする事が分かっているのに、この暴挙に参加するような下衆どもだ。ここまで追い詰められたアブラーモ村長と行動を共にして、命を賭けるような根性も野心も忠誠心もありはしないだろう。その時その時強い者に従い媚びへつらい、自分だけは助かろうとする糞野郎達だ。

「さて、もうこれ以上恩知らずの糞野郎達の顔を見るのも汚らわしいし、獣のような外道臭を嗅がされるのも臭くてかなわん。眠れ!」

(殺さずに捕えるのかね?)

(病原菌の残りがあるのか、有るなら何所に隠しているのか、何より誰から手に入れたかを吐かさなければならないからね)

(ふむ、親切な事だな)

(万が一俺が長期の留守をしたいる時に、見習村に病原菌を撒かれたら目も当てられないから)

(ミノルはやっぱり抜けているな)

(何がだ?)

(村には我の分身体がいるではないか、そんな真似が出来るはずがなかろう)

(すまんセイ、お前の力を信じていないような事を言ってしまった)

(よいよい、ミノルが人に頼るのが苦手で、自分1人で何でもやる考えなのは分かってる)

(ありがとう)

(それはいいのだが、村人をどうするんだ?)

「腐れ外道共はさっさと散れ! 見るも汚らわしいわ!」

「ミノル様、それはちょっと言い過ぎではありませんでしょうか?」

「ダルダーロさんは村人達を許せと言われるのですか?」

「まあそのなんです、無力な村人は強い者には逆らえないものでして・・・・・」

「ダルダーロの考えは確かに慈悲深くて私も好きなんですが、それは1人の時だけにした方がいいですよ」

「え? でも正義の心は1人であろうと2人であろうと関係ないのではありませんか?」

「そう言う考え方もあるでしょうが、その甘さが奥さんや子供達まで疫病に犯され、あまつさえ娘さん達を奴隷に売られる寸前まで追い込んだのではありませんか?」

「そうよ貴方!」

「ラーラ・・・・」

「もう貴方1人で生きているのではないのですよ! 家族の事も考えて行動して貰わなければ困ります!」

「はい・・・・」

「返事が小さいです!」

「はい! 御免なさい、私が悪かったです!」

「では今後はどうするのですか、!」

「え? どうするって何の事?」

「私達家族の行く末の事です!」

「どうもこうも、俺もお前も病気が治ったのだから、今まで通り狩りをしながらミノル様に治療費をお支払いする以外何があるんだ?」

「では貴方はこのままこの村に住むつもりなの?!」

「え、でも、だって、ここには私達の家が有るし」

「また同じ事が起こったらどうするの! この村の人間が恩知らずで強い者には逆らえないのが証明されたのよ、こんな村で子供達を安心して育てられる訳がないでしょう!」

「いや、でも、だって、今更冒険者に復帰できないし、金だって全然残ってないし」

「なに弱気な事言っているんですか! 本気で訓練すれば全盛期には戻れなくても、街で家を借り家族を養うくらいは出来ます」

「いや、でも、だって、ミノル様に治療費をお支払いするのに、家賃を払っていては時間がかかり過ぎるから」

「治療費の心配はいりませんよ、最初からリーナの冒険者としての稼ぎから、少しづつ払ってもらう約束ですから」

「いや、でも、だって、娘に負担をかけるなんて」

「御黙りなさい貴方! もう既に十分取り返しがつかないくらい負担をかけてしまってます!」

「はい、仰る通りです、ごめんなさい」

「それではどうです、ダルダーロさんラーラさん、私のクランが見習の為の村を開拓したのですが、そこに住まれませんか?」

「いや、でも、その、これ以上ミノル様に御世話をかける訳には・・・・・」

「貴方は黙っていて下さい」

「はい・・・・・」

「ミノル様、本当によろしいのでしょうか?」

「ええ構いませんよ。その代わりと言っては何ですが、私のクランの見習達に色々教えてやってくれませんか」

「ミノル様がおられるのに、私達ごときが教えることなど無理でございます」

「いやそれがですね、私は責任とか義務とかが苦手でしてね。巻き込まれて仕方なく見習や新人を助けたのですが、出来れば気ままに色んな所を旅して暮らしたいのです。恩に着せて悪いのですが、リーナ達を含めた見習や新人達を世話してくれれば助かるのですよ」

(ミノルの本音が出たな)

(そうだよ、悪いかよ!)

(悪くわないが、ミノルはコロコロと言ってることもやってることも変わってくるな)

(そうだよ、俺はそう言う人間なんだよ、嫌ならデュオを解消しろよ)

(いや面白そうだからこのままでいい)

(以前は運命だとか簡単に解消できるようなものじゃないと言っていたけど、本当は興味本位で俺とデュオを組んでいるんじゃないのか?)

(もうそんな事はどうでもいいではないか、我と組んで結構愉しいであろう)

(まあそうだな、悪くは無いよ)

「分かりました、力不足かも知れませんが、出来る限りミノル様から受けた恩を返せるように務めさせて頂きます。いいわね貴方!」

「はい」

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