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初老おっさんの異世界漫遊記・どうせ食べるなら美味しいものが喰いたいんだ!

克全

第102話レベリング

「いいかお前達、この巨木には神が宿っている。神棚に祈る事で果実や水を得られたように、御神木に祈る事で、魔獣やモンスターを訓練の為に中庭に移動させる事が出来る。さらに支援魔法や治癒魔法をかけてくれるから、俺がいなくても安心して訓練できる」

「「「「「え?!」」」」」

「疑うのも当然だろう、だからまず実際にやってみろ。イルオン、まずお前が訓練相手を決めて、御神木に中庭に連れて来て下さいと祈ってみえろ。昨日神棚に果実を実らせてくださいと祈ったのと同じだ、さあ、やるんだ!」

「はい、御師匠様!」

神棚に祈って果実を実らせたり、風呂に湯を張ったりするのだから、神様が小屋と言うか砦を見守っているのは明々白々だ。ならば城外の地下牢に閉じ込めた魔獣やモンスターを、中庭に運んで訓練するのも、支援魔法や治癒魔法をかけるのも、神棚に祀られた神様で十分だ。と言う事で、初めて見習砦に宿泊した翌日に、見習達に分身体を御神木として紹介した。

「いいか、常に気を張って実戦の心算でいろ。御神木の支援があるからと言って、気を抜いた事をやれば、御神木は支援を止めてしまうぞ」

「「「「「はい!」」」」」

見習砦の中庭では、1班がイルオンの指揮でデイノスクスと危なげなく戦っている。この様子なら直ぐに斃してしまうだろう、次に控えている4班のメンバーにもそれは分かってるのだろう、逸る気持ちと不安感が相半ばする表情になっている。

俺はセイと相談して、見習達の支援を分身体に任せる決断をした。もちろんしばらくは見守る心算ではいるが、分身体を移植したのだから任せられるところは任せるべきだ。

だが見習い全員を、1度に紹介すると言う訳にはいかない。夜明けから早朝にかけて、砦に宿泊した見習達に教え、2班3班を引き連れてテトラ街に戻り、テトラ街で留守番していた4班5班を連れて砦に行きそこで教える事も可能だった。

だがそれだと、アグネスとの朝食を取り止めなければならなくなる。アグネスとの時間は出来る限り確保したいから、見習達にはしっかりと朝食をとらせた後で合流することにした。もちろん俺はその時間に、アグネスと朝食を共にするのだが、分身体が見習達を見守ってくれているから大丈夫だ。

アグネスと朝食をとった後で見習砦に向かい、1班2班3班6班7班の見習達に分身体を御神木として紹介した。最初は驚愕していた見習達だが、昨晩から今朝にかけて、滅多に食べられない希少な果物と澄んだ水を、神棚に祈る事で手に入れていた事で、神が宿る巨木なのだとすんなり受け入れてくれた。

全班に1度御神木に祈らせて、魔獣やモンスターを運ぶ実地訓練を行わせた。実際に祈る事で、魔獣やモンスターがプカプカと空に浮いて移動するのを見て、見習達も心から納得してくれた。

それにしても、セイと相談したのか分身体が独自に考えたのか、昨晩見た時より見習砦が増強されていた。中庭と城壁兼用住居・水濠は変わらないのだが、水濠の外側を魔獣やモンスターを閉じ込める地下牢が囲んでいる。圧縮強化岩盤で作られた格子状の天井を取り払えば、見習砦を何者かが攻撃しようとしたときに、最強の生物兵器として機能するだろう。

2班3班を引き連れてテトラ街に戻り、彼らに幼い新人見習の訓練とお世話を託し、昨日留守番してくれていた4班5班を引き連れて見習砦に向かった。テトラ街の見習い部屋と見習砦、どちらを本拠地と考えるかで、戻ると向かうの表現が変わってくるだろう。これは見習1人1人で感覚が違うだろうが、いずれは全員に見習砦が本拠地と思って欲しいものだ。




「ミノル殿、ちょっと教えてくれないか」

「なんだいノーラ」

「あんた見習達に何を教えたんだい?」

「何をって、戦い方だよ」

「いや、戦い方を教えたくらいで、あんなに急激にレベルは上がらないだろ!」

「そうだな、支援魔法で魔獣やモンスターの動きを制限して、見習達でも狩り易い状況は創り出してやっているよ」

「なんだって! それじゃまるで貴族や金持ちがやってるレベリングじゃないか!?」

「そうだが、何か問題が有るのか?」

「何かって、それはまっとうな冒険者のやり方じゃない」

「それでじゃ、見習いをいつまでも狩りに参加させず、食事も満足に与えず小突き回して扱き使うのが真っ当な冒険者なのか?」

「それは違う! そんな事は外道の仕業だ」

「では仲間になった若者を、一緒に狩りに同行出来るようになるまで、レベルを上げさせるのが悪なのか?」

「う!」

「俺は1日でも早く、彼らの中からパーティを組める者が現れて欲しいと思っている。だからその為に必要な支援は惜しみなく与えるが、それが悪事だと言うんだな」

「そうではない! そうではないが、それでは貴族や金持ちのドラ息子と同じだと言っているんだ」

「冒険者として共に生きて行く為の支援が、貴族や金持ちが見栄を張るために行うレベリングと同じだと言い張るのか?」

「それは、それは多少は違うだろうが」

「では逆にノーラに聞くが、ノーラは今まで1度も、自分が止めをさせる魔獣やモンスターを仲間に譲ったことが無いんだな!」

「う! それは、それは有るが、その相手は一緒に命懸けで戦った仲間だ!」

「俺にとったら、見習いでどれほどレベル差実力差があろうと、一緒に狩りを行う仲間だ。それに実力と役割に応じて、狩った獲物の配分には差をつけている」

「どう言う事だ」

「換金できる素材は、全て俺が独り占めしている。見習達が手に出来るのは、食料となる肉だけだよ」

「それは、それは不公平だろう!」

「さっきはレベリングを卑怯となじり、今度はパーティー内の配分を不公平と言ううのか。それでは以前ノーラのパーティーでは、見習にどう言う配分をしていたんだ」

「それは・・・・・」

「どうせ安飯を食わせる程度なんだろう、この冒険者ギルドの他のパーティーでは、飯すら満足に食わせなかったではないか!」

「・・・・」

「余り身勝手でみっともない事を言っていると、パーティの品位を下げることになるぞ。まあテトラ冒険者ギルドの所属と言う事で、既に評判は地に落ちているだろうがな」

「「「「「なんだと!」」」」」

「ゴーランの事件と言い、見習達の扱いと言い、他の街の冒険者ギルドで何と言われているかも想像できないのか? 真っ当な人間なら、街を移動していただろう、そんな冒険者が今まで1人もいなかったとでもいうのか?」

「それは、確かにそんな冒険者もいた、だが私達は残ってギルドを変えていく事を選んだんだ!」

「それは結構な話だが、その割には見習達が実力を付ける事に難癖をつけるんだな」

「それは、それは遣り方が汚いからで・・・・・」

「見習達はノーラの奴隷なのか? ノーラの思い通り動かないと汚いのか? それでレベルを上げることが出来ず、いつまでもノーラの下で顔色を窺うべきなのか?」

「違い違う違う! そんな心算で言ったんじゃない!」

「じゃあ俺のやり方に口出しするな! 俺は1日でも早く見習達が単独で狩りが出来るように、やれる限りの手を尽すんだ、これ以上邪魔をするようならギルドメンバー全員殺すぞ!」

「「「「「!」」」」」

俺の言葉にロビーと食堂にいた全員が凍り付いた!

獲物の解体に受付に立ち寄った際に声をかけられたが、意外な結末になってしまった。

(ミノルにしたら厳しい言動だな)

(まあな、自分がやれなかったことを俺がやったから、嫉妬から正気を失っているんだろう)

(心を入れ替える事を期待して、わざと厳しく言ったのか?)

(ああ、このギルドの冒険者の中じゃ見どころがあると思うからな)

(何もこんな女に期待しなくても、見習達が直ぐ育つのではないか?)

(そうだな、だが袖触れあうも多少の縁とも言う、絡まれたのも縁と考えて、言葉で改心させられるなら易いものさ)

(まあそれならそれでよかろうが、もう済んだであろう)

(そうだな、帰ってレベリングに協力してやろう)

(そんな事は分身体に任せておけ、それよりアグネスに新しい料理を考えてやれ)

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