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初老おっさんの異世界漫遊記・どうせ食べるなら美味しいものが喰いたいんだ!

克全

第97話見習事情

「ずいぶんと小さい子が増えているが、どうなっているんだ?」

「御師匠様! お帰りなさいませ」

「ただいま、この子供達は新しい見習い冒険者なのか?」

「はい、近隣の村々から集まって来てしまいました」

「ギルドマスターは、見習希望者を全て受け入れたのか?」

「はい、御師匠様の噂が瞬く間に広まってしまい、暮らしが苦しい家がこぞって子供を預けに来たそうです」

(ミノル、ギルドマスターが故意に噂を流したのではないか?)

(その可能性は有るな、俺を当てにして、間引きされたり奴隷に売られそうな子供達を助けようとしたのなら、それはそれで正義なのだが、俺への嫌がらせなら報復しないといけないな)

(ふむ、報復するのか?)

(ギルドマスターに悪意があればね)

「御師匠様、どうかなさいましたか?」

「食料が大丈夫だったか心配になってね」

「御師匠様が莫大な量の食糧を置いて行ってくださいましたし、ギルドからも獲物を受け取れるようにして下さっていましたので、全く何の問題もありませんでした」

「そうか、だがこの状態だと鳥を狩る練習は出来なかったのではないか?」

「はい、御指示通りの全員参加の訓練は出来ませんでしたが、班分けして、子供達の世話をする班と狩りをする班の交代制にしました」

「そうか、それはよくやってくれた」

昨日は1日かけてベーコン・ハム・ソーセージ作りに励んだが、今日は夜明け前に街に入りギルドに挨拶しようとしたのだ。だが遠くから気配探ったら、見習達の部屋の人数が明らかに倍増していたので、不審に思って先に見に来たのだ。

「御師匠様、今日から狩りの指導を再開して頂けるのでしょうか?」

「その心算だったが、この子達をここに置いておくわけにはいかないしな」

「はい、御師匠様ならそう言って下さると思いました。ですのでみんなで話し合って、班分けしておきました」

「そうか、それはよくやってくれた」

(ふむ、このイルオンと言う子供、思っていたよりよくやるな)

(そうだね、リーダー役を与えられたことで一皮むけたのかもしれないね)

(ふむ、役割が人を育てたか?)

(まあ実際の話、狩りでレベルが上がり経験も積み重ねているからね)

(それはそうだな)

「御師匠様、朝食がまだなんですが、どうさせていただきましょう?」

「俺はギルドマスターに事情を聞いて来るから、その間にしっかりと腹ごしらえしておいてくれ」

「承りました」

俺とイルオンが話している間、新たに見習いとなった子供達は恐々様子を伺っている。俺が指導した事のある、以前から見習いだった者達は、顔を輝かせながら俺とイルオンの話を大人しく聞いている。良くも悪くも以前のパーティで厳しくされていたから、割り込んで来るような者は1人もいない。

入り口には、女子部屋から様子を見に来た子達が覗き見している。向こうが見えなくなるくらい一杯に集まっているが、班長のジェミニやローザ達だけではなく、全員が私語する事無く俺とイルオンの会話に聞き耳を立てている。

「聞いていたな、自分達で班分けした通り、狩り班と待機班に分かれて準備をしてくれ」

「「「「「はい!」」」」」

みんな嬉しそうに返事をしてくれる。

帰って来たことをこれほど喜んでもらえれば、自然と愛情も湧くと言うもので、今後の事でギルドマスターと交渉しようと言う気も起きる。全員引き取って村を立ち上げるという手もあるが、そうなると換金や物資の購入が不便になるし、万が一俺が死んでしまったり長期の留守をしてしまった時に、子供達が全滅すると言う最悪の状況もあり得る。

ここはギルドに所属したままで、ある程度の権利と自由を確保した独立部隊としたい!

「ではそこを開けてくれるかな?」

「「「「「ごめんなさい」」」」」

部屋の入り口を塞いでいた女の子たちが、一斉に移動してくれた。





「ギルドマスターに会いたいんだが」

「はい! 直ぐに確認して参りますので、少々御待ち下さい」

俺はギルドの建物に入って見習達の部屋に直行したのだが、当然ながらロビーを突っ切って奥に入るしかない。当然だが受付のギルド職員達には見られているし、ロビーや酒場でたむろしている冒険者達にも見られている。

見習達の部屋から戻る頃には、ギルド内で俺の帰還を知らない者がいない状況になっていた。当然ギルドマスターにも情報は届いているはずで、逃げる心算なら既に逃げてしまっているだろう。

「会われるそうでございます、御案内させていただきますのでどうぞこちらへ」

「ありがとう」

(逃げなかったのだな)

(そうだな、まあ正当な理由と言ううか、言い訳が立つのだろうな)

(言い訳の内容は大体想像がつくな)

(そうなだな)




「用意はいいな、出発!」

俺はギルドマスターとの話し合いを済ませて、見習の2/3を引き連れて狩りに出る事にした。その2/3も以前から見習いをしていた者だけで、新人は残った1/3の経験者が基礎を指導をしている。

「御師匠様、ギルドマスターは何と言ったのですか?」

「俺の噂を聞いた貧民たちが、真剣に子供の幸福を考えて、冒険者ギルドに預けに来たのだそうだ」

「はい、それは聞いていましたが、御師匠様がギルドマスターに話を聞きに行かれた以上、何か裏があったのではありませんか?」

「そうだな、有ると言えばあったな」

「お聞かせいただけますか?」

「ああいいぞ」

イルオンが事情を聞きだそうとするが、俺とイルオンの会話にみんなが興味津々だ。こんな事では早く危険を察知するはずの索敵が疎かになってしまう。命懸けの狩りで、索敵がこの状態では全滅もあり得る。みんなの命を大切に思うのなら、気を引き締めさせなかればならない。

「索敵! 注意力が散漫になっているぞ!」

「「「「「はい! ごめんなさい!」」」」」

索敵役だけでなく、狩りに参加している全見習いが、雷に打たれたように直立になり、一気に集中力が高まった。

「申し訳ございません!」

「気をつけろ、どれほどの実力者や経験者であっても、油断していたら簡単に命を失うのが狩りだ。常に緊張感を持って行動してくれ」

「はい!」

「ギルドマスターの話では、俺がゴーランをぶちのめした事は痛快事件となり、瞬く間に街中どころか近隣の村々にまで広まったそうだ」

「それはそうでございますね、ゴーランの所為でモンスター討伐に支障をきたしていましたから、村々の中にはモンスターの直接被害を受けていたところもありました。直接の被害は無くても、モンスターを恐れた巡回商人が村々を回らなくなり、経済的に困窮する村人も多くいましたから」

「そんな人達が拍手喝采で噂を広めたとギルドマスターも言っていたが、それに加えて俺がイルオン達を助けたことで、今まで待遇が酷くて冒険者ギルドに子供を預けられなかった親達が、一斉に子供を預ける決断をしたの事だ」

「はい、僕もその噂は聞きましたが、それだけではないとも聞きました」

「他の理由もあるのか? それはギルドマスターから聞いていないぞ」

「僕が聞いた噂は、ゴーランの所為で街道の治安が悪化した村々は、冒険者ギルドに子供を預けたくても街に来る事が出来なかったそうです。ですがゴーランが排除された事で、多くの冒険者が一斉に狩りに出て街道が安全になり、冒険者ギルドのある街まで来れるようになったとの事です」

(やれやれ、それが本当の原因でもギルドマスターは絶対に認める訳にはいかんだろうな)

(そうだなセイ、冒険者ギルドが機能しなくて治安が悪化していたとうのなら、ギルドマスターは責任を問われるだろうから、認めるわけがないな)

(それに見習希望の子供達を全員許可してミノルに押し付ければ、費用も責任も回避できるな)

(まあそう言う事だな、だがこちらの出した条件は全部認めてくれると言うのだ、それで好いじゃないか)

(だがギルドマスターが認めただけであって、街の領主や国の許可はまだだろう?)

(確かにそうだが、俺が始めてしまってから領主や国が不許可にしたら、それこそギルドマスターの責任問題になるから、許可が通る自信があるのだろう)

(ふむ、最初からギルドマスターの裁量範囲の事であるか?)

(だと思うぞ、国や領主から事前に与えられている、冒険者ギルドの権利の範囲内の事なんだろう)

(ミノルの想定内なのだな)

(まあな)

(ミノルも結構策略家だな)

(うるさいわ!)

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