初老おっさんの異世界漫遊記・どうせ食べるなら美味しいものが喰いたいんだ!

克全

第55話肉祭り

陽が暮れる前に城門をくぐり冒険者ギルドに戻ったのだが、獲物の大小幼若を無視すれば、以下の成果となった。

ホーンラビット:18頭
ファングラット:39頭
リカオン   :42頭

リカオンを仕留めた後で、ファングラットの家族を4組発見し狩れたのが大きかった。この世界がレベル制である事がよく分かったのは、止めを刺しただけでも見習7人のレベルが上昇した事による。この世界の真理など考えても仕方がない、そんな事を真剣に考えてしまったら、そもそも魔法やモンスターの存在すら否定しなければならなくなる。

眼の前にある事実を受け入れ、その中で最善を尽くすしかない。

その事実の1つが獲物の販売価格だ、全部が成体ではないので、買い取り価格は標準価格を大きく下回るそうだ。肉は見習達の食事の材料にするので売らなかったが、毛皮と牙・角は売り払う事にした。毛皮は安価な衣服や防具の材料になるそうだし、牙や角は安価な鏃(やじり)や槍先(やりさき)になると言う

ホーンラビット毛皮:銅貨100枚× 12=銅貨1200枚
ホーンラビット角 :銅貨200枚× 12=銅貨2400枚
リカオン毛皮   :銅貨100枚× 20=銅貨2000枚
リカオン牙    :銅貨 10枚× 80=銅貨 800枚
ファングラット毛皮:銅貨100枚× 25=銅貨2500枚
ファングラット牙 :銅貨 10枚×100=銅貨1000枚
合計                   銅貨9900枚

両替後
大銀貨:9枚
小銀貨:9枚

「さて皆(みんな)、獲物の分配だが、売却した素材は全て俺の取り分とする。だが、食糧として使える部分は皆(みんな)の取り分として公平に分ける」

「ありがとうございます! 貴重な経験値を稼がせて頂いた上に、生きて行くのに絶対必要な食糧まで分けて頂けるなんて、今までに比べれば天国のようです」

「そうか、では明日からもこの条件で狩りを続けて行くからな」

「はい、ありがとうございます。ですがミノルさん、僕達だけで分けるのでは今までのパーティーと同じですよね? ミノルさんが僕達に教えたいのは、仲間を公平に扱い共に生きていく事ですよね」

「そうだ」

「僕達7人がどう返事するか試しているんですよね?」

「そうだ、よく分かったな」

「ミノルさんが狩りに行く前に、僕達7人に腹一杯食事させてくれましたから、同じ事を僕達もするべきなんだと思いました」

「で、どうしてくれるんだい?」

「ここに集まってる、43人の食事の材料にします! これからはここにいる43人で助け合って生きて行きます!」

今俺達がいるのは寄宿舎の貧しい一室で、日暮れとともに戻って来た見習43人が一堂に会している。寄宿舎の造りは厩(うまや)と同じで、壁や柱は石材や材木が使われているが、地面は土のままで寝床は藁や干し草を集めただけだ。ベットも無ければ寝具もない、ギルド管理部分はもう少しましな待遇だと思っていたのだが、許し難い待遇だ!

そんな中でもイルオン達が優しく育ってくれているのが救いだ。

「そうか、そう言ってくれると助け甲斐がある。俺の村では当たり前に皆(みんな)が助け合っているから、ここのやり方がどうしても馴染めなかった。だが皆が助け合いの心を持ってくれているのが分かってとてもうれしい」

冬には底冷えするのだろう、部屋の真ん中に囲炉裏のように火を熾(おこ)す場所がある。そこに7人が食べた大鍋を出して、まだまだ残っているコボルトの塩鍋を43人で食べてもらう事にした。だがそれだけでは芸がないと思い直し、直ぐに鍋を移動して囲炉裏の火で、今日狩ったホーンラビット・ファングラット・リカオンの肉を焼くことにした。

人数が多いから、今使っている男部屋だけでなく、女部屋の囲炉裏も利用することにした。見習達の助け合う心がうれしくて、少しでも美味しく食べて欲しくて、でもこの世界にない調味料を使う訳にはいかなくて、塩をタップリあげることにした。

28人はよほど空腹だったのだろう、貪るように食べていたが、8人は優しい心を持ったパーティーに所属していたのだろう、チャンと夕食を食べた後だった。それでも肉を腹一杯食べれる機会はなかなかなかったようで、美味しそうに焼肉を頬張っていた。

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