話題のラノベや投稿小説を無料で読むならノベルバ

初老おっさんの異世界漫遊記・どうせ食べるなら美味しいものが喰いたいんだ!

克全

第34話モーニングセット

「ミャ~」

蚊帳防御結界(かやぼうぎょけっかい)を展開していたが、非常時に殺気や物音を聞き逃さないように、毒や悪意を持つもの以外は中にまで伝わるようにしていた。その御蔭と言うべきか、それともその所為と言うべきか、アグネスが「ミャーミャー、キャッキャキャッキャ」と愉しそうに騒ぐ声で眼が醒(さ)めた。

白虎は以外と子煩悩(こぼんのう)なんだろう、白虎お気に入りのプールにアグネスが入り込み、水の中を必死に泳いでいるのを優しげな眼をして見守っている。アグネスがまだおぼつかない足元で、必死にトランポリン部分によじ登り、うれしそうに不思議そうにしている姿が可愛い。

ざっと周囲を見渡したところ、アグネスはすでに朝食としてトンカツを食べて終えているようで、昨日大事そうに抱えて寝ていた大皿の中が減っている。

さて、どうしたものだろう?

大切な食べ物が痛まないようにするには、表に出しっぱなしのアグネス用の料理はアイテムボックスに入れておいた方がいい。だが野生動物の場合、自分の餌(えさ)を盗られたら命懸けで奪い返そうとする。アグネスが天使なのか魔族なのか、それとも獣人や人間なのかは判断できない。だが俺が与えたものであっても、一旦与えたものを勝手にどうこう出来るものではない。

大きさと言い、足元の頼りなさといい、アグネスは産まれてからそれほど日が経っていないだろう。人間なら新生児と言われるような状態だから、人と同じ形態で成長するとしたら、言葉を話す事すら不可能だろう。

だが天使や魔族の成長の仕方が分からない、もしかしたら新生児期から前世の記憶を引き継ぎ、新生児から数秒で一気に青少年期にまで成長するかもしれない。今まで読んだ小説の中にはそんな設定の話もあったし、今の俺も魔法が使えるし、白虎やドラゴンに生命の樹すら存在し一緒に飯まで喰っているのだ。

(我も天魔獣人などと言う種族は初めて聞いた、本来一代雑種の混血種族が、同じ混血種同士で交配を重ねて種として固定されたのかもしれない)

セイが俺の自問自答に入って来たが、そうなるとここにアグネスの親がいないことが不思議だし心配だ。アグネスが1人で誰かに攫(さら)われてきたのか、親と一緒の所を襲撃されて1人だけ助かったのか、どちらにしても親を探してやらなければならない。

(我も付き合おう、ミノルを異世界に召喚した事は、アグネスを無理矢理さらった場合と同じだからな。その程度では罪滅ぼしにもならんが、ミノルのやりたいことに全面的に協力する)

さて、今はセイと会話するような気分じゃないから、このまま色々考えてみよう。どうせ何を考えようと心の中を読まれてしまうのだから。

まずはアグネスの両親がこの近くにいないかの確認だが、リサーチとマップの魔法を同時起動すれば、索敵範囲内にいれば探すのは簡単だろう。

(マップ、天魔獣人族リサーチ)

無尽蔵とも言える魔力を使って索敵範囲を広げていったが、残念ながら1000km圏内に天魔獣人族は1人も存在しなかった。まあセイですら初めてみる種族名だそうだから、そう簡単に見つかるはずもない。

仕方がないな、腹が減っては戦は出来ぬとも言うし、ここはまず朝食を作ろう。その上でアグネスに与えた料理をどうするか考えよう、敵と認識されて嫌われるのは最悪の状態だから、料理を痛ませて捨てることになっても仕方がないだろう。

昨晩は半熟のスクランブルエッグを食べたから、今朝はそれ以外の卵料理を食べたい。手早く食べたいから、バームクーヘンのように何層にも巻いた卵焼きは時間がかるから却下だ。ベーコンやウィンナーはないが、グレーボアのレバーシチューが残っているし、ホーンラビット腿唐揚が幾種類も残っている。

俺は北京鍋にサラダ油を敷いて弱火で熱しつつ、卵10個分を割ってほぐし、作り置きしてある料理をアイテムボックスから取り出した。

「ミャァ~? ミャミャミャミャミャァ~?」

プールで遊んでいたアグネスが、俺のやっている事に興味を持ったのか警戒しつつも不思議そうに近づきて来た。料理の香りに惹かれたのか、料理を作る仕草が遊びと思ったのか、それともアイテムボックスから料理を取り出すことに興味を持ったのか。

ここは北京鍋の火を消して、思い切ってアグネスの知的レベルを確認することにした。

俺は一度アイテムボックスから取り出した料理や調理器具・食器なんかを、もう一度アイテムボックスに入れ直して消して見せた。そして直ぐにまた取り出すと言う作業を何度も何度も繰り返して、アグネスがどう反応するか試してみた。

するとアグネスにとって、1番大切な物はオークの丸焼きやトンカツと言った料理だったのだろう。アグネス用の料理が置いてある所まで行って、料理を消して見せたのだ!

消すと言うのは確認できなかったことによる例えで、恐らくは自分のアイテムボックスに入れたのだろう。それと言うのも俺がやって見せたのと同じように、何度も料理を出し入れしてはミャミャミャとご満悦(まんえつ)鳴いている。

これでアグネスに与えた料理を無駄にしなくて済むだろうし、非常時にアグネスが餓えることもなくなるだろう。俺は安心して料理を再開することにした。

俺は多めのサラダ油を入れた北京鍋を熱し直し、10個分程度の溶いた卵を注ぎ入れた。熱しながら手早く炒めてある程度の形を整え、中が半熟になるくらいのプレーンオムレツを完成させた。

白虎に創らせた大皿に置いて、デミグラスソースの代わりにレバーシチューを横に入れ、リュウが食べ残した野菜類も置く。野菜の上には各種の味付けをしたホーンラビットの腿肉唐揚げを置いて、コップに牛乳を注いで完成だ。

プレーンオムレツ:卵5個分
グレーボアのレバーシチュー:1人前
ホーンラビット腿肉塩胡椒唐揚:1本
ホーンラビット腿肉ニンニク醤油唐揚:1本
ホーンラビット腿肉カレー粉唐揚:1本
小海老の天ぷら付け合わせサラダ:1人前
フライドポテト:1人前
人参グラッセ:1人前
バターコーン:1人前
ほうれん草バター:1人前
牛乳:200cc

朝から結構な量を食べるようだが、どうも魔法を使う事でかなりのエネルギーを消費している可能性がある。今は全ての魔力をセイやセイの本体から供給されているとはいえ、それでは自立した人間とは言えない。俺自身の魔力を使い、俺自身で使った魔力を再生産出来るようにならないと、セイの操り人形のままだ。

「ミャゥ~ミャゥ~ミャゥ~!」

アグネスがもの欲しそうに俺に向かって鳴く!

完全に警戒心を解いた訳ではないのだろうが、料理をねだる姿は可愛すぎる!

俺は食べかけではあるが、レバーシチューのかかったプレーンオムレツを、アイテムボックスから取り出した皿に移してアグネスの方に差し出してやった。

さすがに手渡しでは近付いてくれないだろうから、命一杯手を伸ばしたところに皿を置き、自分はもう興味がないような素振りで新しいプレーンオムレツを焼くことにした。

アグネスは俺を警戒しつつも、プレーンオムレツが食べたくて仕方がなかったのだろう、ゆっくりゆっくり皿に近づくと、俺への警戒の視線を外す事なく食べだした。最初は舐めた程度だったが、一舐めして余りの美味しさに警戒できなくなったのだろう。俺への視線を外して、プレーンオムレツとレバーシチューを一心不乱に食べだした。

(お~い、主よ、俺にもそれを焼いてくれ!)

白虎もプレーンオムレツが食べたくなったのだろうが、それでもアグネスを驚かせ、食べる邪魔にならないように念話でオネダリしてきた。

(ああいいぞ、5個食べるか? それとも10個食べるか?)

(50個くれ!)

「初老おっさんの異世界漫遊記・どうせ食べるなら美味しいものが喰いたいんだ!」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く