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初老おっさんの異世界漫遊記・どうせ食べるなら美味しいものが喰いたいんだ!

克全

第30話ローストオーク

(仕方がないな、ならば我も協力するがミノルにも、もう少し細やかな魔法の使い方を覚えてもらおう)

「分かった、なにを覚えればいいんだい?」

(リサーチの魔法とマップの魔法を組み合わせて、特定の個体の居場所と状況を追跡する方法だ)

「それは前に使った、同じ種族のモンスターや獣を全て探すのではなく、1人とか1匹を探し出す魔法なのだな」

(そうだ、この子に名前をつけて追跡することが出来る)

「なんかとっても危険な事を聞いた気がするのだが、追跡出来るのはとても便利なのだが、名前をつけたりすると主従契約が成立してしまうんじゃないのか?」

(その可能性は確かにある、さっき食事を与えているから可能性は高くなる。まあこの子が主従契約を望めばの話だから、どれほどミノルが望んでも契約できない可能性もあるがな)

「いや、主従契約などしたくない! だがこの子を助けると言う思いはどうしようもない。それに名前をつけても、この子に直接呼びかける訳ではないから、この子自身は名前がついた事を知らなのだろう」

(確かにそうだな、それならば主従契約が発動されることもないかもしれんな)

凄く凄く小さな声で、ほとんど発声されていない俺とセイの会話ではあるが、それでも敏感な野生動物なら警戒して逃げると思う。だがこの子は警戒心全開ながら、この場から逃げようとはしなかった。恐らくは出しっぱなしにしている寸胴鍋のレバーシチューに惹かれているのだろう、よほど食べることに厳しい生活をしていたのだな。

決めた!

主従契約が発動されたとしても後悔はしない、なんとしてもこの子を助ける!

「セイ、この子にアグネスと言う名前をつけるよ」

(そうか、それがよかろう、では魔法を常時発動させるがいい)

「分かったやってみる、マップ、アグネスリサーチ」

マップにはアグネスのいる場所が、俺のいる場所を中心にうつし出されている。

(種族を確かめるには、アグネスのステイタスを知りたいと思えば分かるかもしれんぞ)

「おいおいおい、それが分かっていたなら、さっき聞いた時にセイがやってくれればよかったのだろうが!」

(うっかりしていたのだ)

俺は結構腹が立っていた!

これはどう考えてもアグネスと主従契約をさせるために、セイが仕掛けた罠だろう。俺をこの世界に召喚した事も、帝国軍10万兵を殺させた事も、全てセイが企んだ罠だ。こう言うやり方を今後も仕掛けて来るのなら、例え命を失う事になってもデュオを解消するべきかもしれない。

(すまぬミノル! もう2度とやらんから許してくれ、それにデュオを解消することなど出来んぞ)

「セイの言う事は信用出来ん! リュウに本当にデュオが解消できないのか確認する」

(本当だ、嘘など言わん、と言っても信用してもらえないだろう、だがアグネスのステイタスを確認してくれれば、我が本当の事を言わずミノルが主従契約を結ぶようにした意味を分かってくれる)

セイが余りに真剣に念話を届けてくるので、アグネスのステイタスを確認したのだが、嫌々ながらセイの言った意味が理解出来てしまった。

「ステイタス」
名 前:アグネス
種 族:天魔獣人
年 齢:0
職 業:孤児
レベル:5

体 力:  35
魔 力:1035

筋 力:  15
知 能: 未発達
生命力:  15
俊敏性:  15
器 用:  15
精神力:  15
幸 運:1005

攻撃力:  15+
防御力:  15+

スキル:未取得

固有スキル:経験値倍増・レベル4(16倍)


種族が天魔獣人てなに?

余りに突拍子がない事が書いてあって、頭の中が真っ白になる。

ハーフエンジェルとかハーフデビルならまだ理解できるが、天魔獣人はどう理解すればいいのだろう?

もしかしてエンジェルとデビルのハーフが、獣人と愛し合ってできた子なのかな?

(分かってくれたかミノル、殺してしまわないのなら、手元に置いてどう言う風に育つのか確かめなければならない。0歳で1000を超える魔力と幸運を持つなどありえないのだ)

「分かった、どれくらい1人で生きて来たか分からないが、幸運が1000もあってヤマネコに襲われて死にかけたのもおかしな話だし、俺たちと出会って助ける事になったのも必然なのかもしれないな」

(そうなのだ、アグネスはミノルに育てられる運命なのかもしれぬ)

「俺たちではないのだな?」

(アグネスには生身の親が必要なのであろう、我ではスキンシップができぬ)

またセイにいいように操られているような気もするが、まぁ今回も分かって上で操られてやろう。それよりこの状況なら少々強気に接触しても大丈夫だろう

食事を続けて与える事で家族としての関係が築けるのか、それとも主従契約が発動してしまうのかは分からない。だけで初めから諦める心算は無い、ここは家族のような関係が築けると信じて、出来る限り愛情のこもった料理を作る事にしよう。

問題はどんな料理を作るかなのだが、獣人なら肉食を中心としたメニューを考えるべきだし、魔族でも生肝・生肉を食べるか生気を吸い取るイメージだ。だが天使と考えれば、マナ(神のパン)しか食べないイメージだが、混血や複合種なら雑食になっているのだろうか?

いつまでも悩んでいても仕方がない!

俺の勘では、肉食中心だが雑食も可能だと思う、それに香りで引き付けて逃げないようにように出来そうだ。だからオークの丸焼きを作ることにするが、下手に刺激の強い香辛料は使わず塩胡椒だけして焼いてしまおう。

「セイ、オークを丸焼きにするのは気分が悪いから、後は任せた」

(ミノルを騙(だま)した負い目があるから、ここは作るしかないだろうな、なんでこんな時に白虎がいないんだ!)

セイは自分のアイテムボックスから、白虎に創らせた魔道オーブンとオークを1匹取り出して焼き始めた。

アグネスは何もない空間から魔道オーブンとオークが出て来たことに驚き、5mほど一気に飛び下がって逃げかけたのだが、寸胴鍋のレバーシチューをもっと食べたいのだろう。逃げたいが逃げれない、そんな逡巡(しゅんじゅん)する表情がとても可愛い。

直ぐにセイが焼き始めたオークの香(こお)ばしい香(かお)りが密林の中に漂い始めたのだが、これは不味いのではなかろうか?

(心配するな、すでに結界は展開させているから、原初級以外のモンスターがこの中に入り込むことは不可能だ)

俺の心の中の疑問にセイが答えてくれるが、なに1つ秘密に出来ない事に少々苛立(しょうしょういらだ)ちを覚えてしまう。

(これをアグネスに与えてやれ、名前を呼んで近づいてくればよし、警戒して近づいてこないとしても、アグネスと呼びかけ続ければ自分をアグネスと認識するかもしれない)

いつの間にかアイテムボックスから、白虎用に冷(さ)ましてあるオークの丸焼きを取り出し、風魔法を駆使して食べ易い大きさに切り分けてある。グロテスクなのでまじまじと見るのは嫌なのだが、どの部位を切り分けたのかが気になってしまうのは、俺のどうしようもない業(ごう)かもしれない。

俺が何度か肉の部位ごとの美味しさを説明したのを覚えているのだろう、脂身が多くて美味しいトントロの部分を切り分けてある。確かにこの部位なら食べやすいし、表面から切り分けやすかっただろう。内臓を取り出した後で丸焼きしたとは言え、ヘレの部分だけを切り分けるのは難しかったのかもしれない。

まあヘレやロース・肩ロースなどの違いはまだ教えていないから、カシラかトントロしか選べなかったとも言える。

(そうだ、正肉の部位ごとの美味しさと料理法も教えてもらわねばな)

(おい! なぜこんな所に留まっているんだ? 飯を喰うのなら俺にも食べさせろ主!)

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