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初老おっさんの異世界漫遊記・どうせ食べるなら美味しいものが喰いたいんだ!

克全

第29話突然変異種

「セイ、これから行く場所はどんな所なんだい?」

(そうだな、我の生命の森の境界とリュウの竜の境界に人族の境界が接しているうえに、数千年前から魔族の境界とも接している。まぁ魔族に関しては、ほとんど境界を超えることがないので実害はないがな)

「ふ~ん、魔族なんかもいるんだ?」

(我にもほとんど分からん境界だが、ミノル故国と同じで、我らの世界とは違う理(ことわり)で出来ている世界だ。それが境界を接してしまったせいで、色々と新たな生物が産み出されてしまっている)

「ふ~ん、どんな生物なの?」

(オークやコボルトは見たであろう、本来人族と獣族は交わるものではないのだが、それが合わさった人型の獣が現れてしまったのだ)

「オークとコボルトは実際見たし、リュウがミノタウルスの話もしていたけど、他にも俺の知識にあるような人型モンスターがいるんだな?」

(そうだ、ゴブリンやリザードマン・マーマンなども産み出されてしまい、人族や獣族と争うようになってしまった。そのためにこの地域は防衛の為に、アムラ王国でも有数の城砦都市が築かれているのだ)

俺とセイは、夜明けとともに開拓村から次の街に移動すべく森の中を歩いていたが、左手でセイを持ちながら歩く速度は、まるで駆け足ように素早いものだった。意識して力を抑えなければ、レベルアップした筋力や瞬発力がとんでもない結果を産み出してしまう。

これが普通の人間と一緒に行動していれば、普通の人間の動作に自然と合わせて動けるのだが、比較対象がいないと今までと同じ要領で身体を使ってしまう為、人外の鬼神のような速さと力強さで動いてしまっている。

まあ誰憚(だれはばか)る事無い密林の中だから、目的地に速く着けるからと、力を抑える事無くビュンビュン歩いている。セイは普通の会話が念話だから念話を使い、俺は念話に慣れていないので言葉を発して会話すると言う、日本なら「怪し人間が独り言を話している」と通報されるような情景で密林を進んでいる。

そうそう、白虎とは別行動をとっている。セイの話では、四聖獣に数えられる白虎は人間族から見ると、とても敵(かな)わない強大なモンスターだそうで、一緒に街に入ることなど不可能だそうだ。だから別れると言ったら大いに駄々をこねてしまい、余りにワガママを言うのでセイが滅ぼそうとしたくらいだった。

白虎に食事を与えたことで多少なりとも愛情が湧いていたから、夜には街の外で野営するから、その時に一緒に食事をしようとセイと白虎の双方を宥(なだ)めて争いをおさめたが、セイが結構血の気が多いのに驚いた。植物の親玉のはずだから、穏やかな性格のはずだと言うのは俺の先入観なのだろうか?

白虎は自由時間を愉しむように、気配すら感じられない遥か遠くで狩りをしているようだ。



(ミノル、誰か死にかけているようだ)

「人間なのか?」

(どうもおかしいのだ、気配としては人のようでもあり獣のようでもあるから、人型モンスターの可能性が強いのだが、我の知るオークやリザードマンとは違う気配なのだ。人獣族の可能性が1番高いのだろうが、もしかしたら新種の人型モンスターと言うこともある)

「おいおいおい、いくらなんでも新種の人型モンスターに遭遇するなんて有り得ないだろう。それより人獣族って初めて聞くけど、人狼とか人虎とかがいるのか?」

(ああ、これも色々な境界が接してしまっている所為(せい)だろう、満月に獣に変化してしまう人間が産まれているようだ、だが我の知る人獣族とは少々気配が違うのだが)

話しながらも、それこそ飛ぶように弱った気配に近づいたのだが、そこにはチョット想像していたのとは違う生き物が傷つき横たわっていた。

いや、日本で似たような想像上の生き物は見たことはあるのだ、だがいくらコンピュータグラフィックで綺麗に描き創り出したとしても、リアルで立体的に見るのとは衝撃度が全く違うのだ!

馬鹿野郎!

何をどうでもいい事を考えているんだ、今はまず助ける事だ!

「セイ、この子を助けるのはどうしたらいい?!」

左目の潰れている、、左手が二の腕から千切れかけているし内臓も飛びだしている、息も浅いからあまり長くは持たないのは確かだ!

(デカキュアを唱えてやれば十分だ、まあ、その後で栄養のある食事を与えてやれば完璧だろうが、また主従契約でもする心算なのか?)

「そんな気はない! だが死にかけている者を見捨てる訳にはいかない」

(そうか、そうだな、助けてやるべきだろう)

「デカキュア!」

横に倒れているヤマネコのような生き物まで蘇らせないように、倒れている子に集中して魔法を掛けたのだが、見れば見るほど不思議な生き物だ。

頭には小さな角が2本生えているが、悪魔の角なら山羊の角と言うイメージが強いのだが、虎模様の黄色と黒の毛が生えた角だ!

耳は見事なコオモリ耳で、もしかしたら夜でも、自分が発した音が何かにぶつかって返ってきたもの(反響)を受信し、その方向と遅れによってぶつかってきたものの位置を知ることが出来る反響定位(はんきょうていい)が可能なのかも知れない。

1番問題なのは顔なのだが、ほんとうに可愛らしい顔をしているが、半ば空いた口ならのぞく犬歯は鬼と言うべきなのか、それとも虎と言うべきなのだろうか?

両手の二の腕はスベスベとした人と同じような肌なのだが、肘から先の前腕部は毛に覆われ、手は肉球のある猫の形態だ。何故なら犬の様な爪では無く、必要に応じて出し入れ出来る爪になっている。

胸は顔や首・二の腕と同じように人と同じ肌なのだが、背中にはクジャクのような一対の羽と、タカのような一対の羽に、コウモリのような一対の羽が生えている。三対六枚の羽だと、熾天使(セラフィム)と同じような気がするが、そちら方面の知識は乏しいのでなんとも言えない。

お腹からお尻に掛けてなんだが、人と同じ肌なのだが、まあそのなんだ、女の子だ!

問題はシッポが生えている事なんだが、悪魔の様なシッポでもなければ蛇が生えている訳でもない。猫のような長く毛の生えた立派なシッポが生えている

大腿部も人と同じ肌なのだが、膝から下の下腿部は前腕と同じように毛が生えており、足も猫の様に肉球がある。

「なあセイ、何度も聞いて悪いのだが、この子は何者なんだろう?」

(うむ、僅(わず)かな情報と知識からの判断だが、悪魔族そのものではないとは言える。だがコオモリのような耳と羽があるから、全く悪魔族の影響がないとは言えん。しかしなから羽が一対では無く、クジャクのような羽にタカのような羽も生えているから、鳥族と獣族の影響も受けているようだ)

「俺の乏しい知識の中に、三対六枚の羽は上位天使と一致するのだが、天使の境界が新たにここに接したとは言えないだろうか?」

(有り得ないとは断言できんが、我にそのような兆候は感じられなかった)

「新種に出会ったと言う有り得ない偶然でないとしたら、マッドな魔法使いが合成獣を創り出したと言う可能性は有るかな?」

「無いとは言い切れないが、このような場所だから新種か突然変異種の可能性が高いだろうな」

「ううううう」

「起きそうだな、食べ物を出して置いてやろう」

血もたくさん失っただろうから、オークのレバーシチューがいいだろう。それもとビタミンの事を考えれば、生のオーク・レバーを出しておけばいいだろうか?

「ヴァッ! シャアー! フゥー!」

起きたのはいいけど、怒っているし警戒もしているな、ここは食事を置いて遠くで見守ってあげよう。抜き手も見せないような早い速度で、アイテムボックスから寸胴鍋に入ったオークのレバーシチューを取り出したが、この子には何が起こったかもわからなかっただろう。突然現れた寸胴鍋に驚いて逃げ出したい所なのだろうが、空腹すぎて動くのが困難のようだ。

さてどうしようか?

今動いて寸胴鍋から皿や北京鍋にレバーシチューを入れようとしたら、さすがに死力を尽くしてでも逃げようとするだろう。そうなると体力のないこの子は、今度こそ死んでしまうかもしれない。いくら蘇らせる魔法を知っているとは言っても、眼の前で人種かもしれない子が死ぬのを見るのは嫌だ。

(仕方のない奴だ)

セイの念話が届いたと思ったら、寸胴鍋から食べ易いスープだけが宙を浮いて突然変異種の前にフラフラと漂(ただよ)い出てくる。

「ありがとうセイ」

どうやらセイが風魔法を駆使して、スープをあの子の食べ易い場所に置いてくれるようだ。スープの形からして、空気を深皿のような形に整えてその中にいれているのだろう。空腹に我慢が出来なくなったあの子が、スープに顔を突っ込むようにして急いで食べている。

食べ方も猫のようで、ペロペロと舐めるような食べ方なのがとても可愛い!

続いてセイが寸胴鍋からレバーの塊を取り出したが、風魔法を駆使して一口サイズに切り刻んでいる。一口レバーも宙を漂わせてあの子の眼の前まで持っていってくれたが、今度は余り警戒せずにカプカプと食べだした。

これで今直ぐ飢えて死ぬような事にはならないだろうが、これからどうするかが大問題だ!

あの子が人種であるとしたら、少々強引にでも保護して守ってあげたい!

だが獣やモンスターなのだとしたら、弱肉強食の掟に従ってここに放置しておくべきだろう。可愛そうな気もするが、人間の好悪だけてペットにして野生動物の自由を奪ってはいけない。常に命の危険は伴うが、家畜やペットにされるよりは、自由な野生動物として生きる方が幸せだと思う。まあ俺の勝手な感傷だけどな!

(ミノル、正直判断が難しい)

「どう言う事だい?」

(突然変異種だとは思うが、気配は人・獣・モンスター・鳥の全てが含まれている全く初めて感じるものだ)

「気配で判断できないとしたら、なにで判断すればいいんだ?」

(知能で判断すべきなのだが、かなり幼い個体のようで、知能があったとしても念話や会話が出来る年ではなかろう)

「それは困るぞ! 人種だとしたら見殺しには出来ん!」

(だとしたらスリープの魔法で眠らせて保護するか、根気よく餌付けするかだな)

「仕方がないな、街に入れなくなったとしても見殺しには出来ん」

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