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初老おっさんの異世界漫遊記・どうせ食べるなら美味しいものが喰いたいんだ!

克全

第26話ホルモン焼き

リュウがセイに呼ばれて来てくれたようだ、どうやら村人を怖がらせないように姿も気配も隠してくれているようで、忙しく料理を作る村人は全然気づいていない。

(村人たちよ、我の友人・リュウがやって来た。恐ろしく巨大で凶悪な姿をしているが、とても気のいいやつなので怖がらないように)

どうやらセイが分身体に話させてくれたのだろう、村人にも俺にもリュウの事を説明している。いや、もしかしたらセイが分身体に成り代わって念話しているのかもしれないが、セイや本体・分身体がどう言う風に意識や知識を共有し使い分けているか分からない。

(さあリュウよ、姿を表すがいい)

(いいのか? 絶対怖がると思うが、セイがそう言うのならいいだろう)

直接言語にするのか念話を使うのか、念話でも個人同士で秘密に使うのか集団で使うのか、どうやっているのか全く分からないが、セイがその場に応じて使い分けてくれているのだろうから深く考えるのは止めよう。

「「「「「ギャァ~!」」」」」

(動くな! 我を信じるならリュウを受け入れよ!)

「だから怖がると言ったではないか・・・・・心配するな、余は何もせぬ」

セイの奴が何か魔法を使ったのかもしれない、恐慌状態(きょうこうじょうたい)に陥った村人を一言で平静にさせた。

(よいか、リュウは我の友人だ、だから絶対に怖がったりするな、よいな!)

「「「「「はい」」」」」

村人たちは何とかリュウに対して逃げ出さずに踏(ふ)み止(とど)まっている、これは魔法の手助けがあったとしても驚(おどろ)きだ。開拓村に来るような人間だから、今までの人生でも修羅場(しゅらば)をくぐってきたことがあるのか、もしくは絶対権力者に命を握られ逃げられない経験があるのかもしれない。

(さあリュウよ、村人が作ったオークマメのショウガ醤油煮を食べてみてくれ)

「うむ、喜んで食べさせてもらおう。おおおおお! これは美味い、余は満足じゃ」

リュウが大袈裟(おおげさ)に喜んでくれている、それを受けて村人に引きつっていた表情が徐々に緩(ゆる)んで来ている。まだ完全に安心出来ないようだが、自分たちの料理がリュウを満足させる事が出来ると自信を得たのかもしれない。

(リュウよ、これも村人が作ったオーク胴体のマスタード煮だ、試しに食べてみてくれ)

御神体の周りに寸胴鍋10杯が現れた、どうやらアイテムボックスに入れていた保存食を出したのだろう。ほとんど骨肉と調味料だけで作ったマスタード煮だが、リュウにはこの方が美味しく食べれるだろう。

「おおおおお! これも美味いぞ!」

セイなのか御神体なのかは分からないが、最初からリュウに食べさす心算だったのだろう。食べ応えがあるように骨付きで大きく切り分けてあるが、リュウはバリバリと骨ごと食べている。寸胴鍋10杯分だと1610リットルもあるから、リュウでもそれなりに満足出来る量だと思う。

(まだ満足していないようだな、ではこれとこれも食べるがいい)

御神体なのかセイなのかは今も判断できないが、御神体の周りに新たに20個の寸胴鍋が現れた。

(オーク胴体のスティファド風煮込みとイタリア猟師風煮込みだ、今日はこれだけ用意したおいたぞ)

「そうか、それは有り難い。おおおおお! これも美味いの~、ホーンラビットで作った物も美味しかったが、オークで作った物は脂が乗っていて更に美味いぞ!」

(満足したなら土産を渡さんか!)

「おお、そうであったな、些少(さしょう)で済まぬがコボルトだ、受け取ってもらおう」

どうやらセイとリュウの間で前もって打ち合わせていた出来レースなのだろう、村人が作った料理をリュウが食べて満足し、その礼としてモンスターを渡すと言う取引を村人に印象付ける心算(つもり)のようだ。しかしながらリュウの狩るモンスターの量は半端ない、事もあろうに1000頭以上のコボルトが眼の前に現れるのだから。

(そうか、料理の対価としては少々多いが、半分は村人の手間賃としてもらい、半分は今度来た時に料理として出してやろう)

「そうか、それは愉しみだが、余が毎日来てもいいのかな?」

(それは構わんが、食べたい物がある時は事前に自分で狩って来いよ、村で出せるのはリュウが狩って来た物だけだからな)

「そうか、ではベアーやミノタウルス狩って渡しておこう」

「「「「「おおおおお」」」」」

村人が歓声をあげたから、ベアーかミノタウルスのどちらかが御馳走(ごちそう)なのだろう、いや、両方とも御馳走なのかも知れないな。

「今日は美味しい物を食べれて満足した、ではまた来させてもらうぞ」

リュウが三文芝居を終えて飛んで行った、これでゆっくり食事が出来ると言うものだ。

「さあ、リュウを迎えて身心が疲れただろう、思いっきり楽しもうじゃないか!」

「「「「「おおおおお」」」」」

俺の言葉を受けて村人たちも緊張を解くことが出来たようで、満面の笑みを浮かべて御神体に顔を向けている。どうやら御神体に肉をくださいと祈っているようで、ポコポコとオークやホーンラビットの肉が現れている。

俺もオークに使ったバーベキューコンロを出して使い方を村人たちに教えて、それぞれ焼肉を腹一杯喰うことにした。ここで酒を出すか少々迷ったのだが、俺自身が酒を飲めないので村人に悪癖(あくへき)を勧めるのは止めることにした。白虎は酒癖(さけぐせ)が悪くないが、村人は人数が多いから、中には酒乱が混じっている可能性がある、だからどれほど豊かになっても酒は禁止させよう。

俺はオークとボアで網を共用するのが嫌だから、自分専用のバーベキューコンロを確保していた。自分から壁を作っているようだが、村人たちは救世主の俺を特別視してくれているので、当然の様に受け入れてくれている。

事のついでだから、村人に肉の部位ごとの美味しさを分かってもらおうと、説明しながら食べるようにした。村人もホルモンを部位ごとに分けて食べる事の美味しさを理解してくれたようだが、タンやタンシタ・カシラ・トントロ・ドーナッツに関しては正肉と認識していたようだ。

だがそれでもキッチリ部位を分けることで、首の肉であるトントロは脂身が多く、口のなかでとろけるような食感とコリコリした歯応えが味わえることに驚いていたようだ。今までは貴重な獲物は、丸焼きにしてから分け合っていたから、部位の美味しさよりも量が沢山もらえることが大切だったようだ。貧しい村では味よりも量が優先されていたのだろう。

ハラミ(横隔膜)は肉と同じなのだが、内臓を痛めるような狩りの方法では糞尿(ふんにょう)で汚染されるので、今までは好んで食べられていなかったようだ。だが俺は好物なので、バラ肉とハラミの間にあるエンガワと言う、脂が少なく肉のように食べられる部位と共に、バーベキューとして焼いて食べて見せた。

ハツ(心臓)はホーンラビットの時と同じで、クセや臭みがほとんどなく、脂肪も少ないためさっぱりした味わいで、筋繊維のシャキシャキとした食感が愉しめる部位だ。ガツ・レバー・マメ・シロコロ(大腸)に関しては既に御神体と俺が教えていたから、ただ焼いて食べるだけで何の説明もしなかった。

テッポウと呼ばれる直腸の部位は、開くと鉄砲の形に似ており弾力が強く噛み応えがある。俺は焦げる寸前までよく焼いて食べるのが好きだが、場所が場所だけに下ごしらえが大切になってくる。

チチカブと呼ばれるメスの乳房は14個もあり、脂っぽくなくミルキーな味わいで、火が通りやすく直ぐに焼けるのが特徴で、ホルモンの中でも食べやすい部位だろう。この世界に眼が悪い時には眼を喰えと言う思想が有るかわ分からないが、乳の出が悪い御母さんが好んで食べるようになるかもしれない。実際男性器と睾丸(こうがん)は精力剤として高値で売れるそうだから、有り得る話だろう。

ヒモと呼ばれる小腸は、全面に細かいヒダがあり細長くて薄くやや硬めで煮込むと深い味わいになる。焼いても美味しいのだが、これは取っておいて腸詰の材料にしたいと思う。

コブクロと呼ばれる子宮は、食べるのならさっぱりした味わいとコリコリした歯切のよい食感が特徴で、煮込み料理にも向いているが焼いて食べても美味しい。だがこの世界では美容や治療の薬の原材料にとして高値で売れるから、他に食べるものがあるなら商人に売る方が現金収入になるそうだ。

最後にドーナッツ(ノド軟骨)はノド仏にある軟骨で、カリカリになるまでしっかりと焼くと、コリコリとした独特の食感を楽しめる。だが俺は締めの料理としてサッパリとポン酢で食べたいので、バーベキューで焼いて食べなかった。

ドーナッツは食べやすい大きさに切って熱湯で下茹でする。

次にフライパンに油を引き、みじん切りにしたニンニクを香りが立つまで炒め、下茹でしたドーナッツ・鷹の爪・酒を加える

8割方火が通ってきたら薄切りにしたタマネギを加え、タマネギが透明になってきたらポン酢を加えて水気がなくなるまで炒めて完成だ!

彩のパプリカを加えたりアオネギを振りかけても美味しいが、個人的はポン酢味にはアオネギがいいと思っている。大切なのは自分の好みにあった酸味のポン酢を選ぶ事で、俺に合うのは地元A食品の「Aポン酢」だ!

単品で使ってもいいのだが、俺はこれに他のポン酢を加えてブレンドしていた。まあ料理に合わせて配分や種類が変わるのだが、基本は「Aポン酢」にM社の「ポン酢」を加える。

俺の子供のころは「味ぽん」などは売られておらず、かんきつ果汁に醸造酢を加えたシンプルな味の「ポン酢」しかなく、醤油を加えて自分で味を整えていたものだ。だから「味ぽん」が新商品として売り出されても、俺の家では両方を揃えて家族それぞれが好みの配分に合わせていた。

昔「Aポン酢」が流行したころ、生産が販売に追い付かずなかなか手に入らない事があった。M社の「ポン酢」にしても、時代とともに小さな店では置かれなくなり、スーパーでも置いていない所もあった。だからドローン配送の品揃えに入っているのを見つけた時は本当にうれしかった!

俺は村人との別れのバーベキューを愉しませてもらったが、村人は御神体から個別に指令を受けたようで、満腹になった頃合いに空になった寸胴鍋で料理を作らされていた。子供たちは生まれて2度目の満腹なのだろう、はち切れんばかりに膨らんだお腹を抱えて家に眠りに戻った。

俺もそのタイミングで村を出てトレーラーハウスに戻り、明日の出発に備えたのだが、ここでもセイに命じられたのだろう、白虎がオークの丸焼き作りに勤しんでいた。

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