初老おっさんの異世界漫遊記・どうせ食べるなら美味しいものが喰いたいんだ!

克全

第21話オークのレバーシチュー

「美味い、美味い、美味いぞ!」

一通り料理を作り終えた白虎が、貪(むさぼ)るように白モツの塩胡椒焼きを食べているが、今までは生で食べていたから、塩胡椒して焼くだけでも各段に美味しくなるのだろうか?

いやそうではないな、やはり丁寧(ていねい)に臭味を取る下ごしらえしたのがよかったのだろう。これからも村人たちには、狩った獲物の解体と下ごしらえを御願いしたい。そのためには村人が食べる獲物を狩る事は当然なのだが、村人が解体できるレベルの獲物を狩る必要があるだろう。

白虎が料理したのは、下ごしらえが終わったオークを自作の魔道オーブンで、色々な下味をつけて丸焼きした物と、頭や腕1本脚1本単位でバーベキューコンロで焼いている物だ。自分が食べる白モツは、風魔法を器用に使ってコンロの上に北京鍋を置き、塩胡椒した白モツを炒めながら、さらに器用に風魔法で北京鍋を動かして焦げ付かないようにしている。

食欲と言うのは恐ろしいもので、四聖獣の一角に数えらえるらしい種族の白虎が、本来なら攻撃や防御に使う魔法を料理に使うのだ。

それはそれとして、自分の分はもちろんリュウと白虎の飯を作り置きしておきたい。量的に考えたら白モツの次に多いのはレバーだが、1度に大量に作るとなると、ホーンラビットの時のように北京鍋でいちいち作ってられない。

だが美味しく作るとなると、ちょっとした作業を手抜きしただけで著(いちじる)しく味に差が出て来てしまう。

「セイ、料理を手伝って覚えてくれる? 覚えたら白虎に教えてやって欲しんだ」

「仕方ないな、どうすればいいのだ?」

「タマネギを、さっき渡したサラダ油できつね色のなるまで炒めて欲しいんだ」

俺は自分用のグレーボアのレバーシチューを作りながら、その手順通り真似して欲しいとセイに御願した。セイなら1度覚えたら簡単に再現できるだろうし、白虎に教えることもできるはずだ。

「分かった、これでいいのか?」

セイは風魔法を駆使して、俺と同じようにタマネギの皮をむき細かく切り刻んでいく。そして沢山のコンロと北京鍋を操り、切り刻んだタマネギをサラダ油で炒めてくれた。

「小麦粉をレバーの表面に塗(まぶ)して、タマネギと一緒に表面が軽く焦げるまで焼いてくれ」

「うむ、こうか?」

俺は自分用とセイ用に大量の小麦粉を買い足していたのだが、セイは何も言わなくても半分の小麦粉を自分のアイテムボックスに移してくれた。デュオとはありがたいもので、言わなくても分かり合える所がある。まあ料理の細かいタイミングまでは、今はまだ伝わりにくいようだが、いずれ俺の記憶から自分で探し出してくれるだろう。

いや、俺の記憶にある料理は日本の食材の物だ、モンスターを食材とした場合は料理の時間が変わるかもしれない。火を通す時間はもちろん蒸らす時間や揚げる時間など、1つ1つ美味しく作れる時間を探して行かないとな!

「次にビーフストックで作ったスープを加えて、ウスターソースと塩胡椒で味を整えて煮込めば完成だ。まあ俺が食べる分は、グリンピースやパプリカを食べる直前に加えるけど、リュウや白虎の分はこれで十分だと思う。いや、むしろ野菜は加えない方がいいのかな?」

「そうだな、最初のタマネギはレバーを美味しくする為に不可欠だろうが、グリーンピースやパプリカはリュウと白虎には邪魔だろうな」

「ううううう、食べたい、だがさっき食べ過ぎてもう食べれない!」

「白虎には晩飯で食べさせてあげるよ」

「ううううう、それも食べたいのだが、自分で作ったオークの丸焼きも食べたい!」

「腐るものでもないし、自分のアイテムボックスに入れておけばよいだろう?」

「本当か! もらっていいのだな!」

「駄目だ! 作った料理は我かミノルが管理するのだ、そうでないと食べ物が無くなるまで自由にフラフラと遊び廻るぞ」

「まあでもなんだ、いつもいつも白虎に側にいられるのも落ち着かないのだがな」

「ならば半日・1日2日(いちにいつふつか)と、食事を与えて自由時間を作ればいい。我の記憶では、主従契約を結んだモンスターが罪を犯すと、その罰は主人である人間にも及ぶはずだ。出来れば常に側に置いて、悪さをしないように管理した方がよい」

「マジなの?! 白虎! もう自分で料理作れるだろう、主従契約を解除しろ!」

「嫌だね! 主の側にいたら、これからもっと美味しい料理を沢山食えるはずだ、それが分かっていて主従契約を解除するなどありえないね!」

「ならば殺してくれようか!」

「ううううう、イヤダ、セイ様は殺すつもりでも、主は殺すのが苦手なようだから、ここは我慢のしどころだ! 主は自分が人間を殺した事を認めたくなくて、いつまでも夢だと言い張っているくらいだから、セイ様も主に負担をかけないように、そう簡単に俺を殺せないはずだ!」

「嫌な所を突いて来るな、だがその通りだが、余りに目に余るようなら我は躊躇(ちゅうちょ)せず殺すぞ!」

「分かっていますよ、絶体に人間に被害を与えるような事はしません」

「ミノル、これでいいか?」

「ああ大丈夫だが、俺は本当に10万人もの人間を虐殺(ぎゃくさつ)したのか?」

「ミノルがやったのではない、我がやったのだ」

「だが俺も一緒に呪文を唱えたから、共犯なんだよな」

「我が騙(だま)したのだ、だから気にする事はない」

「だがやった事には変わりない、自殺して罪を償(つぐな)う勇気はないし、自首して死刑になるのも嫌だ」

「10万人を殺したのは確かだが、我の民100万人を助けてくれたし、10万人を蘇(よみがえ)らせてくれたのも紛(まぎ)れもない事実なのだぞ」

「セイ、俺が殺した10万人の人間を蘇らせたいから、復活の呪文を一緒に唱えてくれと言ったらやってくれるか?」

「それは無理だ、そんなことをしたら奴らは又我が境界に攻め込んで来る!」

「そうか、そうだろうな、だったらどうしよう?」

「ならば村人を助けてやったように、困っている人を助けてやったらどうだ? ミノルの世界ではそのような行為を、代償行為(だいしょうこうい)とか罪滅(つみほろ)ぼしとか言うのであろう?」

「そうか、そうだな。10万人を殺した罪滅ぼしに人助けをするとしたら、一生をかけなければいけないだろうな」

「我とデュオになったミノルは事実上不老不死だから、人助けをする時間などいくらでもある。10万人分の人助けが終わってから、好きな事をしてもいいだろうし、好きなことをしながら人助けをしてもいいのではないか?」

「主よ、そんなに深刻に気にする事か? 生物は弱肉強食が当たり前のこと、弱い者は強いものに喰われるのが定めだぞ?」

「確かに生きるために食べるのは仕方がない、だが俺は同じ人間を食べる訳でもないのに殺してしまった、同族殺しは流石に罪になるだろう?」

「人間は何時も平気で同族殺しをしているぞ? 人間が共喰いをしている所は滅多に見ないが、オークやコボルトなどは共喰いも平気でやるぞ? 主は気にしすぎだろう!」

「馬鹿め! そのお陰で助かったのをもう忘れたのか?!」

「あ?! そうだったかな?」

「え~い、この鳥頭(とりあたま)が!」

「分かったよ、10万人の罪滅ぼしなら相当時間がかかるだろうから、焦らずじっくりやっていくよ。とりあえず縁のできた村人たちの支援をもう少しして、終わったら次の村を手助けするようにするよ」

「そうか、それでよかろう」

「ところで白虎、そのためには食材も資金も必要だから、飯代として人間が解体できる獲物を狩って来てもらうか!」

淡路特選新タマネギ:10kg×1980×10=19800
25kg強力粉:7460×50=373000
牛肉ダシダ・韓国ビーフストック 100g:270×1000=270000

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