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初老おっさんの異世界漫遊記・どうせ食べるなら美味しいものが喰いたいんだ!

克全

第20話躾(しつけ)の為の飴と鞭

「リュウ、昨日あれだけ沢山(たくさん)お土産をあげたろ? 毎日毎日飯食わせろと来られても、大喰らいの御前を満足させる量は作れないぞ!」

「少しでいいのだ、少しで! ミノルがどんなものを食べているか気になって気になってな、自分の世界から見ていたのだが、どうしても食べたくなってしまったのだ! 少しの量でいいんだ、同じ物を作ってくれないか?」

空を覆わんばかりの巨体を上空に浮かべ、申し訳なさそうに言い訳する姿は、恐ろしいような可笑(おか)しいような可愛(かわい)らしいような、なんとも表現できないのだが、無下に断れない気持ちになってしまう。

「仕方がないな、俺の食料に出来るグレーボアは少ししかないから、遠出してオークを狩って来てくれ。その間に村に戻って、昨日解体してもらったオークのモツを分けてもらうよ。そうしたら帰ってきたころには、味見くらいの量は作れる。リュウは身体が大きすぎるから、満足させてあげる量はとても作れないよ」

「それは有り難い! だが昨日ジャイアント・レッドベアーを狩った近くにオークの気配があるが、あいつらでは駄目なのか?」

「この近くの村が襲われては困るんだ、だからオークとジャイアント・レッドベアーは争って均衡(きんこう)を保(たも)って貰いたいんだ」

「そうか、まあ余が本気で飛べばどれほど遠方でも大した時間はかからん」

「それと昨日約束していたように、村で解体出来て俺が食べれるような人型以外のモンスターも狩って来てくれよ」

「う~む、そのような雑魚モンスターを狩るのは余の矜持(きょうじ)にかかわるのだが、美味しい物を食べさせてもらった恩もある。それに何よりも、これからも美味しい物を食べさせてもらわなければならん!」

「まあ何でもいんだが、とにかく自分が食べる分と俺が食べる分は狩って来てくれ」

「分かった、では後程(のちほど)な!」

「セイ、白虎、村に行って食材もらってくるから、2人はそのまま魔道オーブンを作っていてくれ」

「はい・・・・・」

「任せておけ、しっかりと躾けおいてやる。だがミノル、必要ならわざわざ村に戻らなくても、我が村の分身体から受け取って渡してやるぞ?」

「リュウは気配を消してくれていたのだろ? だったら村の人たちにちゃんと説明して、一時的にオークのモツを借りる許可を貰わないとな」

「我のデュオであるミノルが必要とするのだ、我の庇護下(ひごか)にある村人たちに許可をもらう必要などないであろう?」

「そうはいかないよ、セイの庇護下の村人だからこそ、命を繋(つな)ぐ大切な食用を無断で借りる訳にはいかないよ。それにリュウの事も説明しておかないと、万が一食意地が勝(まさ)って暴れられたら、不意を突かれた村人が心臓麻痺を起こすかもしれないからな」

「我の分身体が防御結界を張るのだから、リュウの攻撃からであろうと護りきって見せるが、恐怖感だけは人が感じる物だから仕方ないな」



俺は食べかけの朝食をサクサク済ませて、急いで村に向かったのだが、身体が著しく強化されているので、セイ分身体が強化した村壁を楽々飛び越えることが出来た。

やはり村長と村人たちは、ドラゴンが村近くにいた事には気付いていなかった。だが俺とセイへの感謝と信頼感は想像以上に大きかったようで、オーク白モツを借りることに直ぐ応じてくれた。

もちろん代わりに食べるものが必要になるのだが、粗食に耐えてきた彼らは昨日十二分に食べれたので、2・3日食べなくても大丈夫と言う。だがそんな我慢をしてもらう必要などない、正肉はもちろんレバーなどの内臓が山ほどある。

村長や村人たちの強い勧めがあったので、白モツだけでなく全てのモツに正肉まで使わせてもらう事にした。もちろん代わりにジャイアント・レッドベアーを自由に使ってくれと言ったのだが、とんでもないと断られ、リュウが狩って来るオークで十分だと辞退された。



「ずいぶんと立派なものが出来上がったな!」

「なあに、最低でも手持ちのキング・ジャイアント・レッドベアーが丸焼きできないと意味がないからな」

俺の言葉にセイが即座に答えてくれたが、どうやらセイはどこかで人間にジャイアント・レッドベアーを解体させる心算のようだ。そう思ってくれているのは有り難い、食べる気のない生き物を殺す事は許されないと思う。殺した以上は、絶対に美味しく食べてあげないといけないと思うし、それが供養だとも思う。

だがまあなんだ、俺自身は出来れば部位ごとに分けて美味しく食べたい!

「なぁ主(あるじ)よ、ちゃんと仕事したんだから約束通り昼飯からは美味しい物を食べさせてくれよ」

見た目に明らかにやつれている白虎が哀(かな)しそうに話しかけてくる。命懸けで全く知らない物を作らされたのだがら、疲れるのは仕方がないが、ここまで精根尽きた姿は哀(あわ)れだ。

「セイ、そんなに厳しくしたのか? それとも魔力が想像以上に必要だったのか?」

「いやそうではないのだ、元々こいつが大雑把な性格をしていたから、真似(まね)て同じ物を作ると言うのが苦手だったのだ。それに何度も何度もバランスが悪い所を作り直させたから、魔力以上に気が疲れたのだろう」

「この世界にも気疲れがあるんだな、いや、モンスターが気疲れするなど思いもしなかった」

「なぁ主(あるじ)よ、そんなことより早く美味しい物を食べさせてくれよ」

「そうだな、リュウに食べさす前に試し焼きしておく方がいいだろう、だが内臓を抜いたオーク肉に味を染み込ませたいのだが、何かいい方法はないから?」

俺は2人に聞いてみたが、白虎に分かるはずもない。だがセイは原初からの知識があるし、俺の知識や経験を知ることが出来る。俺が記憶の奥底で知っているのに、思いだすことができない方法を、俺に教え思い出させることさえ出来るのだ。

「そうだな、風魔法を応用して無数の針風をオークに放ち、味が染み込み易くしてから塩胡椒などの下味をつければよかろう、白虎!」

「はい!」

「最初は手本を見せてやるから、御前も覚えてやれる用になれ、そうすれば自分で美味しい料理を作ることが出来るぞ」

「本当ですかセイ様? 主(あるじ)?」

セイには様付で、俺には主と言いながら様付していない。いや、別に様をつけて欲しい訳では無いのだが、主と呼ぶニュアンスに尊敬が感じられない。尊敬まではいらないが、もう少し敬意くらいは払ってくれないだろうか、まがりなりにも主従契約をしているんだから。

「なあ主、おい聞いてるのか主?」

「もっと敬意を払わんか!」

「はぃ! ごめんなさいセイ様!、主様」

「いやいいよ、本当だよ、塩胡椒やニンニク醤油を分けてあげるから、それを使えば自分で何時でも美味しい料理が食べれるよ」

「ダメだミノル! こいつは御調子者だから、タレを前もって渡したら無くなるまで自由に出歩く。そしてタレが無くなったら戻って来て、タレだけおねだりするだろう。その時その時、必要な量だけ渡して作らせるのだ」

「なるほど、確かに白虎の性格ならそうだろうな。悪いが躾はセイに任せるから、しっかり仕込んでくれ」

「任せろ、それでミノル、使わないバーベキューコンロとフライヤーを全部出してくれ、リュウに与える料理を白虎とに作らせる」

「そんなぁ、セイさまぁ~」

「味見はさせてやるし、リュウが自分の世界に戻ったら、後は作りたい放題食べたい放題だぞ?」

「直ぐにやらせていただきます、セイ様!」

「ミノル、だから調味料を渡してくれ」

「分かった、手持ちの調味料の半分をセイのアイテムボックスに移しておく」

俺とセイはデュオだから、2人の間のことなら、大概の事は心で思うだけで実行することが出来る。セイがキリキリと白虎を働かせている間に、俺は食べたかった物を料理することにした。

1台残しておいたバーベキューコンロを使い、大好きなタンとタンシタをだけを腹一杯食べることにした。この世界のグレーボアの味は分からないが、日本で食べたトンタンは牛に比べると3 分の1程度の大きさでやや硬く脂肪も少ないが、食感は牛タンと変わらずとても美味しいのだ。

冷凍皮つき10kg単位なら恐ろしく安く売っていたので、試しに買って1人で食べたことがあるのだ。最初はどう処理していいか分からず臭過ぎて困ったのだが、牛乳や焼酎を使ったり、塩漬けハム化やスモークトンタンハムやアヒージョにする事で、最後には美味しく食べれるようになった。

1人で10kgを食べるのだから、本当に色々試すことが出来た。

その後定期的に購入していたのだが、いつの間にかR社のネット販売から無くなってしまっていた。確かに量も多ければ、美味しく食べるための労力もハンパなかったから、評判はよく無かったのかもしれないし、売れる量も少なかったのかもしれない。

美味い!

独特の臭みはあるが、俺にはそれほど嫌なものではない。胡麻油と葱のタレに漬け込んで焼いても美味しいだろうし、オリーブオイルを取り寄せてアヒージョにして食べても美味しだろう。だが1番挑戦したいのは、1カ月間何度も何度も調味液を交換して塩漬けにしたトンタンを、ヒッコリーとサクラの2種類に分けて燻製したスモークトンタンだ!

ブナ・クルミ(オニグルミ)なども合うとは思うのだが、個人的な好みの問題がある。だがまあなんだ、以前やった豚とグレーボアは同じじゃないから、色々と試行錯誤(しこうさくご)しながら1番合う物を探し出すしかない。

それと冷燻製・温燻製・熱燻製の内、どれが1番グレーボアに合うのかを探したい!

部位によっても違うのだろうが、生ハムやパンチェッタ(生ベーコン)も作ってみたいのだ!

だが色々と試作するには5頭では少なすぎる、もっと多くの同種の食材が欲しい。同じ料理や食材を2食続けて食べたくないと言う人もいるが、俺は好きな物なら1週間3食続けて食べても平気な人間だ。リュウや白虎に、グレーボア指定で狩りをしてきてもらう事は可能なのだろうか?

可能だとしたら、少々手間でも手作りで料理を作ってやってもいい。

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