「婚約破棄」「ざまあ」短編集5巻

克全

第4話

「よお、俺は斬馬刀を使う前衛戦士のライデンだ」

「僕は後衛の弓使いヴァイオレット。
でも剣術も武闘術も心得ているから、乱戦になっても大丈夫」

「ほう、凄いな。
君のような女性に出会ったのは生まれて初めてだ。
ひとめ惚れした。
結婚してくれ」

ジリオン王国に逃げてきてから一カ月、私は祖父母との生活のために、冒険者になってダンジョンにもぐっています。
パーティーは組まず、ソロでダンジョンに潜っています。
ですが何の危険も問題もありません。
のんびりと、生活費を稼げる程度に潜るのです

いざとなれば魔術を使いますが、王族でも自国内でしか魔法を使えないのがこの世界の常識なので、極力魔法は使わないようにしています。
万が一魔法を使う事になっても誰にも見られないように、ソロでダンジョンに潜っていたのですが、非常事態が起こってしまいました。
王家の強制依頼が全冒険者に発せられたのです。

そこで強制的に組まされたパーティーメンバーに、ライデンがいました。
僕が人生で初めて魅せられた男性です。
輝くような金色の髪と深く静謐な湖のような蒼い瞳に、熟した果実のような真紅の唇に高き山に降り積もるような純白に歯が光っていました。
私もひとめ惚れでした。

ライデン様は容姿だけの見掛け倒しの男性ではありません。
十人がかりでも持ち上げられないような、巨大で重い残馬刀を背負い、切れ味鋭い長剣を腰に佩く、百戦錬磨の冒険者戦士です。
ダンジョンで遭遇する強大な魔獣を、圧倒的な質量を誇る斬馬刀で楽々と叩き伏せ、単なる肉片に変えてしまわれるのです。

一緒にダンジョン深くに潜るほど、互いの尊敬と愛情も深くなりました。
相思相愛とは私達の事だと、心から信じる事ができます。
見た目の容姿にひとめ惚れしたのかもしれません。
野生の動物のように、互いのフェロモンが刺激しあったのかもしれません。

ですか今の私達は、それだけではありません。
時に肩を並べ、時に背中を任せ、命を預けて戦った戦友なのです。
単に同じ仕事をしただけで「戦友」と軽々しく使う、頭の軽い連中が使う、安っぽい言葉の「戦友」ではないのです。
相手の裏切りや臆病や失敗で、簡単に自分が死ぬかもしれない戦場で、命を預けて戦ったことのある、本当の「戦友」なのです。

私達は王家の強制依頼を達成しました。
最下層にまで辿り着き、ジリオン王国の守護神が契約で毎年回収する事を条件にした、神薬の材料となる花を回収する事ができました。
その頃には、十二人いたパーティーメンバーは僕とライデンしかいませんでした。
僕とライデンは王城に招待され、褒美を受ける事になりました。

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