「婚約破棄」「ざまあ」短編集5巻

克全

第18話

「では行ってまいります」

「本当に行くの?
それでは王命に背くことになったオリビアが処分されてしまうわ」

「大丈夫ですよ。
色々と策は講じています。
ただダーシィを殺さない事には、安心して暮らせません」

王命に背き、ダーシィを殺しに行く私に、義母上は心配してくれます。
義父上は複雑な表情で黙っています。
この決断をした私の苦悩を理解してくださっています。
義父上も同じ苦悩を持っておられるのでしょう。

「オンギャア、オンギャア、オンギャア、オンギャア」

「義母上、リドワーンが泣いていますよ。
抱いてやってください」

「まあ、まあ、まあ、まあ。
なにが気に喰わないの、リドワーン?
お姉様が行くのが嫌なの?
ねえ、やっぱり……
オリビア?
どこに行ったのオリビア!
まだ話があるのよ!」

「もう行ったよ。
オリビアの決意と優しさを無にしてはいけないよ。
ここは黙って行かせてやりなさい」

私は義母上の話を最後まで聞かず、王太子とダーシィが閉じ込められている塔に向かいました。
ロクバラ家が処罰されてから三年、私達は準備をしつつ待ち続けました。
義父上と義母上の間に待望の子供が生まれる事を。
メリッサご典医の献身的な治療で、お二人が治る事が分かったのです。

二年はお二人の身体から毒が抜けるのを待ちました。
私に結婚しろと迫るお爺様を宥めつつ、神に乞い願い待ち続けました。
そして待望の男子が生まれたのです。
跡継ぎが生まれたのです。
心配していた残留毒薬の影響もありませんでした。

次子を生むのも大丈夫と、メリッサご典医に保証していただいたので、三年準備していたダーシィ殺しを決行することにしました。
王太子とダーシィが閉じ込められている塔の警備兵も、私達が懐柔しています。
王太子も何時でも殺せますが、さすがにこれは止めておきました。
同じ王命に背くといっても、我が家の罪人ダーシィを殺すのと、王太子を弑逆するのでは全く違います。

王太子はブクブクに太り、とても醜かったです。
私が部屋に入ると、恐怖で失禁していました。
ですが今回は殺さないので、無視です。
ダーシィは私が殺せないと思ったのでしょう。
単に脅すためだけに来たと思い、傲岸不遜な態度でいました。
ですが私は殺しました。
ソムベルのように苦しめたかったですが、時間がないので、心臓を一突きして首を刎ねて、確実に早く殺しました。

お爺様は直ぐに王に報告しました。
私が勝手に恨みを晴らすためだったと報告されました。
そして私の首を差し出し、王命に背いた責任をとられました。
ですが私は死んでいません。
三年の間に私に似た死体を改造して、偽首を作っていたのです。
モンタリント女侯爵は処刑されてもうこの世にはいません。
さすがにこの国に残る事はできませんが、他国で自由に暮らしていけます。
私は自由を得たのです!


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