「婚約破棄」「ざまあ」短編集5巻

克全

第6話

「アイラは塔に幽閉する。
世話は家族でする。
どうしても手が離せない時は、エミリーかソフィアにやらせる。
その他の者が塔に近づいたら、裏切者として斬首する。
分かったな!」

「「「「「はい」」」」」

人間の肉親への情は、難しいモノだと思い知りました。
自分の血を残したいという想いは、人を縛り付け愚かにする。
そう思い知りました。
これは業としか表現できないですね。

あれほど国王にオリバーの処罰を願っていたお爺様が、アイラを処刑されなかったのです。
オリバー同様に、塔に閉じ込められたのです。
お爺様の気持ちは想像できます。
私が不慮の死をとげた時の事を考えておられるのです。

お爺様は伯父様とセオドアしか子宝に恵まれませんでした。
セオドアを問答無用で処刑されたお爺様も、アイラの処刑は躊躇ったのです。
伯父様と伯母様は、子宝に恵まれませんでした。
それに伯母様は病弱です。
伯父様はお爺様になにを言われても側室も妾も置かれません。

私が死んでしまったら、モンタギュー公爵家はお爺様の弟である大叔父様達か、従叔父の誰かが継ぐことになります。
弟達と後継者争いをしたお爺様には、それは耐えられない事なのでしょう。
でも、だからといって、アイラを生かすのは悪手だと思います。

でも同時に、そのような肉親の情、業があったからこそ、私は救われたのです。
そうでなかったら、また殺されていました。
それは間違いのない事実です。
だから、お爺様を諫める言葉を口にする事はできませんでした。
自分で手を打つしかありません。

問題はアイラが幽閉される塔です。
その塔はモンタギュー公爵家が預かる王都の支城にあります。
王都の支城とはいっても、王都の外ではなく、王都の中にあります。
王都を護る大防壁の四隅が、四つの支城になっているのです。
その四つの支城は、第一から第四までの騎士団が預かっています。

モンタギュー公爵家は、代々第一騎士団長を務めています。
当主や隠居が死傷してしまった上に、跡継ぎが幼少のような、非常事態でない限り、常に第一騎士団長の役目を務めているのです。
今はお爺様が大将軍の役目を務め、伯父様が第一騎士団長の役目を務めておられますから、支城の警備は基本騎士団員がやるのです。

騎士団員の中に、オリバーやダーシィにおもねる者がいるかもしれないのです。
貴族士族の中には、愚者のオリバーを操り、立身出世、栄達を手に入れようとする者がいるかもしれません。
アイラを逃がす者が現れる前に、私の手で、アイラを密かに殺してしまいましょうか?



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