「婚約破棄」「ざまあ」短編集5巻

克全

第4話

「どうだ!
父上も許さないと言っておられるぞ!
これでお前も終わりだ、モンタギュー公爵!」

「愚か者!
許さないのはお前の事だ!
この愚か者め!
近衛騎士、この愚者を塔に幽閉しろ」

ああ、国王陛下が決断されました。
これで王国も安泰です。
国王陛下も老齢です。
このまま何かあったら、王国は四分五裂してしまいます。
戦国乱世に逆戻りしてしまいます。
いえ、隣国に攻め込まれ、民は奴隷とされてしまったでしょう。

「モンタギュー公爵、許してくれ。
この通りだ」

国王陛下が頭を下げられます。
お爺様の方が正しいと、誰の目にも明らかにしてくださいました。
追い込まれたセオドアは、死者のような顔色をしています。
ですがダーシィは、未だに蛇のような目でお爺様を睨んでいます。
いえ、お爺様だけでなく、国王陛下まで睨んでいます。

「分かりました。
国王陛下に頭を下げていただいたら、なかったことにするしかありません」

え?
どういうことなのでしょうか?
なかった事という意味が分かりません。
でも、なにか、とんでもないことが起こっているのは分かります。
ジェンソン伯父様の顔色が悪いのですから。

「すまぬな。
この国の長子相続は、戦国乱世を統一された初代国王が定められた国法だ。
余であろうと変える事はできない。
どれほど愚者であろうと、長子を後継者にせなばならん」

「その愚者の長子自身が、長子相続を否定しましたがね」

ああ、なんという事でしょう。
これほどの不始末をしでかしたオリバーを、廃嫡にすることができないのです。
国王が亡くなるような事があれば、この国は必ず乱れます。
取り返しのつかないような大混乱が起こります。
それが分かっていて、誰も何もできないのです。
国王が全ての罪を背負って断行すればいいモノを、やらないというのです。

「すまぬな。
愚かな親よ。
あんな愚者でも我が子だ。
殺すことができん。
余が死ぬまで幽閉する事しかできん。
余が死んで奴が解放されたら、好きにしてくれ。
それまでは見逃してやってくれ」

これは完全な責任放棄です。
国王がこれほど愚かだとは思ってもいませんでした。
王太子が愚者なのは、この国王の血を継いでいるからかもしれません。
ですが、お爺様は言質も取られました。
国王死後の自由な行動の保証です。

「分かりました。
動くのはそれからにさしていただきましょう。
ですが、我が一族の事は私の好きにさせていただきますぞ。
王太子を誑かし、王家の政道を誤らせようとした罪は許せません。
一族当主の権限で、セオドア、ダーシィ、アイラの処刑を行います」

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