「婚約破棄」「ざまあ」短編集5巻

克全

第36話

「女王陛下。
オールトン侯爵の不正が明らかになりました。
討伐の許可を願います」

「許可します。
エヴァ侯爵。
討伐軍の指揮を命じます」

「承りました。
マイロードケーニギン」

全ては、フェルドナンドの思惑通りです。
電光石火の速さでコーンウォリス城を完膚なきまで破壊しました。
王城王宮以外は全く損害のない王都を占領し、貴族士族を臣従させました。
中には忠誠心があり、抵抗する者もいましたが、それは極少数です。
みな家名と血統、領地領民を護ることを優先します。
中には戦うと主張して、家臣に押し込められたり殺されたりする当主もいたそうですが、それは聞かなかったことになっています。

近隣各国に侵攻占領併合の使者を送り、介入を阻止します。
どこも異議を申し立ててきませんでした。
先に手を出したのはコーンウォリス王国でしたし、なによりたった一日で王城王宮を破壊し、王族を皆殺しにした我が国を恐れています。
人手の問題で占領併合は無理でも、いつでも王城王宮を破壊し、王族を皆殺しにできるのだと理解したようです。
いえ、理解できるようにフェルドナンドが誘導したのでしょう。

そして返す刀で国内貴族の締め上げです。
戦場で卑怯残虐な行いをした貴族をその場で処刑し、一族一門を追放して領地を没収する一方、陪臣士族を王家直属の騎士団徒士団に召し抱えました。
追放刑にした一族一門も、試験を受けて合格したら召し抱えました。
お陰で領地をあげて反乱したり籠城したりする事は、一つもありませんでした。

それと地方に残っていた貴族士族が、私の眼がコーンウォリス王国に向かっていると思い、不正を行ったのです。
特に何の罰も制限も与えずに召し抱えた、旧モンザ王国の貴族士族です。
彼らはバカなのです。
少し調べれば、私が不正を許さないのは分かるはずです。
不正を行った者を、厳罰に処するのも分かるはずです。
不可触民を使って情報収集することも、分かるはずなんです。

まして今はフェルドナンドがいます。
苛烈な罰が与えられる事くらい理解しないと、貴族家の当主は務まりません。
私だって、カラッテ王国の公爵令嬢であった時から、情報収集に努めていました。
結局彼らには当主を、当主を務める資格も才能もなかったのです。

私は本当の意味で国の支配権を確立しました。
フェルドナンドの魔法を使った収穫量生産量を別にすれば、国力の一割程度しか王家の直轄領はありませんでした。
譜代の貴族士族を味方に計算しても、二割程度です。
それが今では、旧カラッテ王国領で五割の直轄領。
旧モンザ王国領で六割に達しています。
旧コーンウォリス王国領では一割ですが、これも直ぐに変わるでしょう。
これにフェルドナンドの魔法生産量を加えれば、サンアリステラ皇室をしのぐと思います。


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