「婚約破棄」「ざまあ」短編集5巻

克全

第18話

少し残念でしたが、私の婿になりたいという事ではありませんでした。
一代でいいから、従属爵位が欲しいという事でした。
ですが困りました。
我が家の従属爵位は、エヴァに貸し与えているグート男爵位しかないのです。
弱みのある王家と交渉すれば手に入るとは思いますが、せっかくの弱みですから、最も有効的に使いたいのですが、どうしたものでしょうか?

「恐れながら、時間が経てば罪の意識も弱まります。
今のうちに使われるべきだと思います」

「事情を知っているのですか?」

「はい、学院には色々な情報が入りますので」

大陸連合魔法学院、油断なりませんね。
いったいどれほどの情報網を持っているのでしょう?
情報は全てを制します。
しかも学院は魔法という実戦闘力も大陸随一です。
事が起これば学院が大陸を制覇することも不可能ではありません。
もっとも、皇国に勝てればの話です。

「直接交渉を任せてもいいですか?」

私はフェルドナンドを試すことにしました。
彼の知識と魔力には思い知らされましたが、実際の行動力。
特に対人交渉力は、フェルドナンドの力を利用したい私には有効でも、何の利害も絡まないカラッテ王家に有効かどうかわかりません。
ああ、念を押しておかないといけませんね。

「最初に言っておきますが、カラッテ王家には何の知識も技術も伝えないように。
カラッテ王家の利益になる事は一切禁止です。
カラッテ王家から我が家の利益になるモノを奪ってくるだけです。
従属爵位以外にも奪えるものは奪ってきなさい。
それでもやれますか?」

「お任せください。
ただし、脅迫するのは構いませんか?
私やファンケン公爵家の力を使って、カラッテ王家を脅かしたいのです」

「構いません。
戦争にならない程度なら、フェルドナンド殿に火消しができる程度なら、なにをどれくらい使うかも任せます」

「それでしたら大丈夫です。
奪えるだけ奪ってまいりましょう」

フェルドナンドは対人交渉能力も突出していました。
私は最高でも伯爵位を一つ手に入れてくる程度だと思っていました。
子爵位を手に入れられれば御の字だと思っていました。
それが、伯爵位二つと子爵位二つを手に入れてきたのです。
信じれない対人交渉能力です。

「さすがですね、フェルドナンド。
これほどの成果には褒美を与えないといけませんね」

「ありがとうございます。
でしたら伯爵位を一代ではなく世襲可能にしてください」

「分かりました。
四つも従属爵位を手に入れてくれたのです。
そのうちの一つを与えるのは当然です」

やれやれ、このために侯爵一つではなく伯爵を含めた四つを手に入れたのですね。
エヴァに与える爵位を超える事がないように配慮したのでしょう。



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