「婚約破棄」「ざまあ」短編集5巻

克全

第12話

「ご報告させていただきます。
本当はこのような穢れた事をお耳に入れたくはなのですが、マイロードのお耳に入れず勝手に握りつぶす訳にもいかず、しかたなくお伝えさせて頂きます」

「分かりました。
よい判断です。
これからも同様にしてください」

エヴァがわずかに嫌そうな顔をして、私に申し訳なさが伝わるようにしています。
エヴァなら眉ひとつ動かさずに報告できるのを、私に心情を伝えたいのでしょう。
これでなかなか可愛い所があるのです。
それに、私の呼び方を変えてきました。
ファンケン公爵閣下と呼んでいたのを、マイロードと呼ぶようになりました。
しかも他の家臣には絶対にマイロードと呼ばせないのです。
叔母上の独占欲でしょうか?
本当にかわいい人です。

「はい、そうさせて頂きます。
ジャンバッティスタ辺境伯家が縁談を持ってきました。
次男ジェイコブを婿入りさせたいと言う事です」

エヴァが嫌そうな顔をしていた理由がこれで分かりました。
なるほど、私の縁談話ならエヴァが嫌がるはずです。
それに、まだ両親の葬儀も終わっていません。
葬儀の案内を連絡しただけで、縁談話は早すぎます。
水面下の交渉を家臣同士が行うならともかく、私に直接アピールするのは早過ぎますし、礼儀知らず過ぎます。

「確認しますが、それは家臣同士の下交渉ですか?
それとも私に直接伝えろと言う要求だったのですか?」

「ギリギリの攻め方をしてきました。
私は従属爵位を貸し与えられていますが、家臣です。
ジャンバッティスタ辺境伯は私をファンケン公爵の家臣として接して、どこよりも早く縁談話を持ち込みました。
礼儀知らずと断ずることは難しいです」

これは、困りましたね。
エヴァが私の叔母だということは、他家は知らないはずですが、我が家の家臣に裏切り者がいたり、密偵が入り込んでいたら、容易に手に入れられる情報です。
根本的な所を変えるべきかもしれません。

それにジャンバッティスタ辺境伯が禁じ手を使った事で、他家も同じ手を使って縁談話を持ち込むでしょう。
ファンケン公爵家に婿入りできるのは、王族から公爵、侯爵、辺境伯がギリギリですから、ジャンバッティスタ辺境伯は他家の申し込み前に確約をとりたいと思ったのでしょう。

「私は舐められているのですか?
アキーレヌ王太子との婚約が解消になった事、両親とエレノアが急死した事で、舐められてしまっているのですか?」

「気になさることはありません。
力が弱く情報収集能力が低い家と、愚か者が当主を務めている家が、マイロードのお力を見誤って行動するだけでございます。
多くの家は震えあがる事になります。
あまりに酷い家には懲罰を加えておきます」

こわい怖い。
エヴァの懲罰は怖すぎます。

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