「婚約破棄」「ざまあ」短編集5巻

克全

第10話

「ご報告させていただきます。
王家はクラリス様のファンケン公爵就任を認めてくれました。
認証式は、前ファンケン公爵夫婦の葬儀が終わった後に、王宮内の青の間で行うとのことでございます」

眼が覚めると、多くの報告が溜まっていました。
本来なら私を起こしてでも報告しなければいけない重大事項も、エヴァの判断で後回しにされています。

普通ならありえない事ですが、エヴァは別格なのです。
表向きには認められていませんが、エヴァは私の叔母なのです。
先代ファンケン公爵が、晩年に不可触民の女性との間に作った子供です。
普通なら内々に殺されている所です。

ですが先代が遺言してしまったのです。
エヴァを絶対に殺してはいけないと。
エヴァを家臣として鍛え、不可触民をファンケン公爵家の密偵に利用するための旗頭としろと、大変な遺言を残したのです。

一族一門で意見が分かれました。
家臣の間でも意見が分かれました。
一族一門では、先代が年齢による衰えで常軌を逸した言動をしただけという意見が大勢を占め、エヴァを殺すという流れでした。
家臣間では、長年名君としてファンケン公爵家を治めてきた先代の遺命として、尊重すべきという流れでした。
結局長じるまで様子を見ることになったのです。

エヴァは差別に満ちた厳しい一族一門の視線に打ち勝ちました。
無茶な条件を次々と達成して、生を勝ち取ったのです。
不可触民を利用する術も卓越していました。
わずかな代償で、不可触民に最大の働きをさせるのです。
不可触民から得られるファンケン公爵家の利益は莫大で、父上も無視できないようになったのです。

王家との交渉や有力貴族との交渉で不利になった時も、エヴァの集めた情報で逆転したことが数多くありました。
ついに家臣たちの推薦奏上を無視できなくなった父上は、エヴァに男爵の従属爵位を貸与して、社交界に同席させるようになりました。

ファンケン公爵家が、謀略で先手をとれるようになったのはそれからです。
今までは、不利になってからエヴァの力で何とか対等に持っていったり、損を減らしていたモノを、有利な条件から更に強気の交渉ができるようになったのです。
そんなエヴァが、私の休息の方が重大事項よりも大切と指示してくれたからこそ、私はゆっくりと休めたのです。
ですが目覚めてからの行動が大切です。
エヴァを失望させるわけにはいきません!

「分かりました。
まずは葬儀の準備を優先してください。
ただ王家の動きが心配です。
何か謀略を仕掛ける可能性があります。
集められるだけの情報を集めてください。
エヴァ、優先順位は貴女の判断に任せます。
報告を続けてください」

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