「婚約破棄」「ざまあ」短編集5巻

克全

第7話

「マリーア嬢!
マリーア公爵令嬢!
王太子殿下がお探しです!
我らは王太子殿下の使いです!
どうか出てきてください!
王太子殿下は詫びたいと申されておられます!
ルスィア嬢との事は一時の気の迷いで、本心はマリーア嬢の事を心から愛しておられるのです!
どうか、どうか、どうか出てきてください!」

しつこい!
しつこすぎる!
こんな山奥まで追手が探しに来るなんて、一体何人の追手を出しているんですか。
そんな人手があるのなら、国の治安をよくしなさい。
家を出て、色々な領地を見て、思い知りました。
この国は病んでいると。

聖女とは言え、私一人にできる事など限られています。
多少の奇跡で命を救えるだけです。
根本的な食糧不足は、王家の指導の下、全貴族士族が取り組まなければ、どうしようもない問題です。
私が父上に頼んで、フェルナンデス公爵家だけが動いても、どうこうできる問題ではないのです。

「マリーア嬢、急いで移動した方がいいぜ。
あいつら本気だ。
本気でマリーア嬢を捕まえるつもりだ。
恐らく莫大な賞金がかかっているぜ」

「笑えない冗談はやめて!
だけど、この前インキタトゥスが言っていたよね?
高い山は空気が薄くなるからサラには危険だと。
逃げるなんて無理でしょ」

「その辺はブケパロスとティシュトリヤに任せればいいさ。
王家の軟弱な騎士や徒士なんか蹴り殺してくれるよ」

インキタトゥスは簡単に言ってくれるますが、王家の騎士や徒士を殺したりしたら、家に迷惑をかけてしまいます。
馬が勝手にやったと言い分けしても通じません。
そんな事はインキタトゥスも分かっているはずです。
本心はなんなのでしょうか?

「笑えない冗談は止めてと言ったでしょ!
これ以上つまらない事を言ったら殺すわよ!
本心を話しなさい!」

「仕方ないな。
俺たちは王家の奴らをまいて逃げるから、マリーア嬢はサラを連れて逃げな。
ティシュトリヤに乗り換えれば大丈夫だ。
絶対に見つかる事はない」

ヒィヒィヒィィィィィン!

ティシュトリヤが近づいて来て自信満々にいななきます!
そんな大きないななきをあげたら、私を探している王家の者たちに聞こえてしまうではありませんか!
ですがそれだけ自身がると言う事ですね。
いいでしょう!
信じて任せましょう。
ですが失敗したらただではすませませんよ、インキタトゥス!

ですが、インキタトゥスの言葉は本当でした。
ティシュトリヤの自信も当然の事でした。
こんな事ができるのなら、自信満々の態度をとっても当然です。



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