「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集2

克全

第21話

「……まだ子供を作られないのですか?」

「もう少し検証を重ねないといけないからね。
事は貞操にかかわる名誉の問題だ。
失敗しましたではすまされないよ」

私の質問にアルフレット様が真摯に答えてくださいます。
私としても、度胸の必要な質問でした。
私が質問することで、アルフレット様の背中を押してしまうかもしれません。
そんな事になれば、私の心は張り裂けてしまったかもしれません。
嫉妬に狂って、取り返しのつかない事をしでかしてしまったかもしれません。

ですが、ありがたいことに、アルフレット様は否定してくださいました。
この事に関しては、アスキス家とアルフレット様の考えが全く違いました。
アルフレット様は、古代魔法時代の貞操観念なのです。
男女の情愛に関しては、とても厳しい倫理観をお持ちです。
夫婦の魔力の高さによって、子供の魔力が決まるので、そういう感覚になっていたのだと思います。

特に問題だったのは、女性の方の魔力により影響されるという事です。
つまりアルフレット様とアスキス家の女性との間に生まれる子供は、魔力のない女性の影響が強いということです。
これはとても大きな問題でしたが、魔鼠の実験では特に問題はなかったのです。

「魔鼠の魔力はとても少ない。
だから父親の魔力が減退することなく、子供に伝わった可能性がある。
魔力の強い魔獣の父親でも、魔鼠程度の魔力しか伝わらない可能性がある。
もっと魔力が強い魔獣でも、子供に伝わるかどうか、確認する必要があるんだよ」

アルフレット様と私は、不安を解消するために、実験を繰り返しました。
魔鼠から魔兎、魔兎から魔鼬、魔鼬から魔狗と実験しました。
残念ですが、魔鼬あたりから、父親の魔力が全て伝わらなくなりました。
その時は、どうしようもない不安がありました。
魔狗であろうと、減退した魔鼬の魔力しか伝わらない恐れがあったからです。

ですが、ありがたい事に、その心配は直ぐに払拭されました。
確かに減退魔鼬程度の魔力しか伝わっていない子魔狗も生まれましたが、多くは一定割合に魔力を持つ子魔狗でした。
これはとても希望を持てる結果でした。

アルフレット様と私は、更に実験を繰り返しました。
魔狗から魔豹、魔豹から魔虎、魔虎から魔猪、魔猪から魔鹿と実験を進めました。
そこで得られた情報は、最悪の場合でも、父親となる魔力持ちの一割の魔力が伝わり、最高でも三割の魔力が伝わるというモノでした。
古代魔法時代では、母親の魔力の一割から十割だったのを考えれば、魔力器官すらない女性が相手でも、魔族の王族であるアルフレット様の一割から三割の魔力が伝わるのなら上出来です。

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