「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集2

克全

第15話

「じゃあまずは魔力が必要ない事からやろうか」

「はい、アルフレット様」

「「「「「はい、アルフレット様」」」」」

私がアルフレット様を養い親だと紹介したからでしょうか?
それとも魔族の王族だと紹介したからでしょうか?
アスキス家の人達は、アルフレット様に絶対服従状態です。
アルフレット様は苦笑いされていましたが、特に止めさせようとされません。
この状態の方が、これからの計画には有利と考えられたのかもしれません。

「ではまずこの植物を植えてもらう。
この植物は陽光がなくても育つ。
でも水と肥料は必要だから、植える場所は便所にしてくれ」

「「「「「はい、アルフレット様」」」」」

私が色々迷い困っていた洞窟の生活向上ですが、アルフレット様は地下生活にための備えをされていました。
動物の糞尿を肥料に育ち光る植物です。
しかも天井や床、側面に枝を伸ばし、自然に洞窟中に広がるのです。

なんとも都合のいい植物ですが、魔族の隠遁生活のために、色々な植物を掛け合わせ、創り出されたそうです。
人間からは、不老不死と誤解されるほどの長命な魔族の王族だからこそ、創り出せた植物といえません。

「「「「「うわああああ」」」」」

アスキス家の人達が一斉に驚きの声をあげます。
私の時も驚いていましたが、アルフレット様の魔力と私の魔力には雲泥の差がありますから、驚いて当然です。
単なる成長促進の魔法ですが、洞窟の要所に光樹が一瞬で広がったのですから、驚くなという方が無理です。

アルフレット様と私が安堵したのは、アルフレット様が魔術を使えたことです。
一度なくなった魔力がこの世界に戻って来ていた事。
その魔力をアルフレット様が昔のように使えた事。
これはとても大きなことでした。
問題は、眠りにつかず代を重ねた魔族、アスキス家の人達には魔力がない事です。

「次は食料をになる果実を実らせる植物を植えてもらうよ」

「「「「「はい、アルフレット様」」」」」

ですがアルフレット様は、そのような問題を表情に現しません。
アスキス家の人達に伝える事もありません。
不安や心配をされていないわけではないのです。
不安や心配をアスキス家の人達にまで与える必要はないと考えておられるのです。
全てはご自分でやれることをやりつくし、それ後で話せばいいと考えておられるのです。

それよりも先に、魔力をなくした今の魔族が暮らしていける状態にする。
それが一番優先すべきだと考えられ、光樹の光だけでの成長して実をつける、桃・栗・柿・林檎・杏子・蜜柑・葡萄・梨・朱火等の植物を創り出しておられたのです。

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