「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集2

克全

第9話

「次はこの魔術書を使ってもらいます。
オリビアさん、お願いします」

「はい!」

アスキス家の祖母オリビアさんさんが張り切っています。
夫のジョージさんが魔術を発現できたので、気合が入っているのでしょう。
眼がキラキラしています。
さっきまで餓死しかけていたとは思えません。

さて今度の魔術書ですが、初級下の光魔法で。
各地で色々な呼び名で使われていました。
一般的にはライトと呼ばれる魔術です。
戦いでも意表を突くために使う事もありますが、一般的にはダンジョンで使ったり、夜の明かりに使う魔術です。
これからも洞窟で暮らすなら、必要な魔法です。

「うわああああ!」

よほど驚いたのでしょう。
オリビアさんが女性とは思えない声をあげています。
意表を突かれたのでしょう。

「眩しい!」
「光だ!」
「明かりだ!」

子供たちが騒いでいます。
ずっと暗い洞窟で暮らしていたので、光に慣れていないのでしょう。
ちょっとやり過ぎました。
急いで風魔法を発現させて、洞窟の奥に移動させ、眩しさを調節しました。

「ごめんなさい。
ちょっと眩し過ぎましたね。
眼が慣れるまでは、遠くに発現させてください。
次はハリーさんにお願いしますね」

「はい、楽しみです!」

リリーの父親で、一家の大黒柱、ハリーさんの順番です。
ハリーさんには、生物が生きていく上で絶対必要なモノ、水を創ってもらいます。
創るとはいっても、初級下の水魔法ですから、量はほんの少しです。
創り方も、空気中の水分や土中の水分を集めるだけです。
だがら浄化された水ではありません。
浄化された水を空気中の組成から創り出すのは、とても難しく大量の魔力が必要になります。
魔晶石に頼る現状では、魔力がもったいなくて使えません。

「うわ!
凄い!
本当に水が呼び出された!」

「よく聞いておいてください。
この水は近くの水を集めてきただけです。
飲み水がまだある状態で使うと、水を移動させただけになります。
飲み水がなくなるか、貯水壺から離れた場所で使ってください。
それと汚い水の可能性もあります。
必ず煮沸してから飲んでください」

「「「「「はい」」」」」

ハリーさんだけでなく、家族全員が勢いよく返事してくれました。
まるで教師になった気分です。

「カチュア様。
では今までと同じように、洞窟の奥の雫を集めて飲むのと同じですか?」

リリーが質問してきます。
この洞窟に泉はありません。
でも天井から水滴が落ちてくる場所があります。
今迄は、外に出て清水を汲めない時に、その水滴、雫を集めて飲料水にしていたようですが、衛生上危険があります。

「そうですね。
でも水滴を集めたモノを遠くに移動させてからこの魔術書をつかえば、地に落ちて浸み込んだ水を集めることができます。
今迄のように喉の渇きを我慢しなくても大丈夫になります。
ですが奇麗な清水ではありません。
ちゃんと煮沸してから飲んでくださいね」

「「「「「「はい」」」」」

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