「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集2

克全

第4話

「では大魔王様。
私の家族や家臣領民を殺さず。
家族や家臣領民が暮らす世界も大陸も壊さず。
私が恨んでいる者だけを殺すのに、大魔王様の偉大なお力を世界に示す方法を教えていただけませんか?
私のような人間では、大魔王様の偉大なお力を推察する事もできません。
どうか、どうか、卑小で愚かな人間にお教えください!」

さて?
下手に出てみましたが、どうなるでしょうか?
直ぐ喰い殺される覚悟でここに来ました。
嬲り者にされるくらいなら、舌を噛み切って死ぬつもりでした。
それが思いがけず復讐の機会を得たのです。
頭を下げ、へりくだるくらい平気です。

「ふぅむ?
確かに生贄娘に朕の偉大さなど分からんな。
仕方あるまい。
くっくっくっく。
普段は忌々しい神々の儲けた制約で人間には手出しできぬ。
だが今は違う。
愚かな人間が自ら余の力を借りたいと生贄を捧げてきたのだ。
神々の制約に穴が開いたのだ。
朕の力を人間どもに見せつける好機ではある。
生贄娘!
この世界を壊さず、この大陸を壊さず、生贄娘の家臣領民を殺さず、復讐相手を殺せばいいのだな?!」

「ダメです!
家族と家臣領民以外の人間を皆殺しにする心算でしょう?!
そんな事は絶対にさせません。
殺すのは私を陥れた人間だけです。
それ以外の人間は殺させません!
分かりました!
神々が儲けられたという制約には、生贄にされた私の同意も必要ですね?
私の同意がなければ、神々の制約が解除されなのでしょ?
だったら私は同意しませんよ。
私を陥れた人間以外を殺すことなど絶対に認めません!」

「朕としたことが、余計な事を聞かせてしまったか。
思っていたよりも賢いな、生贄娘。
見直したぞ生贄娘。
褒美じゃ。
朕がその名を覚えてやろう。
名を名乗るがいい」

「そんな手に引っかかりませんよ!
名を明かしたら、私をあなたの好き勝手に動かせるのではありませんか?
名とは、悪魔から見て人間の本質なのではありませんか?」

「くっくっくっく。
本当に忌々しい人間だな。
だが面白くもある。
さて、どうしたモノであろうな?
朕にとっては百年千年であろうと大した長さではない。
生贄娘を殺して、次の機会を待つのも悪くない。
それに心卑しき人間の事だ。
直ぐに新たな生贄を捧げるかもしれん。
それは明日なのかのしれんし、数年後なのかもしれん。
生贄娘はそれでいのか?
復讐を果たせる好機なのではないのか?
この好機を見逃せるのか?」

「私を試しているの?
だったら無駄な事です。
私は、己の復讐のために、この世界を滅ぼすような下劣の人間ではありません!」


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