「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集2

克全

第8話

私の父上への願いは却下されてしまいました。
理由は騎士団による狩りではなく、私一人による狩りだからそうです。
個人の狩りの成果を、税以外の部分で領主や騎士団が徴収する前例を作るわけにはいかないという、父上らしい公明正大な理由でした。
こういう理由で断られると、無理に使ってくれとは言えなくなります。
ですが、逆に正々堂々と税を納めることができるようになりました!

「ジョージ、父上から断られてしまいました。
ジョージにも知らせは届いていますか?」

「はい、届いております」

「ではジョージに命じます。
私の狩った禽竜の競売落札価格から、税を徴収しなさい」

「それはできません。
殿からも税を徴収しないように命じられております」

「なぜですか?
税の徴収が不公平になるから、父上と騎士団に利益を納めてはならないのではなかったのですか?」

「お嬢様。
ここの城にいる騎士団員や徒士たちは、実家の身分にかかわらず、実力で選ばれた一騎当千の戦士たちでございます。
ですがその分、騎士や徒士の装備を維持するのが難しい収入なのです。
その者たちが装備を維持するために、公休日に狩りをして稼いでいるのです。
そいう理由で、この城に駐屯している騎士や徒士は、狩りの収入は免税されているのです」

「そういう事でしたか。
城代の私が税を納めると、彼らからも税を徴収しなければいけないくなり、今の守備体制が維持できなくなるのですね」

「はい」

「ですが、以前ジョージは、狩りの成果で騎士団を維持していると言っていませんでしたか?」

「勤務中と公休日を分けているのです。
領地や扶持を与えられて勤務している間の狩りの成果は、騎士団の収入になりますが、公休日の狩りの成果は個人の収入になります」

「色々細かく決められているのですね」

「はい、領地を公平公正に治めるためには、色々な決まりごとが必要なのです」

ああ、困りましたね。
確かに父上やジョージが言うように、領地運営は公明正大でなければいけません。
そのための法律は守らなければいけません
時に身分の高い者が守らず、法律に穴があってはいけないのです。
私のような公爵令嬢であり城代である者は、絶対に守らなければいけないのです。
ですが今の話を聞けば、やり方があるのが分かりました。

「ジョージ、私は城代ですね」

「はい、お嬢様は城代です」

「城代であっても騎士団の規則が適応されるというのは、騎士団所属の徒士だけでなく、城代配下の騎士や徒士にも規則を適応させるためですね?」

「はい、その通りでございます」

「だったら、私が公務時間中に狩りをすれば、それは騎士団の維持費用に回さなければいけないのではありませんか?」

うふふふふ。
ジョージが悔しそうです。
気づかれてしまったという顔をしています。
色々と条件は付けられるでしょうが、これで城代として騎士団費用を稼いであげられますね。

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