「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集2

克全

第10話アーロン視点

いつ敵の再攻撃があるかわからない。
一刻も早く準備を終えなければならない。
オリビア嬢も蘇生魔法の準備を進められている。
その邪魔をするわけにはいかない。
何も考えずに一番早く準備すればいいと言うわけでもないのだ。

だが嫌な感覚が強くなる。
これは強敵が近づいてきた時の感覚だ。
以前邪悪な竜と遭遇する前が丁度こんな感じだった。
絶対に間違いない!
邪悪な者が近づいている!

もう時間がない!
自分の身体を起点にするしか間に合わない。
邪悪な者本人が近づいてきたのか、それとも邪悪な者が振るった力の塊が近づいてくるのかは分からないが、護りの魔法陣を完成させなければならない。

「ギャァァアァ!
おのれ、おのれ、おのれ!
我の邪魔をするのは何者だ!」

竜、なのか?
それとも、竜人なのか?
だがこいつが邪悪な者なのはまちがいない!
その身体から放たれる気配は、あまりのも禍々し過ぎる。
少なくとも聖なるものでない事だけは確かだ!

「破邪!
竜破斬!」

邪竜人が魔法攻撃ではなく、自らやってきたので助かった。
どうやら先程の攻撃でオリビア嬢を殺したと信じていたようだ。
自分自身の眼でオリビア嬢の遺体を確かめたかったのだろう。
いや、遺体を穢すつもりだったのか?
このような邪悪な存在なら、それくらいの事をやっても不思議ではない。

「ギャァァアァ!
おのれ、おのれ、おのれ!
人間ごときが、我の傷つけるだと!」

何て丈夫なんだ!
竜を斃した必殺技が通じないのか?
いや、全く通じていない訳じゃない。
邪竜人は確かに苦しんでいる。
一撃で殺せなくても、二撃三撃と攻撃を続ければ、必ず斃せるはずだ!

「火炎弾!
破邪!
竜破斬!
氷烈弾!」

「ギャァァアァ!
おのれ、おのれ、おのれ!
これでも喰らえ!」

最大魔力を込めた魔法と、必殺の一撃の後で追撃の魔法を加えたというのに、斃すどころは毒ブレスの反撃を許してしまった。
俺に宝具の護りがあるから大丈夫だが、オリビア嬢の事が心配で、慌てて視線を向けると、馬車が光り輝いて毒を跳ね除けていた。
それだけではなく、アバが起き上がっていた。

「天におわす神々よ、
私に邪悪な者を退ける力を与えたまえ。
破邪聖光陣!」

「ギャァァアァ!
おのれ、おのれ、おのれ!
これで勝ったともうなよ!
我が死のうとも、我の一族が必ずお前を喰い殺してやる!

光り輝く聖なる光が邪竜人を包み込み、滅殺してしまいました。
聖女、です!
オリビア嬢は聖女だったのです!
私が生を受けたのは、聖女オリビアに仕えるためだったのです!

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