「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集2

克全

第8話

「そうです。
筋がいいですよ。
日に日に魔力が強大になっています。
もう上級魔法使いでも強い方ですよ」

ルーカス様の御陰で、毎日強くなっている実感があります。
ルーカス様の家に伝わる秘術を伝授していただけているのです。
期待してはいけないのに、つい期待してしまいます。
ルーカス様も私を愛してくれているのではないかと。

ですが、とても難しいのです。
今まで習ったことのない常識を、今までの常識を忘れて覚え直すのです。
ツボという概念や、経絡という考え方など理解の外です。
だから、鵜呑みにするだけです。
ルーカス様を信じて、全てを受け入れるだけです。

まずはチャクラでという考えで、会陰から百会に魔力を十回巡らせます。
左右の手の太陰肺経、中府から少商に魔力を十回巡らせます。
左右の手の陽明大腸経、商陽から迎香に魔力を十回巡らせます。
左右の足の陽明胃経、承泣から厲兌に魔力を十回巡らせます。
左右の足の太陰脾経、隠白から大包に魔力を十回巡らせます。
左右の手の小陰心経、極泉から少衝に魔力を十回巡らせます。
左右の手の太陽小腸経、少沢から聴宮に魔力を十回巡らせます。
左右の足の太陽膀胱経、晴明から至陰に魔力を十回巡らせます。
左右の足の少陰腎経、湧泉から兪府に魔力を十回巡らせます。
左右の手の厥陰心包経、天池から中衝に魔力を十回巡らせます。
左右手の少陽三焦経、関衝から絲竹空に魔力を十回巡らせます。
左右の足の少陽胆経、瞳子膠から足竅陰に魔力を十回巡らせます。
左右の足の厥陰肝経、大敦から期門に魔力を十回巡らせます。
督脈の長強から齦交に魔力を十回巡らせます。
任脈の会陰から承漿に魔力を十回巡らせます。

胃と呼ばれる内臓に魔力を送り、食べたものを消化するイメージを浮かべます。
小腸と呼ばれる内臓で食べた物を吸収するイメージで魔力を送ります。
脳の記憶力がよくなるようにイメージして魔力を送ります。
脳から脊髄神経に早く命令が届くように、その効果で早く鋭く力強く体が動くようになるイメージで魔力を送ります。
骨に食べた骨が取り込まれ、骨が強く硬くなるイメージで魔力を送ります。
筋肉を包む膜のようなものがあって、それが広がるイメージして魔力を送ります。
筋肉一本一本が太くなり、更に分裂して二倍になるイメージをして魔力を送ります。
骨や筋肉や内臓まで、身体の全てに魔力を蓄えられるようイメージします。

ルーカス様に教わったことを、疑うことなく三カ月繰り返しました。
たった一つの魔法しか使えず、ろくに魔力の調整もできず、魔竜境に入って直ぐに死にそうになっていた私が、皇国でも数の少ない上級魔法使いになれたのです!

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