「ざまぁ」「婚約破棄」短編集3巻

克全

第10話

「領民の代表を決めなさい。
領主一族は皆殺しにした。
今はこの地を治める者がいない。
このまま放置すれば、近隣の領主や盗賊団に蹂躙される。
次の領主が決まるまで、住民代表がこの地を治め護るのだ」

「聖騎士様と聖女様にお願いするわけにはいかないのでしょうか?」

「残念だがそうはいかない。
私は王国の処罰を受けて、王都を追放され領地で謹慎しなければいけないのだ。
私がこの地を治めては、王家の怒りを買い、この地に災いが降りかかる。
君達自身が責任をもって治めなければいけないのだ」

ディラン様が領民と話し合われています。
元々の代表である村長や若衆頭が集められていますが、彼らは愚劣な前領主が選んだ信用できない連中です。
本来ならもっと時間をかけて、私達が信用信頼できる者に任せるべきなのですが、その時間が全くありません。

それに領主もいな状態で、各村ごとに権力闘争が起こるような事はできません。
前領主が選んだ村長達が、その権力を保持しようと、私達が選んだ者を殺そうとするのが目に見えているのです。
だから仕方なく前領主の体制で統治させるのです。
よろこんで選んだわけではないのです。

私達は後ろ髪の引かれる思いで、この領地を離れました。
ヒロクス子爵領、ここはできるだけ早く再度訪れなければいけません。
王家や近隣領主を敵に回してでも、守ってやらなければいけません。
そう思ってヒロクス子爵領を出て行こうとしたのですが……

「どうか、どうか、どうかお願いでございます。
我々を連れて行ってください。
このままここにいては、飢え死にしてしまいます。
今迄の村長や若衆頭の下では、子供達を飢え死にさせてしまいます。
どうか、どうか、どうか連れて行ってください」

困りました。
ディラン様は絶対の許可されるでしょう。
一旦許可されてしまったら、この家族だけではすみません。
前領主に取り入って美味い汁を吸っていた者達以外は、ほぼ全員ついてきます。
そのようなことになったら、進行速度が極端に落ちてしまいます。
ディラン様と親密になるという私の目的も、無に帰してしまいます。

「グレイス。
私には彼らを見捨てる事はできない。
彼らを連れて行くという前提で教えて欲しい。
このまま迂回して魔窟の支道に向かった方がいいか?
それとも一旦領地に戻り、領内から支道に向かった方がいいか?」

やれやれ、困った方です。
ですが、そういうディラン様だからこそ、私は恋したのです。
しかたありませんね。
自分の思いよりも、ディラン様の名声の方が大切です。

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