「ざまぁ」「婚約破棄」短編集3巻

克全

第15話

「今から癒しの魔法を使います。
上手くいけば病が癒え、元の身体に戻れるでしょう。
失敗すればこのままですが、それで諦めたりはしません。
私の知る限りの魔術を組み合わせます。
手に入る限りの素材を試します。
期待を裏切り落胆させることが多くあるでしょう。
それでも実験に付き合ってくれますか?」

「「「「「はい!」」」」」

「私たちのために実験してくださるのです。
どれほど苦しい実験でも参加させていただきます」

「天罰だと殴られ蹴られ、何度も死にかけました。
それを病だといって受け入れてくださったのは、オリビア様だけです。
どれほど痛い実験でも参加させていただきます」

みなが異口同音に参加を願いでた。
それは幼い子供も年老いた者も同じだった。
それを見ていたキャスバルたち忍者は、思わず涙を流していた。
だがオリビアは苦笑して言った。

「痛い思いなど絶対にさせませんよ。
でも心の痛み、落胆は、身体の痛み以上に辛いでしょう。
それを我慢してくださる方だけが参加してくださいね」

「「「「「はい!」」」」」

オリビアの心配はまったくの杞憂だった。
治療がただの一度で成功したのだ。
いや、手順的には二度の魔法が必要だった。
病を癒す魔法と、身体を元に戻す魔法だ。
現在進行形で、徐々に身体を蝕む病を、まず最初に退治になければならない。
完全に病を退治してから、醜く変形した身体を元に戻さなければいけない。

オリビアは最初に失敗する可能性を説明して謝っていたが、事前準備は完璧にすませて、できる限り病人の心を傷つけないように配慮していたのだ。
それでなくても、発病して以来心を傷つけられ続けているのだ。
治療のためとはいえ、さらに傷つける気はオリビアにはないのだ。
だがどれほど準備した自信の治癒魔法でも、実際に人の使うのは初めてだ。
絶対はないから、失敗の可能性を謝ったのだ。

「わあああああい!
なおった!
なおったよ!
オリビア様!
ありがとうございます!」

「大丈夫ですか?
どこもいたくありませんか?」

「はい、どこもいたくありません!」

「キャスバル殿。
しばらく経過を見てやってください」

「はい!
お任せくださいオリビア様!」

「坊主、こっちにおいで。
しばらくは集会所で様子を見るから」

「はい、キャスバル様」

キャスバルは指名で役目をもらって、勇躍して子供を連れて行った。
子供もよろこんでついていった。
あとは魔鹿皮紙を使いきるまで治療するだけだった。
比較的軽症なというか、身体の変形の少ない者から治療された。
二十三枚の魔鹿皮紙で完治まで持っていけるのは十一人だけ。
誰一人失敗することなく十一人の治療が終わった。

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