「ざまぁ」「婚約破棄」短編集3巻

克全

第13話

「さあ、今日は葛を掘りますからね。
蔓も無駄にしてはいけませんよ。
蔓を使って皆さんの服を作りますからね」

「「「「「はい!」」」」」

遠くから見ているキャスバルは羨ましかった。
オリビアと一緒に村作りができる病の民が妬ましいくらいだった。
一瞬、あのような者達よりは、自分達の方が役に立つと思ってしまった。
だが慌ててその考えを振り払い悔い改めた。
そのような卑しい考えは、オリビアに唾棄されると思いだしたからだ。

「キャスバル様、何を悩んでおられるのですか!
悩まずに行動された方がいい。
オリビア様が人間を拒否されておられないのは、彼らが証明してくれました。
ならば我らも、お願いすれば拒否されたりはしません。
その上で役に立てばいいのです。
オリビア様は王都での炊き出しや孤児院運営を、家臣や協力者を使ってやっておられましから、我々がその役目を果たせばいいのです」

「そうか?
そうだな!
だが独断で始めて御前で揉めるわけにはいかない。
お頭に話をして、一族の同意を取り付けよう」

後は簡単な話だった。
忍者達はオリビアを心から敬愛していた。
特にキャスバル組の者達は、狂信者といっていい状態だった。
忍者一族全ての総意で、オリビアに仕える事に決めた。
そして翌日早々全員参加でオリビアに願い出た。

「貴方達の話は分かりました。
嘘偽りがないのも分かっています。
よろこんで迎え入れます。
これからよろしくお願いしますね」

「勝手な願いを聞き入れていただき、感謝の言葉もありません」

忍者達の心配など杞憂でしかなかった。
ごくあっさりと迎え入れて貰えた。
忍者達は張り切って仕えた。
病の者たちの中には、身体が不自由な者もいる。
そんな者たちを助けて、力仕事や狩りを担った。
特に小屋作りには力を入れた。

忍者達には許せない事があったのだ。
いや、許せないと考えるのは駄目だと分かっていた。
そのような心の狭い考えでは、オリビア様に仕える資格がないのは分かっていた。
だが、それでも、病の者達が、オリビア様と一緒に寝起きするのが嫌だった。
本当の直ぐ側は、狼や天馬や一角馬がいると分かっていてもだ。

忍者達は食糧集めを最小限に抑えて、家づくりを優先した。
生木を使うので、床はなく土間だ。
どうせ床を張っても木が乾燥すれば歪んでしまう。
枯草や毛皮で寝床を作り、釜土も造った。

「オリビア様、次は何をいたしましょう?」

「そうですね、少し試したいことがあります。
魔獣を狩る事はできますか?」

「はい、それほど強くない魔獣でしたら。
魔熊程度なら狩ることができます」

「魔熊まで強くなくて大丈夫です。
魔羊や魔鹿でいいので、狩って魔皮紙を作ってください」



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