「ざまぁ」「婚約破棄」短編集3巻
第6話
オリビアは歩みを止めました。
背中に背負った幼児は熟睡しています。
少々の事があっても起きないと、ひと目で分かるほどです。
鍛え上げた視力に魔力を付加した、遠見の力で見張っているのです。
役目で見張っているのか、心配で見守っているのか、キャスバルも自分で自分の事がよくわからなくなっています。
熟睡している幼児を、オリビアは壊れ物のようにそっと草の褥の上に置きます。
よほど腕に負担がかかっていたのでしょう。
軽く腕を回して強張りをほぐしています。
腕だけでなく、身体も少し動かしてから、幼児が火傷しない絶妙な距離で火をおこし、焚火をはじめました。
幼児が山の寒さで弱らないようにするためでしょう。
それからオリビアは、どこからともなくナイフをだして、狼が置いて行った兎を解体します。
オリビアも空腹なのだと、ずっと後をつけていたキャスバルは妙に納得しました。
それもそうでしょう。
時折街道沿いの森で果物を採って食べるだけで、ほとんど食事をしていません。
特に今日は、自分用にとっておいた果物を幼児にあげて、夕食も食べずに夜の街道を歩いていたのですから。
ただキャスバルは不思議に思いました。
レフトランド公爵家の令嬢であったオリビアが、自分たち忍者よりも慣れた手つきで兎を解体するのです。
まるで本職の狩人や料理人のようです。
そんな風に不思議がっているキャスバルの思いなどとは関係なく、オリビアの料理は続きます。
内臓ひとつ無駄にする事なく、遠火でゆっくりと焼ける位置に、手早く枝を斬り削って作った串を刺していく。
自分でも兎を狩り料理したことのあるキャスバルは、塩と香草があれば美味しくなるのにと、妙な事を考えていた。
そんな考えなどとは関係なしに、オリビアの周りは動いていました。
焼けた兎をオリビアは食べようとしないのだ。
この時ようやくキャスバルは気がついた。
焼いている兎は、オリビア自身の空腹を満たすためのモノではないのだと。
自分が食べる事を後回しにして、幼児に少しでも食べさせてあげようとしているのだと。
狼に遅れをとった事に忸怩たる思いをしていたキャスバルは、今度こそ役に立てると思った。
美味しい獣を狩ると心に誓った。
だが、その決意もあっという間に潰れてしまった。
また狼が兎を狩って咥えてきたのだ。
咥えて来て、オリビアの側に置いて行くのだ。
「ありがとう、美味しく食べさせてもらうわね」
遠見と遠聞きで、オリビアが狼にお礼を言うのを聞いたキャスバルの心の中に、嫉妬の気持ちがわきあがっていた。
背中に背負った幼児は熟睡しています。
少々の事があっても起きないと、ひと目で分かるほどです。
鍛え上げた視力に魔力を付加した、遠見の力で見張っているのです。
役目で見張っているのか、心配で見守っているのか、キャスバルも自分で自分の事がよくわからなくなっています。
熟睡している幼児を、オリビアは壊れ物のようにそっと草の褥の上に置きます。
よほど腕に負担がかかっていたのでしょう。
軽く腕を回して強張りをほぐしています。
腕だけでなく、身体も少し動かしてから、幼児が火傷しない絶妙な距離で火をおこし、焚火をはじめました。
幼児が山の寒さで弱らないようにするためでしょう。
それからオリビアは、どこからともなくナイフをだして、狼が置いて行った兎を解体します。
オリビアも空腹なのだと、ずっと後をつけていたキャスバルは妙に納得しました。
それもそうでしょう。
時折街道沿いの森で果物を採って食べるだけで、ほとんど食事をしていません。
特に今日は、自分用にとっておいた果物を幼児にあげて、夕食も食べずに夜の街道を歩いていたのですから。
ただキャスバルは不思議に思いました。
レフトランド公爵家の令嬢であったオリビアが、自分たち忍者よりも慣れた手つきで兎を解体するのです。
まるで本職の狩人や料理人のようです。
そんな風に不思議がっているキャスバルの思いなどとは関係なく、オリビアの料理は続きます。
内臓ひとつ無駄にする事なく、遠火でゆっくりと焼ける位置に、手早く枝を斬り削って作った串を刺していく。
自分でも兎を狩り料理したことのあるキャスバルは、塩と香草があれば美味しくなるのにと、妙な事を考えていた。
そんな考えなどとは関係なしに、オリビアの周りは動いていました。
焼けた兎をオリビアは食べようとしないのだ。
この時ようやくキャスバルは気がついた。
焼いている兎は、オリビア自身の空腹を満たすためのモノではないのだと。
自分が食べる事を後回しにして、幼児に少しでも食べさせてあげようとしているのだと。
狼に遅れをとった事に忸怩たる思いをしていたキャスバルは、今度こそ役に立てると思った。
美味しい獣を狩ると心に誓った。
だが、その決意もあっという間に潰れてしまった。
また狼が兎を狩って咥えてきたのだ。
咥えて来て、オリビアの側に置いて行くのだ。
「ありがとう、美味しく食べさせてもらうわね」
遠見と遠聞きで、オリビアが狼にお礼を言うのを聞いたキャスバルの心の中に、嫉妬の気持ちがわきあがっていた。
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