「ざまぁ」「婚約破棄」短編集3巻

克全

第5話王女オリビア視点

ウィリアム皇太子殿下は厳格な方です。
立太子式を穢したジェームズ王太子だけでなく、家臣の貴族まで追放されました。
ソーベアリンナン王家にその知らせが届いた時に、ジェームズ王太子がどのような処分を受けるか、だいたい想像がつきます。

ですが私から見れば、ウィリアム皇太子殿下はお優しい方です。
不当な考えで貶められた私を、助けてくださいました。
しかし、ただ助けて頂いただけで済ませる事はできません。
王侯貴族には守らねばならない約束事があるのです。
皇室と仕える諸侯王や貴族の間で守らなければいけない約束事です。
恩には奉公で応えるという約束です。

ですが具体的にどうすべきかが分かりません。
皇室に不足などないはずです。
皇太子殿下は英邁の誉れ高く、何の不足もないとお聞きしています。
私個人はもちろん、ロッキンガルナム王家王国もお手伝いする事がありません。
立太子式の費用負担を申し出るべきでしょうか?
しかしそれでは、家臣領民に余分な負担をかけてしまいます。

色々と考えているうちに、ダンスの時間になってしまいました。
私にとっては先程の恥を思い出させる嫌な時間です。
本来なら、婚約者だったジェームズが私にダンスを申し込むはずでした。
しかしそのジェームズは、もうこの会場にいません。
それ以前に婚約者でもなくなっています。
向こうがどれほどわびてきても、わびを受け入れる事はできません。
わびを受け入れた時点で、私もロッキンガルナム王家も、誇りを持たない恥知らずだと思われてしまいます。

「オリビア嬢。
私とダンスを踊って頂けませんか?」

驚きました。
皇太子殿下からダンスを申し込まれてしまいました。
それもただの申し込みではありません。
ファーストダンスの相手を申し込まれたのです。
皇室の仕来りでは、ファーストダンスの相手は婚約者と決まっています。

ようやく思いだしました。
英邁の誉れ高いウィリアム皇子が、第一皇子であるにもかかわらず、今日まで立太子式が行われなかった理由。
真実かどうかわからないものの、まことしやかにささやかれていた噂。
ウィリアム皇子が男色家で、子孫を望めないと言う噂です。

これは先程のお礼をすべき時です。
最初から断れる事ではありませんが、今回は特にうれしそうに踊らなければなりません。
真実か嘘かは分かりませんが、殿下が男性より女性の方が好きだったのだと、ここにいる皆に思わせなければなりません。
情熱的な最高のダンスを披露するのです!

「喜んで、ウィリアム皇太子殿下」



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