「ざまぁ」「婚約破棄」短編集3巻

克全

第4話皇太子ウィリアム視点

バカがつまみ出されてようやく立太子式が再開された。
これでようやくオリビア嬢と話をすることができる!
楽しみで待ちきれない。
つい入室扉に駆け寄り、その麗しの姿を眼に捕らえたくなる。
だが、皇太子となる者がそのようは無様な姿を見せる事はできん。
精神力を振り絞って、耐えねばならん!

「ルネジェリビアネロ皇国第一皇子ウィリアム殿下、ご入室!」

いよいよ私の出番だ!
王侯貴族の全てに、私の雄姿を見せつけねばならん。
私に逆らえば、家も国も滅ぼされると、猛々しさを印象付けなければならん。
それが立太子式の意味だ!
そのための立太子式なのだが……

そんな事はどうでもよくなってしまった!
ただひたすらオリビア嬢の事だけを考えてしまう。
眼が自然とオリビア嬢の事を追ってしまう。
あんなことが起こった後だから、オリビア嬢を慰め護るために側に家臣が集まっているが、その家臣にさえ激しく嫉妬してしまう。
恋とはなんと度し難いモノなのだろう……

式は順調にすすみ、ようやく待ちに待った自由時間だ。
自由時間といっても、王侯貴族との顔合わせなのだが、これでようやくオリビア嬢と話をすることができる。
だが、ここにも貴族の常識と皇太子となる者の礼儀が立ちはだかる。
順番は絶対に守らなければいけないのだ。
言葉のひとつひとつに細心の注意を払わなければいけないのだ!

格式の高い大国の代表、王族から話さければいけない。
威厳を見せつけると同時に、忠誠心も獲得しなければいけない。
それができなければ、名君と呼ばれるような存在にはなれないのだ!
その気持ちで臨むはずだった立太子式だが、今ではオリビア嬢と仲良くなりたいという想いだけしかない!
皇太子としての責任感と、個人的な欲望の間で、私の心は潰されそうです。
自制心と皇族の誇りを総動員して、順番にあいさつを交わす。
そしていよいよ、待ちに待ったオリビアの番が来た!

「私がルネジェリビアネロ皇国の皇太子となったウィリアムだ。
以後宜しく頼むぞ」

「丁寧なご挨拶痛み入ります。
わたくしはロッキンガルナム王家の第一王女オリビアと申します。
こちらこそよろしくお願いいたします。
それとお礼言上が遅くなってしまいましたが、先ほどはお助け下さってありがとうございます」

豊満な身体を優雅に動かし、あいさつしてくれる。
その動きに目が釘付けになってしまう!
鈴を転がすような美声が耳朶をうち脳髄を響かせる。
鼻腔を刺激する馥郁たる香りが脳をとろかしてくれる。
もうなにも考えられない。
この場で押し倒して全てを奪いたくなる!
これ以上はダメだ!
理性を保てなくなる!




          

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