「ざまぁ」「婚約破棄」短編集3巻

克全

第8話

「ファティマ姉さん。
ほんとに大丈夫でしょうか?
バルフォア侯爵領で拘束されてしまうのではありませんか?」

慎重な性格のソフィアはバルフォア侯爵が信用できないようです。

「大丈夫だよ、ソフィア姉さん。
時期を選んで向かえば、大山脈の魔境まで逃げればどうにかなるよ」

ローザは楽観的な性格の上に、一騎当千の戦闘力を誇っていますから、バルフォア侯爵軍など頭から飲んでいるのでしょう。
その言動に安心させられる反面、大きなスキや失敗の危険もあるのです。

「ローザは楽観的過ぎるわ。
何事もあらゆる可能性を考えておかないといけません。
ローザは戦闘に自信があるから油断があるのよ」

その言い方だとローザが怒るわね。

「なに?
自信があっちゃダメなの?」

「やめなよ、ローザ姉さん。
ソフィア姉さんもちょっと厳しく言いすぎじゃない?
可能性を考えるのも大切だけど、もう決まった事でしょ?
今さら蒸し返してもどうにもならないわよ」

クラリスの言う通りです。
もう和平案を調印しているのです。
父上が決められた以上、私たちはそれに従うだけです。

「クラリスの言う通りだけど、心配なのよ。
なぜ反対しなかったのですか、ファティマ姉さん?
ファティマ姉さんが危険だと言えば、父上もこんな条件では調印しなかったのではありませんか?」

ソフィアが私に話を振ってきます。
確かに私が反対すれば、父上は調印しなかったでしょう。

「そうですね。
私もなぜか知りたいです。
なぜ反対されなかったんですか?」

クラリスも理由が聞きたいようです。
大した理由ではないので、あまり話したくはないです。

「考える事は、ファティマ姉さんに任せておけばいいんじゃないの?
私たちが下手に考えても時間のムダよ。
そんな時間があったら、少しでも武芸を磨いて、ファティマ姉さんの役に立てるようになるべきよ」

ローザらしい考えですね。
でもそれでは困ります。
私が殺されるようなことになったら、その後はどうするんですか。

「そんな考えじゃダメよ、ローザ。
いつ何があって私が死ぬことになるかもしれないのよ。
自分で考えて判断する訓練をしておくべきよ。
それが嫌なら、父上とソフィアの意見にも盲目的に従いなさい。
そうでないと内部分裂の罠をしかけられるわよ」

「大丈夫です、ファティマ姉さん。
姉さんを先に殺させたりはしません。
私が命懸けで護ります。
姉さんを先に死なせるなんて、家を滅ぼすのと同じです」

「そうですよ、ファティマ姉さん!
姉さんを先に殺されるようでは、私たちの負けです」

あれ、あれ。
ソフィアまで目を三角にして怒ってしまいました。

「私もそう思います、ファティマ姉さん。
姉さんだけは家に残る条件にできなかったのですか?」

クラリスまでそんな事を言いだすようでは困ります。
ちゃんと説明しておかないといけませんね。


コメント

コメントを書く

「恋愛」の人気作品

書籍化作品