「ざまぁ」「婚約破棄」短編集3巻

克全

第8話

「お初にお目にかかります。
自由戦士のブリギッテと申します。
これからよろしくお願い申し上げます」

「こちらこそよろしくね」

父上は形振り構わず女戦士と女魔法使いを集めて面接されました。
本当に賠償金全てを使うつもりなのかと、今後の事を考えて止めようと考えてしまうほどの勢いでした。
ですが幸いにして、そこまでの出費は必要ありませんでした。
いえ、違います。
そこまで出費が必要になるだけの人材が集まらなかったのです。

私の護衛ですから、強くなければいけないのは当然です。
ですがそれ以上に、私を害することがないと確信できなければいけません。
刺客を自分たちから引き入れるわけにはいかないのです。
当然信頼できる紹介状が必要になりますが、弱小貴族の悲哀は身に染みています。
権力者の圧力で簡単に信義信頼を捨てなければなりません。

今まで交流のあった弱小貴族家を信用できなくなりました。
王太子の愛妾に望まれた私を取り込もうとしたり、逆に殺したい権力者は、我が家と付き合いのあった貴族家に圧力をかけて、女官を送り込もうとします。
信用できるのは自由戦士ギルド、傭兵ギルド、冒険者ギルドだけになります。
いえ、自由戦士ギルドだけといっていいでしょう。

普段ならある程度信用できる傭兵ギルドと冒険者ギルドですが、今回ほど大きな権力、王家王国の継承を左右するような重大事だと、所在領主の影響力が強い傭兵ギルドと冒険者ギルドを信じきることができません。
普段ならある程度自由にさせている傭兵ギルドと冒険者ギルドにも、領主は権力を行使するだろうからです。

ですがありがたいことに、自由戦士ギルドという存在があります。
傭兵の中の騎士と呼ばれるほど、信義を大切にするのが自由戦士ギルドです。
契約を破った存在は、自由戦士ギルドの全力を使って滅ぼします。
依頼主を裏切った自由戦士ギルド所属の戦士だけでなく、自由戦士ギルドを騙した依頼主にも容赦しません。

ある国の有力公爵が、自由戦士ギルドを騙して犯罪の片棒を担がせました。
はっきり言えば、王位継承権のある王子を殺して、自分が王に戴冠しようとしたのですが、それを察した自由戦士ギルドが報復したのです。
その公爵を殺し、公爵の係累を情け容赦せず皆殺しにしたのです。
それからは、自由戦士ギルドを騙そうとする貴族はいなくなったそうです。

幸いにして、その自由戦士ギルドから女戦士を雇うことができました。
直ぐに来いとせかす王太子の命令に間に合ったのはブリギッテだけですが、契約が終了した幾人かの女戦士と女魔法使いがやってきてくれることになりました。
それまではブリギッテだけが頼りです。


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