「ざまぁ」「婚約破棄」短編集3巻

克全

第1話

「婚約は解消させてもらうぞ、エミリー。
異存はないな?」

異存がない?
異存なら山ほどあります!
今回の婚約は、私やリヴァン男爵家が望んだモノではありません。
ヘイスティングズ伯爵家が権力にまかせて無理矢理押し付けてきたのです!

貧しいリヴァン男爵家が家臣領民を総動員して、やっと発見した銀鉱山を横取りしようとしての婚約です。
伯爵家の正室として相応しい体面を保つために、私の台所領として鉱山を持参金にしろとまで強要したのです。
そんな条件は絶対に飲めません。
まして婚前交渉要求を受け入れる事はできません!

激しい攻防のすえに、鉱山そのものではなく、採掘された鉱物の純利益の五割を、私の台所費用として納めることで話がつきました。
腹立たしかったです。
リヴァン男爵家にとっては、計算していた収入が半減してしまうのです。
それでは汗水たらして協力してくれた家臣領民に、十分報いてやれません。

ですがここでリヴァン男爵家にとっても痛恨の事件が起こりました。
鉱山で落盤が起こってしまったのです。
幸い死者は出なかったものの、地盤が弱くて採掘するのが危険すぎたのです。
ヘイスティングズ伯爵家は手のひらを返しました。

私との婚約を解消するというのです!
あれほど強硬に婚約を迫ったのに、ブリーダルベイン伯爵家のネヴァヤ嬢と婚約するというのです。
私もリヴァン男爵家も、最初から馬鹿令息と評判のダニエルとなど結婚したくはなかったのですが、婚約破棄された令嬢という汚点がついてしまいます。

「まあ、なんて顔をしていますの!
たかだか男爵令嬢の分際で、伯爵令息のダニエル様に不服を申し立てるおつもり?
ああ、嫌ですわ。
これだから礼儀をわきまえない田舎娘は嫌いですの」

腹立たしい!
実家の家格を笠に着た礼儀知らずはお前達だろうに!
王太子殿下を誘惑しようとして失敗し、父親のブリーダルベイン伯爵ともども国王陛下の御前で厳しく叱責されたのは貴女でしょうに!
その汚点を消すために、莫大な持参金と台所領を条件に、何とかダニエルとの婚約話を取り結んだのでしょう。
一番恥知らずで礼儀知らずなのは貴女でしょう!

「その話しかと聞いた!
ヘイスティングズ伯爵!
ダニエル!
余の前でしっかりと事情を説明せよ!
ただし、貴族士族列席の舞踏会でリヴァン男爵家とエミリー嬢に大恥をかかせ、婚約解消を、また解消して婚約し直すのはなしだ!
そのうえで身勝手にも一方的に婚約を破棄した賠償をどうするか話してもらう!」

ディラン王太子殿下です。
ディラン王太子殿下が助けてくださいます!

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