「ざまぁ」「婚約破棄」短編集3巻

克全

第4話第3者視点

「ちい!
どこにも女がいないじゃないか!
こんな事なら王都に残っていればよかった。
ロベルト!
女を攫ってこい!」

「申し訳ありません、王太子殿下。
フラヴィアが領内の人間を全員領都に匿ったようでございます。
そのため、直ぐに女を確保するのは難しいですが、領都を落としさえすれば、多くの女が手に入ると思われます」

「言い訳など聞きたくない!
余は今すぐ女が抱きたいのだ!
カーライル領で手に入らないなら、ここに来るまでに通過した貴族領から攫ってくればよかろう!
さっさと攫ってこい!」

「しかしながら王太子殿下。
その領地の男達が、王太子殿下にお味方して軍勢に加わっております。
その領地から女を攫ってしまうと、兵士の妻や娘を乱暴することになります。
それでは士気が保てません。
それどころか王太子殿下を恨む者まで出てきてしまいます」

「じゃかましいいわ!
誰が諫言しろと言った!
余は女を連れてこいと言ったのだ!
お前は四の五の言わずに女を連れてこい!
王太子の余に抱かれるのは名誉なことだ!
それを士気が保てないとか、恨みに思うとか、不忠の極みじゃ!
逆らう者も文句を言う者も殺してしまえ!」

ベイリー伯爵ロベルトは王太子のあまりの暴言に絶句してしまった。
暴君そのものの言動は、王都を出征してから度々繰り返されていたので慣れたつもりでいたのだが、嬲り者にする女が尽きた途端、常軌を逸した言動をとるようになったので、この後どうすべきか判断できなかった。

「分かりました、殿下。
その件は私が何とか致します。
ベイリー伯爵は歴戦の将軍です。
女の手配は軍務ではありませんから、伯爵は経験がないのです。
そのような事は私のような側近にお任せください」

ベイリー伯爵は王太子の無理無体から解放されてほっとしていた。
だが同時に、これからの王国を考えると頭を抱えたくなった。
こんな暗愚な者が王位に就いたら、国は傾き隣国が攻め込んでくると、歴戦の将軍らしい心配をしていた。

「分かった、ロレンツォに任せる。
なんなら軍の指揮もロレンツォが執るか?」

「それはあまりにも恐れ多いことでございます。
国王陛下か任命された副将軍を押しのけて軍を指揮するなど、王命を蔑ろにする行為でございます。
私のなすべきことは、殿下の御世話でございます。
軍の事は国王陛下の命に従い、これからもベイリー伯爵にお任せするべきだと思います」

怒りと屈辱で真っ青になっていたベイリー伯爵が、感謝の視線をバクルー伯爵家の長男ロレンツォに向けた。
遠征しているハミルトン王国軍の内部は、色々な意味で混乱していた。

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