「ざまぁ」「婚約破棄」短編集3巻

克全

第1話

私は幼い頃から小さくなって生きてきました。
伯爵令嬢なのに、人並み外れた身長なのです。
身体つきも骨格が太く、どれほどダイエットしても筋肉が付いてしまいます。
そして顔も……
普通なら縁談など一つも来ない容姿なのです。

ですが、今は大陸が戦乱時代なのです。
容姿ではなく武勇が何より優先されます。
それは騎士や戦士だけに限られません。
王家や貴族も油断できないのです。
武勇を蔑ろにすれば、家臣に下克上される時代なのです。

だから、私のような女にも、縁談が舞い込みます。
より大きく強い子を生んでくれる母体だと。
私の一族である、ミュラー伯爵家の強力な騎士団戦士団を援軍に欲しいのです。
私の恋して求婚してくれる訳ではないのです。
こんな時代だから仕方ないかもしれませんが、恋に憧れる私には哀しいです。

「皆に聞いてもらいたい。
私は王家のため国のため、意に沿わぬ婚約をした。
婚約をした以上、誠実に生きてきた。
なのに、ソフィーは醜い容姿を我慢して婚約した余の誠意を蔑ろにし、不貞をはたらいたのだ!」

「おおおおおお!」

ジョナサン王太子が私の事を悪し様に罵っています。
ですが全て事実無根です。
私は不貞などしていません。
そもそも陰でオーガ令嬢と悪口を言われている私と、不貞をしようという男性は一人もいません。

私に優しく接してくれる男性は一族の男性だけです。
でもそれは、私を妻に迎える必要がないからです。
一族の男性も、私を妻に迎えろと命令されたら、さすがに優しくなどできないでしょう。
そんな事は私にも分かっています。
でも、少しでも、ジョナサン王太子に醜い容貌で生まれた女への優しさがあるのなら、満場の席で醜いと罵るのは止めて欲しかったです。

「余は王家と王国の名誉を守るために、ソフィーとの婚約を破棄する事を宣言する。
同時に恥をかかしたミュラー伯爵家との絶縁を宣言する!」

ああ、結局こうなってしまいました。
私や父が望んだ縁談ではありません。
王太子殿下かとの縁談など、身分違いだと何度もお断りしていたのです。
それを、アニカ王妃殿下と摂政を務められるクラウゼ公爵閣下が、何度も何度も直接当家に来られ、頭を下げられたから御受けした婚約なのです。

私にはこうなる予感がありました。
私と初めて会った時のジョナサン王太子に表情です。
怪物でも見たような恐怖と嫌悪が浮かんでいました。
でも、だからといって、このような仕打ちは酷すぎます。
王国側から平身低頭求めてきた婚約なのですから、誠意を持って破談にして欲しかったです。

「待て!
そんな話は全く聞いていないぞ!
証拠はあるのか!」


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