「ざまぁ」「婚約破棄」短編集3巻

克全

第13話

「おのれ、おのれ、おのれ!
ここまで来て邪魔されてたまるか!
その小娘は我のモノだ!
すでに魂の契約は終わっている!」

「そうはいかないわよ、ルシファー。
エルンストを使ってラウラを陥れたのは分かってるの。
そのような契約は無効よ。
ほら、この通りよ!」

ああ、私の不安と恐怖は正しかったのですね。
そもそも母上がオットーに騙されたのも、エルンストがルートヴィッヒ侯爵家を狙ったのも、ルシファーの謀略だったのですね。
エルンストですら、ルシファーに騙され操られていたのかもしれません。
でも、だからと言って、許すことなどできませんが。

「人の力を仲介せねば、悪魔も天使もこの世界で十分な力を行使できん。
ラウラが離れたルシファーなど恐れるに足らぬ。
これでも喰らえ!」

「ウギャァァァァアァアァアア」

ヴォルフガング様が両手を重ねられ、神々しい光の束をルシファーに向けて放たれました!
私の目の錯覚でなければ、ヴォルフガング様の御身体に多くの天使様が重なって見えます。
これはいったいどうなっているのでしょうか?

「ラウラを助けたい一心で、日夜神に祈ったのだよ。
そのうちに啓示が授かるようになり、天使様の御姿を見えるようになった。
ラウラを助けるための方法を啓示していただけたので、達成するために修行に励み、天使様をこの身に宿すことができるようになったんだよ」

「そんな!
危険すぎます!
ヴォルフガング様の御身体に触ります!
しかも複数の天使様を宿すなんて、死んでしまうのではありませんか?」

「でもね、ラウラも死の危険にあったんだ。
婚約者の私が命を懸けないで誰が助けるというのだい?
私はラウラを心から愛しているのだよ。
ラウラのいないこの世界も、天上界も意味がないのだよ。
私が選べるのは、ラウラを助けて共にこの世界で生きるか、助けられないで消滅するかだよ」

「うれしい!
でも、もう無茶はやめてください!」

「ああ、そうだね。
せっかくラウラを助けられたんだ。
この世界で長く幸せに暮らさないとね。
それに、一緒に天上界に行けるように、善行も積まなくてはいけないね」

「あれほどの罪を重ねた私が、天上界に行けるのでしょうか?」

「もう神様の御許しは得ているよ。
それよりも、早く母上を生んで差し上げようよ。
天使様も失態を詫びようと、マリアの魂をラウラと私の間に生まれた子に宿してくださるのだ」

「まあ!
本当でございますか?
私、今度こそ母上に幸せになってもらいます。
母上からいただいた愛情を、何倍にもしてお返しします」

「そうだね。
だからね。
直ぐに子供を作ろうね!」

「まぁ、ヴォルフガング様。
あああ、いけませんわ……」

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