「ざまぁ」「婚約破棄」短編集3巻

克全

第8話

「後のことは御願いしますね。
私がしていたのと同じように苦しめてください。
でも決して心は壊さないでくださいね」

私はオットーのことは魔族の方に御願いすることにしました。
ルシファーは私のことを大切にしてくれているのか、多くの魔族を側仕えにつけてくれました。
私がルシファーのような魔王から逃げ出せるはずありませんから、逃亡を恐れて魔族に監視させているとは考えられません。
ただ、新たな魔族を召還するたびに、私に許可を求めて儀式をさせていますから、魔族は人間の許可と儀式がなければこの世に現れることができないのかもしれません。

私はもう一人の魔族に馬車の用意を頼み、ステラとイザベラがいる奴隷競売屋敷に向かうことにしました。
魔族の力なら、転移で移動することも簡単なのですが、それではオットーに化けてステラとイザベラを地獄に落とすことができなくなります。
心から信じていた者に裏切られる苦しみ、ステラとイザベラにも味合わせないと心が晴れません。
まあ、でも、ステラとイザベラがオットーを信じていないという可能性もあるのですが。

私が奴隷競売屋敷にたどり着いた時には、そこは大混乱になっていました。
半狂乱になったイザベラが、ルートヴィッヒ侯爵家の使用人を大勢引き連れて、奴隷競売屋敷を襲っていたのです。
正直想定外でした。
金を払ってステラを買い戻すか、権力で交渉すると思っていたのです。
狂気が暴力に走らせたのか、元々凶暴で暴力に訴えるのが普通なのか?
でも、まあ、今となってはどうでもいいことです。

オットーが新たにルートヴィッヒ侯爵家で召し抱えた使用人は、クレーマー侯爵家の使用人一族が多いのです。
クレーマー侯爵家にいると、部屋住みとして当主の顔色を窺いながら小さくなって生きていかなければいけません。
誰だってそんな身分は嫌なので、必死になって自分を鍛えて独立を目指します。
それはどこの家でも同じなのですが、クレーマー侯爵家に限れば、悪辣非道な行いができれば、親や兄を追い落とすことができるのです。
だから親兄弟で暴力と悪知恵を磨き、勝ち残った者がクレーマー侯爵家に残り、負けたものの生き残れたものがルートヴィッヒ侯爵家に来ています。

だからなのでしょうか?
一味であるはずの奴隷競売屋敷の悪党どもに、容赦なく襲い掛かっています。
生き残るためなら、親兄弟でも殺してきたモノの性なのかもしれません。
主君の命令を妄信して何も考えず非道を行わなければ、今まで生きていけなかったのかもしれません。
ですが、何が理由であろうと、私に対して行ってきたことは許せません。
苦しんでもらいましょう。

「「ざまぁ」「婚約破棄」短編集3巻」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「恋愛」の人気作品

コメント

コメントを書く