「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集4

克全

第6話

(ダリヤ。
わらわはメフメトが気に入りました。
メフメトがゴーマンストン王家を滅ぼし、建国王となるように勧めなさい)

(はい、我が守り神ペレ様)

私は直ぐに早馬車を仕立てて神殿から王都に向かいました。
わずかでも時間が遅れて、メフメトが他の女と恋するようなことになったら、メフメトも私もペレ様に焼き殺されてしまいます。
私がペレ様から受けたイメージでは、ペレ様の想い人と恋仲になった妹神が、想い人共々焼き殺されているのです。

私自身が焼き殺されるのも恐ろしいですが、美しくて気立てのいい妹アンナがメフメトが恋仲になってしまったら、アンナが殺されてしまいます。
それだけは絶対に防がなくてはいけません。
そう決意して、急ぎに急いで王都に駆けつけました。

「守護神ペレ様の聖女として命じます。
ゴーマンストン王家を滅ぼして建国王となりなさい。
そして寝室でペレ様のお成りを待つのです」

「慎んでお受けさせていただきます」

何とか変な事が起こる前に王都につくことができました。
心に大きな傷を受けたアンナはとても魅力的で、メフメトと出会っていたら取り返しのつかない事になっていたかもしれません。
ですが間に合った事で、メフメトもペレ様の想いを知りました。
この国の民で、守護神ペレ様の嫉妬深さを知らない者はいません。
もうメフメトはペレ様の許可なしに女性を近づける事はないでしょう。

それからは簡単な話でした。
ペレ様の力の一部を分け与えられたメフメトが、国王と王族が籠る王宮を焼き払い、王族を皆殺しにしました。
火山の女神で炎の女神のペレ様にふさわしい神力です。
火山を噴火させなかったのは、この後でこの国を統治するメフメトの事が気に入ったからでしょう。

火山の溶岩で滅ぼした国や都は、復興するのが大変ですからね。
私と妹のアンナは伯爵の地位を頂きました。
領地は今回滅ぼされた貴族家の領地から伯爵家にふさわしい広さを頂きました。
そして婿を迎えたのですが、人柄はとてもいいけれど、容姿が十人並の男性を選んで、万が一にもペレ様の怒りを買わないように気をつけました。

ただ気になるのは、新たに王家となったプレストン家に事です。
嫉妬深いペレ様の守護を受ける以上、メフメト王は男性女性にかかわらず人間の愛人を持つことができません。
王家の後継者は、メフメト王以外のプレストン家の者が受け継ぐのでしょうか?
それとも、ペレ様とメフメト王の間に生まれた方が継がれるのでしょうか?
もしそうなれば、半神が王位に就くことになります。
ペレ様と同じように奔放で嫉妬深い方だったら……

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