「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集4

克全

第3話

「ニサヌ!
お前がやったのだな?!
嫉妬に狂ったお前が、俺達にこのような傷を負わしたのだな!?
許さんぞ!
断じて許さんぞ!」

バカなアフメット。
私の思い通りに動く木偶人形。
性欲と自己顕示欲の固まり。
守護神ペレ様の護りを破って、ニサヌごときが何かできない事も理解していない、愚かで心が狭く猜疑心が強い出来損ない。

「違います王太子殿下。
私はそのような事はしていません」

プレストン公爵家令嬢ニサヌ。
親や兄はなかなかの人物だけど、この女は出来損ない。
私の愛する妹アンナを、身分が低いと虐め続けた糞女。
出来が悪すぎてアフメットを誘惑し損ねた愚か者。
精々囮としてあがき苦しめばいい。

「そうよ、この傷の恨みは絶対に忘れない!
皆も用意はできているわね。
私達と同じように顔を焼いてしまいなさい」

マウントガーレット公爵家令嬢ミレナ。
身体を張って色情狂のアフメットを誘惑したアバズレ。
私の愛する妹アンナを婚約破棄に追い込んだ元凶。
婚約が解消されたこと自体は喜ばしいことだけれど、それとこれは別物。
焼け爛れた顔の傷跡を見るたびに溜飲が下がります。
そして、私の思い通りに踊ってくれる愚か者。

「「「「「そうよ!」」」」」
「よくも大切な顔を焼いてくれたわね!」
「自分だけ無傷だなんて許せないわ!」
「貴女も私達同様苦しめばいいのよ!」
「「「「「そうよ、そうよ」」」」」

本当に下劣な女達。
あの集団の中には、守護神ペレ様の護りを破って火事など起こせない事に気がついている者もいるのに、はるかに身分が高く美しいニサヌの顔を焼きたくて、黙っている者がいる。
それどころか、率先して煽っている。

「ギャァあああ!
痛い、痛い、痛い、痛い。
止めて、許して、止めて!」

「もっとだ!
もっとやるのだ!」

アフメットは、女を痛めつけることに劣情を感じているようですね。
本当に下劣な男です。
そういう趣味嗜好の男と別れることができたのは、アンナにとってはよかったのかもしれませんね。

「そうよ、その程度で許すモノですか。
私の受けた傷はその程度ではないのよ。
眼よ、眼も焼き潰してしまいなさい」

どんどんエスカレートしていますね。
全て思うつぼです。
これで二大公爵家が全面対決してくれるでしょう。
当主エミルハンが賢明で、当代では王家を支えてきたプレストン公爵家。
それを王太子のアフメットが敵視して、令嬢ニサヌの顔を焼いたのです。

バカな子ほど可愛いとの言葉通り、エミルハンはニサヌを可愛がっていた。
跡取りでニサヌの兄であるメフメトは、王家を支えるほどの槍術と剣術の名手で、若くして大将軍就任が取りざたされるほどの逸材です。
これで王家は滅びの道を歩むことになるでしょう。

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