「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集4

克全

第1話

「ワッハハハハ。
誰がお前などと本気で付き合うものか!
姉が聖女に選ばれたから、お情けで男爵位が与えられた平民ではないか。
平民が王妃になれるなど、本気で思っていたのか?
本当に平民はバカだな!
バカな平民は、同じバカな平民と結婚すればいいんだよ!」

「オ~ホホホホホ。
身分卑しいモノは図々しいですわね。
王太子殿下の婚約者に相応しいのは、由緒正しい家柄の者だけ。
それも、もっとも家柄の正しい私、マウントガーレット公爵家令嬢だけよ。
分かったらさっさと会場から出て行きなさい!」

心から愛する妹のアンナが、王太子とミレナに馬鹿にされ、涙を流しながら舞踏会場から逃げ出していきます。
遠見の鏡で見ている私も、胸が締め付けられる思いです。
でも、これでよかったのです。

アンナが乙女を護るため、強く王太子をはねつけたから、王太子は正体を現してアンナを虐めたのです。
もし乙女を奪われてから捨てられていたら、純真無垢なアンナは自害していた事でしょう。

アンナが王太子と別れられたのはよかったことですが、、王太子とミレナがアンナを貶め傷つけたことは断じて許しません。
徹底的に痛めつけてやります。
ですが、直ぐに殺すような事はしません。

守護神ペレ様は怒りに任せて人間を焼き滅ぼされますが、それでは苦しみが一瞬で終わってしまい、アンナの受けた苦しみを正確に返せません。
復讐というモノは、最低でも同じだけの苦痛を与えなければ意味がないのです。
二倍三倍にして返すのが当然なのです。

(火山の女神ペレ様。
妹の恨みを晴らすことをお許しください。
ペレ様が守護されるゴーマンストン王家の王太子アフメットを、私が復讐のために八つ裂きにすることをお許しください)

(許しますダリヤ。
ゴーマンストン王家の行いには辟易していたところです。
もう少し男前の王や王子がいるのなら、眼をかけてやってもいいのですが、あのような醜男ばかりでは、愛でる気にもなりません)

(ありがとうございます、火山の女神ペレ様。
ペレ様がお気に入りの男がおられましたら、直ぐにお知らせください。
ペレ様の聖女として、寝所にお連れ致します)

(それは気が利く事。
念のために言っておきますが、私のお気に入りに手を出すことは許しませんよ。
以前私のお気に入りに手を出した妹と、浮気した男を焼き殺したことがあります。
私は嫉妬深く、怒ると抑えがきかないのです。
普段お気に入りのダリヤであろうと、私の男に手を出せば許せないでしょう。
分かりましたね?)

(分かりました。
愚かな事をしでかさないように、肝に銘じます)

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