「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集4

克全

第2話

「ヌン神様、ナウネト神様。
今から癒しの聖女殿に来ていただきます。
どうか、ヌン神様とナウネト神様が護ってくださっている国に、入れる事をお許しください、お願いいたします」

(許す)
(許しましょう)

「今お許しを頂きました。
これで大丈夫です。
どうか我が国にきてください」

「分かりました。
ジャクソン王太子殿下が約束を護ってくださった以上、私も約束を守りましょう」

やれ、やれ。
随分と小さな国のようですね。
国民全員とは言いますが、それほどの人数がいるとは思えません。
せいぜい二十万人でしょう。

それもこれも、守護神の神力が低いからでしょう。
守れる国土の広さが狭く、しかも実りの量も少ないのでしょう。
しかも、一柱ではなく夫婦の二柱の力を合わせての神力でです。
そんな弱い神でも、守護を与えてもらえるというのは福音なのですね。
この世界では、神の力なくして人が生きていくのは難しいのですね。
私も、覚悟を決めなければけないのでしょう。

私はジャクソン王太子一行の案内で、ボルゴア王国に向かいました。
西へ西へと進みました。
大陸中央から遠く離れた、西方の辺境といえる場所です。
このような場所までさまよっていた流民が、なんとか神を見つけたのでしょう。
どれほど力の弱い神であっても、すがるしかなかったのは理解できます。

大陸中央部の繁栄した国からボルゴア王国までは、二百日もの道のりでした。
馬車の使える道など、二十日程でなくなりました。
それなりに踏み固められた狭い道も、八十日でなくなりました。
残りの百日は、ほとんど人が使っていない道、道ですらない荒地を進みました。

(やあ、ヌン神、ナウネト神。
約束通り入国させてもらうよ)

(うわああああ!
貴女は何者ですか?!)
(なぜここに来たのですか?!
私達を滅ぼす気ですか?!)

(そんな気はありませんよ。
今はまだ人間として生きていますから、神として貴方達に敵対する気はないです。
人間として、同じ人間を助けたいだけです。
だから、無駄な抵抗をせずに、入国させてくれませんか?)

私はボルゴア王国に近づいて、そろそろ正体がバレそうな頃に、有利な交渉をするために、隠していた神性神力を一気に開放して、神力で話しかけました。
正直圧倒的な神力差があるので、夫婦神に抵抗などできません。
半ば脅迫ですが、自分の目的を達成するためには、しかたがない事です。

(分かりました。
ここまで神力に差があると、抵抗するだけ無駄ですね)
(ですが約束は守ってもらいますよ。
私達を滅ぼしたり攻撃するのは止めてくださいね)
(そうです。
約束は守ってください。
人間として入ってください)

本当に仲のよい夫婦神のようです。
力が弱かろうと、仲のよい夫婦には憧れますね。
私もそのような夫と巡り合いたいものです。

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