「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集4

克全

第20話追放14日目

闇の神の聖女オリビアには、太陽神の怒りが頂点に達した事が分かった。
闇の神はこの大陸では異端とされているが、神々の中では力を持っている。
当然神の力に応じて、聖女の力も決まってくる。
そう言う意味では、太陽神の力は神々の中でも最上位にある。
その太陽神を表向き奉じ乍ら、実際には魔の力を借りて欲を満たすなど、太陽神の怒りをかって当然なのだ。

もう自分の力を隠さなくなったオリビアだが、予測を外してしまったこともある。
それは神々の時間感覚だった。
人間とは根本的に時間感覚が違い、天罰を下すと決めるまでに一年、決めてから実際に天罰を下すまで更に一年かかると思っていた。

だがそんな事はなかった。
今回の太陽神の怒りは、過去の神の怒りとは全く違っていた。
ここ数日で天罰が下されるのは明白だった。
オリビアはなりふり構っていなかった。
自分が闇の神の聖女であることを明かし、同時に太陽神の天罰が下される事も話して、人々にこの国から逃げるように伝えた。

車騎将軍バークレー侯爵トーマス卿と驃騎将軍ポウィス侯爵セオ卿は、最初は戸惑ったものの、スケルトンの中に死んだ国王陛下や重臣達、共に戦った騎士達がいる事に気が付き、心を決めた。
彼らが人間に転生する事を断念して、民を助けるためにスケルトンに宿るという、とてつもない決断をしていたからだ。

バークレー侯爵とポウィス侯爵は、配下を率いて限界まで民に逃げるように伝えたが、応じる者は少なかった。
仕方なく配下とスケルトンと一緒に国外に逃げた。
その二日後に、太陽神の天罰が下った。

太陽神の怒りは、ブルック王国を滅ぼし民を皆殺しにするだけでは済まなかった。
その為だけに、太陽神の使徒数百万が王国の上空を占拠した訳ではない。
太陽神は、この国に現れた魔とこの国に現れようとしている魔王も、全て滅ぼす気でいたのだ。

いや、その程度ではなかった。
魔の世界に攻め込んで、生きとし生ける全ての魔を焼き滅ぼす気でいた。
その為の使徒軍を、第二第三第四陣と集結させていた。
人間を滅ぼすのに時間をかける気など全くなかった。
ブルック王国は一瞬で完全に焼き滅ぼされ、焼けて砂になった大地だけが広がる、荒涼たる砂漠になっていた。

「さあ、ここで嘆いていても始まらないわ。
立って前を向いて生きるのよ。
闇の神でも構わないというのなら、私が絆となって王家を建てます。
闇の神では嫌だと言う者は、このままこの地に隠れ住むか、この国の民となる努力をしなさい!」

オリビアは助けた民を率いて別の大陸を目指した。

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