「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集4

克全

第17話追放11日目

「ふ、ふ、ふ、ふ、馬鹿な人達ね。
私に逆らわなければ、少しは長生きできたのに。
まあ、いつまでも生きていけるわけではないからね。
戦いに踏み切ったのは悪い判断ではなかったわ。
でも負けちゃ何にもならわいわよ」

聖女メグ。
いや、魔女メグは、捕えられ眼の前に引き出された、国王以下の重臣達を嘲笑い嬲り者にしていた。
その隣には、何の感情も浮かべていない、死んだ魚のような眼をしたジョージ王太子が立っていた。

「おのれ!
お前は何者だ!
聖女を騙って何をしようとしている!」

満身創痍の状態で、いつ死んでもおかしくないのに、それでも五将軍家の跡取り娘の誇りを胸に、気力を振り絞ってグストン侯爵家令嬢ポピーが問う。
だがその問いに答えるほどメグは親切ではなかった。
教えて殺す方が絶望感を与えられるのか、それとも教えてから殺す方が絶望感を与えられるのか、楽しそうな眼つきで見極めようといしていた。

「ふ、ふ、ふ、ふ、教えてあげましょう。
私は魔神の使徒なのよ。
ここまで言えばわかるわよね。
魔神はこの世を滅ぼすのが望みなの。
人や獣人や精霊を殺し尽くすのが楽しくてしょうがないのよ」

「おのれ!
人間を舐めるなよ!
好き勝手にはさせんぞ!」

「あら、あら、あら、あら。
自分の欲望を満たすために、私達をこの世界に引き込んだのは人間よ。
際限のない欲望を満たすために、同じ人間を虐げ殺したのも人間よ。
私達魔はそれを手伝っただけよ。
恨み非難するのなら、同じ人間を恨み非難するのね」

「おのれ、おのれ、おのれ!
お前達が誘惑しなければ、人間も堕落しないのだ。
お前達さえいなければ」

「やはり人間はその程度ね。
ここまでわかっても自分達人間の非を認めず、私達魔のせいにする。
私達魔は、全てを表にだしてからは言い訳などはしないわよ。
謀略の間は騙しますけどね。
それは人間も同じでしょう。
どちらの方が下劣で、この世から滅びた方がいいのかしらね」

ポピー嬢は思わず目を背けて下を見るしかなかった。
他の意識を保っている国王派も、魔女メグから眼を背けた。
いつ死んでもおかしくない傷を受けて、更に意地と気力まで叩き折られて、立っている事もできなくなってしまった。
さらにそこに魔女メグが追い打ちをかけた。

「そうね。
貴方達に慈悲を与えてあげましょう。
傷を癒し命永らえさせてあげます。
そして魔に仕える眷属にしてあげましょう。
ここにいいるジョージ王太子のようにね」

「いやぁああああああ!」

王城内に絶叫がこだました。
最後の抵抗にポピー嬢もオリバー国王も自殺しようとしたが、死ぬことすら許されなかった。



コメント

コメントを書く

「恋愛」の人気作品

書籍化作品