「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集4

克全

第18話追放12日目

もうオリビアに人目を気にする余裕はなかった。
この国の滅びは目前に迫っていた。
本心は、剣や魔法で脅かしてでも、全ての民を国境から出したかった。
だが、それは許されない事だった。
オリビアにも踏み外せない一線がある。

オリビアには頑なに信じることがある。
それは自分の生死は自分で選べるというものだった。
どのような生き地獄にいようとも、本人に生きる意志がある限り、勝手に殺してはいけないし、死にたい人間を無理矢理生かし続けてもいけない。
そう信じていたのだ。

多くの神の教えや国の法には背くが、それこそがオリビアの核となる考えであり、その考えがあったからこそ、今日まで生きてこられたのだ。
その核となる考えに従うのなら、この国が亡ぶと分かっていても、滅ぶと伝えても逃げたくないという者を、無理矢理国外に連れ出し生き残らせることはできない。
だから、生き残りたい、逃げたいという者だけを手助けした。

具体的な方法は、スケルトンに背負わせたり、抱きかかえさせたりして、この国から連れ出して逃がすのだ。
多くはオリビアが直接助けた者達であり、太陽神殿や聖女メグの影響下で酷政に苦しめられていた人達だ。

だがここで、オリビアはさらに一歩踏み出した。
スケルトン達に奴隷商人や売春宿を襲撃させ、不当に働かされている人達を助け出したのだが、それはこの国の法で認められている奴隷制に逆らう事だった。
オリビアは王家王国に真っ向から逆らったのだ。
いや、もうこの国が滅ぶと判断して、法を守らないことにしたのだ。

だが当然、自分の財産である奴隷が奪われるのを黙ってみている人間はいない。
特に阿漕なやり方で奴隷を得て、死んでも構わない考えで酷使する者は、相手が例えスケルトンでも怯まずに攻撃してくる。
特に今回の奴隷商人や売春宿の関係者は、神殿関係者が裏で支配しているので、スケルトンなど全く恐れないのだ。

激烈な戦いが行われた。
この国のほぼ全ての都市や街には、奴隷商人や売春宿がある。
そこでスケルトンと神殿の手先が戦うのだから、誰が見てもこの世の終わりだ。
普通の冒険者や兵士は、普通のスケルトンと同等の戦闘力がある。
だがオリビアが作ったスケルトンは特別製なので、普通の兵士や奴隷商人や売春宿の手先など、圧倒するくらい強かった。

スケルトンが奴隷や売春婦を助けて逃げていく。
異様な光景だった。
飢えで足腰の立たなくなった者達まで、スケルトンが抱えて国境を越えるのだ。
オリビアが安全だと判断した場所までスケルトンに運ばせ、そこに避難所となる村を作らせたのだ。

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